インディカーは2021年末、2008年からこのシリーズのシャシーを独占供給してきたダラーラとの契約延長を発表した。2023年シーズンからインディカーに導入される予定のハイブリッドシステムも、ダラーラに搭載されることになる。そのハイブリッドシステムの現在地を確認しておこう。
搭載されるエンジンの仕様も変更される。排気量は2.2Lから2.4Lにアップ。ターボのブースト圧もわずかに上がる。E85燃料を使用するツインターボV6という点は継続だ。比較的シンプルで低価格のハイブリッドシステムによるエネルギー回生により、“プッシュ・トゥ・パス”(PTP)のパワーも向上する。
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インディカーのシステムはKERS(運動エネルギー回生システム)の原理に沿ったもので、シボレーとホンダのエンジンで共通したものを使う。これによって、PTPのブーストが100馬力アップすると期待されている。ちなみに、現行のエンジンは最高出力700馬力以上を発生。一時的にブーストを上げるPTPモードでは750馬力に上がる仕組みになっている。
HPD(ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント)と、シボレーのエンジンを手掛けるイルモア・エンジニアリングはそれぞれ、プロトタイプの開発に取り組んでいるが、2022年の3月にはコース上での実践テストを開始する意向だ。最高出力800馬力程度、PTPモード時は900馬力までアップすることを目標に掲げている。
アメリカでは伝統的に、燃費が悪くても大きいクルマが好まれると言われており、ガソリンと電気のハイブリッド車や完全な電気自動車がなかなか普及しないのは当然と言えば当然だ。ハイブリッドシステムをレーシングカーに搭載することを求めるアメリカのファンは、ほとんどいない。
それでも、インディカー、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権、NASCARカップシリーズも、この先数年のあいだにマイルドハイブリッドの要素を取り入れようとしている。
インディカーの場合は、HPD社長のデイヴィッド・ソルターズが「現行のエンジンは寿命を迎えている」と言うように、基本的な構造の限界に来ているということもその理由のひとつと言えそうだ。2012年導入当時のV6ターボは575馬力だったが、それが前述のとおり、いまでは700馬力以上に上がっているのだ。
「新たな規格はとても興味深い。必然的な技術、つまり電化が関わっている。ホンダには非常に優れたハイブリッドカーを多くある。その技術を活用することができるはずだ。課題は、提供される技術の応用になるだろう。新エンジンではエネルギー密度、エンジンにかかる荷重、応力などすべてが著しく上昇するが、パッケージのサイズは変わらない。それにうまく対処することがカギになる」(ソルターズ)
インディカーのKERSパッケージと、F1で採用されているはるかに複雑なエネルギー回生システムとのあいだに、類似点はほとんど見られないのだが、ホンダは関連すると思われる。いかなる技術も活用するつもりだと、ソルターズは明かした。
「アメリカとヨーロッパの双方でレースに関わっているスタッフがいるというのは、本当に珍しいこと。(ホンダ全体として)F1でさまざまな知識を蓄えてきたので、それを関連するすべての部門で共有したいと考えている」
一方、GM(ゼネラルモーターズ)のレースプログラムはホンダほど集約されていない。
「GMとシボレーはしばらくのあいだ、内燃エンジンを造り続けるため、我々もできる限りそのための努力を推し進めていくつもりだ。ただし、GMは軸足を電気自動車にシフトしつつある。今後、我々のラインアップにハイブリッドはそれほど登場しないだろうが、電動化や回生システムなどの技術は関連があるので、シボレーや我々のブランドと歴史にとって、インディカーに関与し続けることは重要なことだ」と、GMモータースポーツ・エンジニアリングでディレクターを務めるマーク・スティロー。
ハイブリッドシステムはワンメイクだが、運用面に一日の長があるであろうホンダが先行することになるのかもしれない。
※この記事は本誌『auto sport』No.1568(2022年1月14日発売号)からの転載です。
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