ここ数年、アルファードのような「オラオラ顔」のフロントグリルが人気だ。これからも、このデザインが主流となるのだろうか? それともスタイリッシュなものが人気となるか? さまざまな視点から考察していく。
文/清水草一、写真/TOYOTA、HONDA、MITSUBISHI、ベストカー編集部
新型アルファードは脱オラオラ!? プリウス顔が人気の今ド派手フェイスの運命はどうなる!?
■賛否両論が起きた現行型アルファードのデザインが定着したワケ
2015年に登場した現行型アルファード。先代モデルよりも厳ついデザインになり、賛否両論が起きた。しかし、現在では人気のあるデザインとなっている
“オラオラ顔“が当たり前の存在になって久しい。2015年に現行アルファードが登場したときは、そのあまりのオラオラぶりに賛否両論が巻き起こり、古典的カーマニアは激しい拒絶反応を示したが、結果はアルファード支持派の完勝だった。
すさまじく威圧的なグリルを持つ現行アルファードは、年ごとに人気を高めて販売を伸ばし、芸能人や経営者など富裕層の足としてスタンダードになっただけでなく、宮内庁の御料車として、皇族方を乗せるところまで到達した。
軽自動車の分野では、売れ筋であるハイトワゴンは、オラオラ顔の「カスタム系」を必ず用意している。軽の世界では、オラオラ顔がスタンダード。オラオラ顔じゃない軽は、主に営業用や高齢者用のイメージになっている。しかし、ここ最近は、オラオラ顔で話題になったニューモデルは多くない。
■意外とシンプル系とスタイリッシュ系デザインが人気に?
昨年(2022年)登場した中では、“超獣顔“のトヨタ・ヴォクシーだけと言っていい。そのヴォクシーも、やや顔のおとなしい兄弟車・ノアに対して苦戦中だ。昨年の販売実績は、僅差でノアの勝利に終わっている。
今年(2023年)は、オラオラ顔の絶対的エースであるアルファード(と兄弟のヴェルファイア)のフルモデルチェンジを控えているが、現行型を超えるオラオラ顔になるかは微妙。「キープコンセプトでは」とも噂されている。だとしたら、そろそろオラオラの限界点が見えてきたと言えなくもない。
2023年にフルモデルチェンジした新型プリウス。スタイリッシュかつスポーティなデザインとなっている。大人気で納車が1年以上とのことだ
昨年以降は、オラオラの対極にあるシンプル系やスタイリッシュ系のデザインが目立っている。その代表が新型クラウンクロスオーバーであり、新型プリウスだ。
どちらもヘッドライトやグリルは極薄のスポーツカールック。現状、クラウンの人気はそれほどでもないが、プリウス人気はすさまじく、早くも納車待ちは1年半になっている。あんなスーパーカーのようなフォルムのクルマがこれほど売れるなんて、少し前の常識では考えられなかった。
■オラオラ顔のモデルは箱型車の弱点を補うための手段だった!?
改めて国産車のデザインを俯瞰して見ると、オラオラ顔のモデルは、それほど多いわけでも、売れまくっているわけでもない。
ぶっちゃけ、ミニバンや軽ハイトワゴンなどの箱型車だけなのだから。軽では相変わらず主流派だが、昨年、登録車の販売トップ10に入ったオラオラ顔は、4位のルーミーと10位のアルファードだけだ。
ミニバンや軽ハイトワゴンは、箱型であるがゆえに、速そうなデザインにすることは不可能。かつては「走る冷蔵庫」とやゆされ、スポーティなクルマに馬鹿にされていたが、その弱点を補う手段として、オラオラ顔が生まれた。
箱型車くらいの「顔面積」がないと、オラオラ顔と言えるほどのオラオラ感を出すことは難しい。それは、セダンやスポーツカーにはできない芸当で、「走る冷蔵庫の逆襲」だったのである。
オラオラ顔によって威圧感を得たミニバンや軽ハイトワゴンなどの箱型車は、室内の広さと相まって、一時は国内販売の半分近くを占めた。
■ミニバンの販売が全体的に厳しい理由とはなにか?
ミニバン御三家といえば、「ノア/ヴォクシー」、「セレナ」、「ステップワゴン」だ。ステップワゴンのデザインがシンプルなものになったことが記憶に新しい
しかし最近は、軽ハイトワゴンはともかく、ミニバンの売れ行きは退潮気味だ。アルファードは新たな高級車の形として快進撃を続けているが、ノア/ヴォク、セレナ、ステップワゴンのミニバン御三家は、かつてほどは売れていない。
その背景には、少子高齢化がある。ミニバンは子育てファミリーに最適だが、その層の絶対数が減少し、高齢化の進行によって、大容量ボディは需要が減少した。つまり、オラオラ顔が退潮しているというよりも、ミニバンがやや退潮気味なのである。
ミニバンの中でも、コンパクト系は好調を維持しているが、フリードとシエンタは非オラオラ顔、ルーミー三兄弟とソリオはオラオラ顔に分化している。ルーミー三兄弟/ソリオはサイズ的に軽に近いがゆえに、「ナメられたら終わり」という心理が強く働いていると推察される。
総合的に見て、やや退潮気味のオラオラ顔だが、今後はどうなるのか? それは、新型アルファード/ヴェルファイアのデザインにかかっていると断言できる。
■期待される新型アルファード・ヴェルファイアのデザインはどうなる?
新型アルファードはどのようなデザインになるのだろうか?(写真はベストカー編集部が作成した予想CG)
アル/ヴェルは、オラオラ顔の頂点に君臨するミニバン界の絶対王者。今やセンチュリーやレクサスLS、クラウン等の伝統的高級車にかわって、日本を代表する高級車になったと言っても過言ではない。
現行モデルではアルファードが圧倒的な人気だが、先代はヴェルファイアがややリードしていた。次期型でも兄弟として存続し、デザインテイストの違いで、より多くの顧客を得る戦略に出る。
新型アル/ヴェルが、現行アルファードのオラオラ顔を超えるオラオラ顔で登場し、さらなる人気を得れば、それに引っ張られて、オラオラ顔ブームが再加速し、「もっともっとオラオラを!」となる可能性がある。
いっぽうで、アル/ヴェルがおとなしめの顔で登場すれば、オラオラ顔の限界点がはっきりして、オラオラファンも、「そろそろ落ち着いたオラオラがいいね」という空気になっていくのではないだろうか。
正直なところ、日本人の多くは、オラオラ顔の刺激に麻痺気味で、現在は、シンプル系やスポーツカー系が新鮮に感じられている。プリウス人気がそれを裏付けている。
新型アル/ヴェルは、果たしてその流れを断ち切れるか? そこに、今後のオラオラ顔の命運がかかっている。
■筆者が選ぶ現行モデル「オラオラ」デザインベスト3
最後に、現行モデルのオラオラデザインベスト3を、独断で挙げてみよう。
第3位 デリカD:5
登場時は「電気シェーバー」と恐れられたが、今や完全に目が慣れ、力強くて落ち着きのあるデザインに見える。ただ、さすがに新鮮さはない。
第2位 アルファード
登場から8年を経ても、巨大な銀歯のようなグリルのインパクトは健在だ。自動車デザインは、服飾と同様に、機能のみならず装飾性が入り込む余地が大きいが、現行アルファードのオラオラ顔は、自動車デザインの新境地を開き、日本のみならずアジアも震撼させた。ただ、さすがに登場から8年だ。いくらなんでも新鮮さはない。
2023年5月に三菱新型デリカミニが正式発表する予定だ。三菱のダイナミックシールドとオラオラ顔のデザインがうまく融合している
第1位 デリカミニ
まだ正式発表前だが、デリカミニは、ダイナミックシールドを新たに発展させ、アウトドアライクなオラオラテイストにまとめている点が高く評価できる。鬼面人を驚かせずに、適度な威圧感を与える方向性が、今後は主流になる……だろう。次期型アル/ヴェル次第だが。
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実物が出てから書こうか。