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【新型プリウス】デザインとメカから進化を紐解く【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

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【新型プリウス】デザインとメカから進化を紐解く【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】

新車試乗レポート [2023.01.16 UP]


【新型プリウス】デザインとメカから進化を紐解く【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
文●石井昌道 写真●トヨタ

トヨタ 5代目新型プリウスHEV発売 価格は275万円から

 5代目となる新型プリウスがデビューした。1997年に「21世紀に間に合いました」のフレーズで初代プリウスがデビューしてから四半世紀。これまではハイブリッドカーの代名詞的存在であったが、いまやトヨタ車の国内販売の約半数がハイブリッドカーということもあって役割はかわってきている。

 5代目をどういったモデルにするべきか、コンセプト作りの段階で豊田章男社長はコモディティ化して、リーズナブルで誰もが高い環境性能を享受できるようにするのがいいのではと主張していたところ、開発陣は逆に愛されるクルマとしてデザインや走りを徹底的に磨き上げることを提案。デザイン・コンセプト・モデルで社長に「かっこいい」と言わしめたことで、愛されるクルマを目指すことが決まり、「一目惚れするデザイン」と「虜にさせる走り」がコンセプトになったという。


初代プリウス

2代目プリウス

3代目プリウス

4代目プリウス
 個人的には2003年のニューヨーク・モーターショーに参考出展された2代目プリウスのデザインに一目惚れし、後に購入に至ったことがある。あの頃はハイブリッドカーが乗用車の主流になりそうな予感があり、実際に生活を共にすることで善し悪しを知ろうとする職業的な興味があったのも確かだが、決めてはデザインだった。ニューヨーク・モーターショーのコンセプトカーが装着していたホイールに近いものを探し、インチアップ&ローダウンしてご満悦だったのを思い出す。

 初代はセミノッチ・ハッチバック4ドアセダンだったが、2代目は5ドアハッチバックに変更され、キャビンを中心に三角形をモチーフとするスタイルは、トライアングルモノフォルムと呼ばれた。横から見るとノーズからテールエンドまでほぼ一筆書きのスムーズなラインで、富士山がモチーフ、おむすびのようだ、などとも言われていたが、狙いは空力性能の追求。Cd値は0.26と当時の世界トップレベルでおもに高速域での燃費改善に貢献した。流麗なカタチが空力を良くするのは当然で、さらに屋根が一番高いルーフピークが車両の中央より前寄りにあるのもポイント。魚やイルカ、鯨など海の生物も横から見たときに身体の前部に一番上下に厚い部分があり、後部のほうが長くなっているのは抵抗を少なくするための必然だ。

 2代目以降、モノフォルムはプリウスのデザイン・アイコンとして引き継がれていったが、先代の4代目はTNGAプラットフォームを採用してボンネットが下げられたことで、Aピラーとの間に少し角度がついて一直線のモノフォルムとまではいかなくなった。5代目は再び一直線となるよう、全高を下げてAピラーの角度を寝かせてきた。全高は先代比で40mmほど下げられているが、室内空間との兼ね合いからルーフピークは後退している。Cd値にはやや不利で0.27となったが、前面投影面積を小さくすることでトータルの空力性能であるCdA値は先代とほぼ同等を確保したそうだ。ちなみに5代目プリウスは19インチの大径タイヤとなっているが、195/50R19と幅の狭い特殊なサイズ。転がり抵抗低減だけではなく、前面投影面積を小さくすることにも貢献して燃費性能向上とデザイン重視を両立している。BMW i3が採用していたブリヂストンのオロジックと同様の考え方だ。


新型プリウス
 低全高化すると車室内高が心配になるが、パッケージングの改善で乗員のヒップポイントは30mm下げられているので問題はない。もう一つの心配は、Aピラーが極端に寝ていることによる視界だが、ドアミラーを後退させ三角窓の形状を工夫していることで想像よりもずっと見やすい。ダッシュボードも下げられているので開けた視界が確保されている。

 走りの面ではまずパワートレーンが進化し、第5世代ハイブリッド・システムとなった。初代プリウスはTHS(トヨタ・ハイブリッド・システム)と呼ばれる第1世代で、2代目でTHSIIとなって第2世代へ。それ以降、表記としてはいまでもTHSIIのままだが、3代目は第3世代、4代目は第4世代へと進化している。従来はプリウス登場とともに新世代へと切り替わっていたが、第5世代はノア・ヴォクシーが初出となり、5代目プリウスは2番目となった。第5世代の進化は電気系全般で、従来はニッケル水素とリチウムイオンが混在していたバッテリーは、全車とも新しいタイプのリチウムイオンへ。PCU(パワーコントロールユニット)も一新していて大きく効率改善しているのに加えて、4WDモデルのリアモーターを高出力化することも実現している。

 エンジンは従来と同様の1.8Lに加えて新たに2.0Lも用意した。1.8Lのシステム最高出力は140PSで従来比18PS向上しつつ燃費性能は同等かそれ以上。電気系が刷新されたことによる効果だ。2.0LはレクサスUXで初出となったユニットで、システム最高出力は196PSにおよぶ。0-100km/h加速は7.5秒で、実用車としてはかなりの俊足だ(1.8Lは9.3秒)。それでも従来の1.8Lと同等の燃費性能を確保している。さらに、3月デビューのPHEVは2.0Lエンジンを搭載し、システム最高出力223PS、0-100km/h加速は6.7秒。ちなみに先代のトヨタ86の0-100km/h加速は7.4秒、現行のGR86が6.3秒なので、5代目プリウスPHEVはホットハッチといっても過言ではないほどのパフォーマンスだ。

 シャシーも進化していて、コーナー進入時にフロント外側が沈み込んで、対角線上のリア内側がめくれ上がるような挙動を抑え、舵の効きが抜群に良くなっている。パワートレーンも含めて、立派なドライバーズカーになった。

 2代目プリウスを購入した当時はエコドライブのインストラクターを務めていたこともあって燃費に興味を持っていたので、ハイブリッドシステムの賢さや驚異的な燃費性能、EV走行の新鮮な感覚で満足していたが、走りの楽しさはパワートレーン、シャシーともに皆無だった。あれから考えると、まさに隔世の感がある5代目プリウス。愛されるクルマになるかどうかはユーザーが決めることだが、その資質はたしかにあるようだ。

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