M2 CSも良いが、M2コンペティションはもっとイイ
text:Andrew Frankel(アンドリュー・フランケル)
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photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)/Max Edleston(マックス・エドレストン)/Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
濡れたサーキットでは、アストン マーティン・ヴァンテージ・ロードスターの重さと剛性の変化が、少しのメリットも生んでいる様子。だが電子制御のEデフには、違和感があった。
機械式LSDを装備するヴァンテージ・クーペの方が、より良いことは間違いないだろう。マニュアルで。
同様に同じモデルでも、最適な仕様を選ぶ大切さを実感させてくれたのが、BMW M2 CS。英国編集部も、もちろんBMW M2 CSはお気に入りだ。でも、より安価なM2コンペティションの方が、もっとイイ。
今回M2 CSが履いていたタイヤは、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2。トレッドパターンは、雨天時のサーキットには向いていない。違うタイヤだったら、こちらも違う得点だった可能性は拭えない。
マット・ソーンダースが「不安定で裏表がある」とグリップを表現したように、走り慣れるまでにはかなりの距離が必要だった。路面が乾くほど、M2 CSの輝きは増すように思えたことは確かだ。
「アンダーステアから、弾かれるようにオーバーステアに転じる」とジェームス・ディスデイルが感じた挙動は、審査員の誰もがうなずくもの。トラクション・コントロールの急激な介入も、好ましいものではなかった。
残る2台は、アリエル・アトム4とマクラーレン765 LT。ボディと呼べる部分のないスポーツカー、アトム4は2019年のBBDC勝者だ。昨年のドライ・コンディションのアングルシー・サーキットや一般道が、クルマの強みを引き出したともいえる。
雨で冷たく濡れても、むしろ爽快
雨まじりの寒いカースル・クーム・サーキットと、その周辺の一般道。冷たい水と気温に我慢したとしても、この路面では積極的に運転したいタイプのクルマではないはず。
ところが実際は、想像以上に楽しいものだった。「ノミネート車両で一番尖っているわけでもなく、トラクションが不足していたり、バランスが悪かったりということもありません」。とマット・ソーンダースが認める。
「冷たく濡れて、惨めになるという心配は杞憂。むしろ爽快でした」。と話すマット・プライヤー。さらに、「シンプルさの大切さを実感します。機敏で軽快で、感触豊かなステアリングホイールをはじめ、操作系の重み付けも完璧」。サイモン・デイビスが続ける。
ジェームス・ディスデイルも褒める。「ジャングルジムのようなボディは、悪天候には向いていません。でも外界との近さが走りの魅力を高め、没入するドライビング体験を生んでいましたね」
筆者も、充分なグリップと沸き立つ自信に虜になった。緩く弧を描く区間では210km/h以上の速度に届き、その先のきつい右コーナーへ食らいつくように回り込んでいく。
ブレーキペダルを蹴り込み、ギアを2段ほど下げる。コーナーの頂点を過ぎたら、滑り出すように次のストレートめがけて加速していく。実際に体験しない限り、信じられないようなアトム4の身のこなしだった。
そしてマクラーレン765 LT。歴代のBBDCのノミネート車両としては、最もパワフルなモデルだ。ドライ・サーキットを走ることが前提のはずだが、雨でも選考を止めるわけにはいかない。
765psというパワーを自由に引き出せる
マクラーレン765 LTも、アトム4のように不安を払拭してくれた。基本的な部分だが、運転席からの視界が良いという事実は、一般道での快適な乗り心地と同じくらい大切な要素。視界が悪ければ、運転は恐怖にもなり得る。
「怖く感じるかと思いましたが、ドライバーの味方だと感じさせてくれます。一般道でも驚くほど良いですね」。ジェームス・ディスデイルが笑顔で話す。
サイモン・デイビスも、「脱帽するほどのコミュニケーション力で、社会的な速度でも運転に浸れます」。と感想を話す。これこそ、最新の765 LTの特徴だろう。
マット・ソーンダースも同調する。「スタビリティ・コントロールをオフにしなくても、限界領域での自由度は高い。ひとつ上の次元のドライビング体験を提供してくれます」。筆者もノミネート車両の中では、比較的安心してドリフトできると感じた。
シャシーからの優れたフィードバックと、磨き込まれたパワーステアリングのおかげで、765psという圧倒的なパワーを自由に引き出せる。一方で、限界領域でのハンドリングには気になる部分もあった。
「サーキットでも、手に負えないオーバーステアが側にありますよね」。とマット・プライヤーが付け加える。マクラーレン765 LTは、ドライビングスタイルで挙動の反応が多少違うのだろう。結果、得点の違いを生んでいるのだと思う。
さあ、並外れた走行性能のスーパーカーから、興味深いホットハッチまで、色とりどりの8台が揃った。まずは得点を集計しトップ3を決めてから、2020年のベストを選出することになる。
どの3台が選ばれるのか、この続きは(6)にて。
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