LEXUS LC500h × LC500
レクサス LC500h × LC500
性能はカタチに顕現。レクサスならではの美意識とハイテクの融合をLC500に探る 【Playback GENROQ 2017】
最高峰への挑戦
新時代レクサスの表れがこのLCである。実際、新開発のFR向けプラットフォームや高剛性ボディなど従来のレクサス以上に品質はもちろん走りにも磨きをかけたという。ラグジュアリークーペといえば欧州プレミアムブランドしかなかった選択肢に日本発のオプションが追加されるのか──。
「嬉しくなるほどのハードウェア。LCこそ新時代レクサスの基準だ」
スペイン・セビージャは歴史的な建造物が数多く立ち並ぶ美しい街である。LC500/LC500hの国際試乗会の地にここを選んだレクサスは、よほど自信があったのだろう。実際、それだけのことはあったと言える。街中に佇むLCは、絵画のような景色の中でも、堂々たる存在感を発揮していたのだ。
レクサスは、このLCの登場から新しいチャプターに入ると公言している。これは単なる掛け声ではない。遂に「GA-L(Global Architecture Luxury)」と呼ばれる新しいプラットフォームが導入されるのである。GA-Lの最大の狙いは、パッケージの見直しである。フロントオーバーハングを削ってタイヤを車両の四隅に配置し、エンジンを50mm後方に移動させてフロントミッドシップレイアウトを実現。重心、ヒップポイントも大幅に低下させている。
最新の設計トレンドに則り、LCのボディも高張力鋼板、超高張力鋼板の他、ダイキャスト製フロントサスペンションタワーをはじめとするアルミ、そして、より短時間での生産を可能とした高速RTM製法(編注:LFAで開発した樹脂注入成形法をさらに進化させた)のCFRPなどを組み合わせる。異素材の接合のため接着剤の使用範囲が拡大され、一部にセルフピアシングリベットも採用された。全高、そしてフードの低さや、21インチ大径タイヤ&ホイールの採用が際立たせている流麗なスタイリングは、この新プラットフォームが無ければ実現できなかったもの。当然、走りに対する寄与度も大いに期待していいはずだ。
「自然吸気のV8は気持ち良いという言葉しか出てこない」
サスペンションは4輪マルチリンク。特にフロントは低いフード高に合わせてリンク配置を吟味したという。ダンパーは全車、電子制御式。リフトやダイブは、時にしなやかなストロークを阻害することもあるジオメトリーの設定ではなく、電子制御によって抑える仕立てだという。
パワートレインは、LC500が最高出力477psを発生するV型8気筒5.0リッター自然吸気エンジン+新開発10速AT。そしてLC500hにはV型6気筒3.5リッターエンジンと電気モーターによるハイブリッドシステムの出力側に4段ギヤを組み合わせ、10速ATを模擬したステップ変速を行うマルチステージハイブリッドを初採用する。こちらのシステム最高出力は359psとなる。
インテリアは外観に負けないインパクトをもたらす。眼前にはLFA譲りの可動式メーター。ステアリングは断面形状が吟味された専用品で、マグネシウム製のパドルも備わる。トリムは包まれ感のある造形で、特にドレープ入りのアルカンターラ張りとされたドア内張りと、彫刻的なドアノブが目を惹く。ちなみにLCの生産はトヨタ元町工場で行われる。ここは元LFA工房であり、その生産を支えた多くの職人がLCに携わっているという。シートのホールド感も上々。しっかりとしたサイドサポートがありながら窮屈感とは無縁だ。リヤシートは身長177cmの筆者の場合、頭がつかえてまともに座れないが、このクルマにとってそれは大した問題ではない。
「何より圧倒的なボディの剛性感に圧倒される」
走り出して、何より感服させられるのがボディの圧倒的な剛性感。サスペンションが、その強固な土台の上で至極スムーズに動き、上質な乗り心地を形作っている。タイヤはすべてランフラット。ミシュランの21インチはそのネガをほとんど感じさせなかったが、後で試した別ブランドは荒れた路面でやや厳しい面を見せ、差の大きさが気になった。
いかにもコラム剛性の高そうな、それでいてクリアな操舵感のステアリングを切り込むと、クルマ全体がリニアに向きを変えていく。ボディ、そしてリヤサスペンションの横剛性は相当高い。クルマの大きさを感じさせない一体感ある動きが小気味良い。アクセルを入れていった時の蹴り出し感も良く、FRスポーツらしいフィーリングを堪能できる。
強いて言えば、ギヤ比可変ステアリングと後輪操舵を組み合わせたLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリング)付きは、切り込む一瞬の手応えがやや甘め。それ以降は確かに恩恵に与れるのだが、筆者は現時点ではLDHなしを選ぶと思う。
「これまでのハイブリッドのイメージを払拭するLC500h」
LC500hのマルチステージハイブリッドは、これまでのハイブリッドと比べて、まず電気モーターでの走行時間と距離が長い。状況が許せば140km/hまで、エンジンをかけずに走行が可能だ。しかもエンジン始動後も、加速はラバーバンド感がなくアクセル操作でリニアにエンジン回転が高まり、仮想10速ATとして小刻みにシフトアップしながら加速していく。レブリミットは6600rpmまで高められており伸び感も上々。エンジン音、排気音も心地よく、爽快な加速を楽しめる。尚、スペック的には0-60mph加速は4.7秒、最高速は250km/hとなる。
とは言え、快感度合いで言ったらLC500に叶わないのも事実。自然吸気エンジンならではのレスポンス、サウンド、吹け上がりに、全域ロックアップ可能な10速ATの歯切れ良い変速が相まって、気持ち良いという言葉しか出てこない。課題は車重だ。特にLC500hは1985kgもあり、さすがにサーキットでは苦しげなところを見せた。
一般道では、LC500hの新しい走りの魅力に大いに満足した。これまでのハイブリッドのイメージは大部分、払拭されたと言っていい。しかしながらサーキットのような場面では、LC500の印象が強くなるのも事実。理性はLC500hを選ぶが、感性がLC500を欲するのだ。言い換えれば2台の性格、しっかり分かれている。
「こういうクルマが日本から登場したことを歓びたい」
総じてハードウェアの完成度に嬉しくさせられたLCだが、それ以上に印象的だったのは、情感に訴える要素が濃厚なことだった。おそらく、それは従前のセオリーで造ったクルマではないからだろう。デザインでも走りでも、あらゆる部分で壁を壊そうという意欲がありありと見てとれる。きっと、その情念のようなものが心を揺さぶるのだ。
こういうクルマが日本から登場したことを歓びたい。試乗後には、晴れやかな気持ちでそう思った。そして、これが始まりならば新しいチャプターに入るというレクサス、大いに楽しみ。掛け値なしの本音として、そう思えたのである。
REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
PHOTO/Lexus International
【SPECIFICATIONS】
レクサス LC500
ボディサイズ:全長4760 全幅1920 全高1345mm
ホイールベース:2870mm
トレッド:前1630 後1635mm
車両重量:1935-1970kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHC32バルブ
総排気量:4969cc
圧縮比:12.3
最高出力:351kW(477ps)/7100rpm
最大トルク:540Nm(55.0kgm)/4800rpm
システム合計出力:-
電気モーター出力:-
電気モータートルク:-
駆動用主電池:-
公称電圧:-
バッテリーセル数:-
システム電圧:-
バッテリー出力:-
トランスミッション:10速AT
駆動方式:RWD
ステアリング形式:ラック&ピニオン式(電動パワーステアリング)
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前337.8×36 後308.2×30mm
タイヤサイズ:前245/40RF21 後275/35RF21
最高速度:270km/h
0-60mph加速:4.4秒
レクサス LC500h
ボディサイズ:全長4760 全幅1920 全高1345mm
ホイールベース:2870mm
トレッド:前1630 後1635mm
車両重量:1985-2020kg
エンジンタイプ:V型6気筒DOHC24バルブ(ハイブリッド)
総排気量:3456cc
圧縮比:13.0
最高出力:220kW(299ps)/6600rpm
最大トルク:348Nm(35.5kgm)/4900rpm
システム合計出力:264kW(359ps)
電気モーター出力:132kW(179ps)
電気モータートルク:300Nm(36.0kgm)
駆動用主電池:リチウムイオン
公称電圧:310.8V
バッテリーセル数:84
システム電圧:650V
バッテリー出力:44.6kW
トランスミッション:マルチステージ ハイブリッドシステム(4速)
駆動方式:RWD
ステアリング形式:ラック&ピニオン式(電動パワーステアリング)
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前337.8×36 後308.2×30mm
タイヤサイズ:前245/45RF20 後275/40RF20
最高速度:250km/h
0-60mph加速:4.7秒
※GENROQ 2017年 2月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。
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みんなのコメント
1000万円程度の車でしょう。