キャデラック「XT5」の最新モデルに小川フミオが試乗した。“アメ車”ならではの魅力とは?
サイズ感を忘れてしまう走り
12気筒は合理を超えたところにある──新型ベントレー・ベンテイガ・スピード試乗記
SUVがこれだけ流行ると、他人とは違うクルマに乗りたくなるはずだ……そんな人にぜひ検討してみては? と、勧めたいのが、キャデラックのSUVだ。“XT”と呼ばれるラインナップはバラエティ豊か。なかでも、「XT5」は日本でもジャストサイズだろう。
XT5は、全長4825mm、全高1700mmのボディに、3649ccのV型6気筒エンジン(最高出力231kW、最大トルク368Nm)を搭載した4輪駆動車だ。いまどきめずらしいノンターボ・エンジンの6気筒で、気持よくパワーが出る好印象のモデルだ。
いまは小排気量とターボ化がほとんど常識化している感がある。そこにあって、あえて大きめの排気量と、自然吸気というのが、キャデラックのこだわりかもしれない。
どこまで本気でこだわっているのか? は、確認がとれていないのだけれど、少なくとも、下の回転域からモリモリと力が出て、上の回転域までスムーズに加速していくのは、ドライバーにとって嬉しい。気持ちいいのだ!
エンジンの性能だけが目立つのではない。ハンドリングも、乗り心地も、バランスがとれている。全体として、スポーティ方向に振ってはいるものの、やりすぎ感はまったくなし。高速では快適だし、いっぽうカーブを曲がるのもけっこう得意である。
ステアリングはしっかりしているし、路面の情報も手のひらに伝わってくる。ブレーキの効き方もドライバーの意思に応えてくれるソリッドなもので、余裕あるサイズのボディでも、不安感はいっさいない。むしろ反応のよさゆえに、サイズ感は忘れてしまうほどだ。
7速で直結になる9段のオートマチック変速機は、基本的になるべく早くシフトアップしていって燃費効率を追求する設定であるが、ドライバーの気持によく応えてくれる。
軽くアクセル・ペダルを踏み込むと、すかさず最適の回転数までギアを落として、そこから力強い加速を実現。といっても、1500rpmも回っていれば、充分に力強い。
内外装のデザインも秀逸
ボディデザインも、XT5の魅力のひとつだ。美しいパネルと、エッジの効いたキャラクターラインがうまく活かされている。キャデラックのブランドイメージに惹かれて買った人には満足ゆく、クオリティの高さであると思う。安っぽさがまったくない。
もうひとつ、私がXT5で気に入っているのは、インテリアだ。世に出たのは2016年なのでちょっと前のデザインといえるものの、けっして古びていない。というか、ほかのクルマにないディテールの凝りかたとか、オーナーを喜ばせてくれる要素がしっかりある。
そのひとつが、私が試乗した「プラチナムスポーツ」という上級グレードのダッシュボード。ダッシュボードの一部とステアリング・ホイールの一部に、遠目だと「ウッドパネルかな?」と、思う加飾がほどこされている。しかし近くで見ると、イエローの色調をもつカーボンファイバー調のパネルなのだ。
軽量でかつ高剛性でレース・カー的なイメージすらあるカーボンファイバー調の素材を、ウッドパネルの代わりに使う……このデザイン感覚は、おもしろい。私の好みでもある。
操作類も扱いやすい設計で、たいていのひとは、乗り込んですぐ迷いなく各部の操作ができるだろう。
ホイールベースが2860mmあるので、後席のスペースも、身長180cm級の人がふたり座っても充分。プレミアムスポーツだと、大きな面積のガラスがルーフにはめこんである(一部電動で開閉)ので、開放感もあって爽快だ。
Boseの「パフォーマンスシリーズ」なる14スピーカーのオーディオシステムは、迫力ある音を再生してくれる。
ボリュームをしぼっていっても、バランスがいいし、もちろん、音量を上げていけば重低音を含めて、いまどきのシティポップみたいな音源もきっちり楽しませてくれる。
「XT4」(全長4605mmのボディに1997cc4気筒エンジン)と、「XT6」(5060mmにXT5とおなじスペックスの3.6リッターV6)と、さらに上には「エスカレード」(5400mmに6.2リッターV8)と、さまざまなサイズのSUVのラインナップが充実しているキャデラック。
なかでもXT5はボディサイズとエンジン・パワーのバランスの良さが楽しめる1台だ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.)
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