次の一年はSUVだけがビジネスではない
正直、うんざりかもしれない。2020年を総括すれば「コロナに始まりコロナに終わる」である。実際は収束どころか国内の感染者数増大が連日ニュースに取り上げられており、まだまだ気は抜けない状況だ。
一方で、自動車産業においては4~9月における世界的販売台数(生産も)の減少はかなりの痛手となったが、減少幅はギリギリのところで抑え、トヨタに至っては営業利益の黒字確保や販売台数も昨年水準まで回復しつつあると、その実力を世界にアピールした格好だ。
この状況下において車が「密を避ける環境をもつ安全な移動手段」として新たな価値を見いだされ販売の後押しをしている点も注目に値する。
そうした中で2020年から2021年にかけては従来以上にコンパクトな車、特に今年“豊作”だったBセグメントに注目が集まりそうだ。
既発車種として国産ではトヨタ ヤリスの4~9月で販売首位という圧倒的な強さが目立ったが、ホンダ フィットも健闘している。
そして11月24日に発表、12月23日に販売を開始した日産の新型ノート。これの前評判がすこぶる高く、どうやら一気にブレイクしそうな予感がしている。 一方で、輸入車勢も先行して販売されているVW ポロや今年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーにおける「インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したプジョー 208/e208、そして欧州BセグメントNo.1の実績をひっさげて日本市場への導入を開始したルノー ルーテシアは、ノートと同じ新型プラットフォームである「CMF-B」を初採用する車種。
これまでルノーがやや苦手であった先進運転支援システム領域も、実は日産の「プロパイロット」と同様のシステム(チューニングなどは異なる)を搭載。これもアライアンスによって実現した好例と言えるだろう。
パワートレインは日産得意の「e-POWER」ではなく、1.6Lエンジンに2モーターを組み合わせる独自のハイブリッドシステムである「E-TECH」を搭載するなど車としてのキャラクターを明確化している点も興味深い。
グローバルで見ればまだまだSUVが市場を席巻、言い換えれば勢いの点で強いことは間違いない。
セグメントとカテゴリーは一致する部分もあり、BセグメントのSUV、一例としてはトヨタ ヤリスクロスやVW Tクロス、また欧州では2代目となるルノー キャプチャーも同様だ。
ただ「猫もしゃくしも」ではないが、何でもSUV化すればよいというわけではない。乗降性やラゲージの広さなど、利便性の高さは評価するが、全幅はハッチバック車より拡大する傾向があり、取り回しの点ではやや気になる。
2021年は車両本体価格もSUV系よりは全体的に安いハッチバックタイプに注目したい。また、安全装備に関してもやっと時代に追いついた、というか下のセグメントでも充実した機能を搭載してきた点も、当然ではあるが高く評価できる。
日常の足だけでなく、オールラウンドに使えるBセグメントは間違いなく次のトレンドと言えるだろう。 文/高山正寛、写真/ルノー・ジャポン、グループPSAジャパン※カーセンサーEDGE 2021年2月号(2020年12月26日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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