プレミアムEVが手頃な価格に
執筆:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
撮影:Max Edleston(マックス・エドレストン)
中古車探しで最高なのは、高嶺の花だと思っていたクルマが、まるで誘いかけるように手の届きそうなところへ現れたとき、もしくは夢物語のようなクルマを、自分の足にできそうな可能性が生まれたときだ。もちろんそういうことはいつでも、自動車市場のあらゆるところで起きている。だからこそ、たまらなく惹かれるのだ。
しかし今、おそらくなによりも大きな意味を持つのは、そうしたことが電動ファミリーカーで起きているという事実である。数年前に、EVがどれほど実用的で、使いやすく、バーサタイルで、商品力があり、ほかにはない所有する価値があることをはじめて証明したようなクルマたちが、手の届くところまで降りてきたのだ。
ここで取り上げるクルマが属するグループは、それほど大きなものではない。メルセデス・ベンツEQCは2年落ちで、安くても5万ポンド(約700万円)近い。アウディEトロンも似たようなもので、近い年式だと4万5000ポンド(約630万円)を切るものも見つかる。
テスラなら、5年以上前のモデルSが4万ポンド(約560万円)以下で手に入る。モデルXの中古車が5万ポンド(約700万円)を下回るのも時間の問題だ。
しかし、ジャガーIペイスなら、競合するドイツ勢に1年ほど先駆けて2018年に発売されたので、中古車市場における重要な一線をひと足早く越えようとしている。最初期モデルは、ライフサイクルで大きな意味を持つ3年のひと区切りを迎えるのである。
それにより、リースやローンの期限がこの数ヶ月のうちにやってくるので、中古車市場に出回るタマ数の増加が見込まれるのだ。この秋は、中古車広告をじっくりチェックしてほしい。きっと4万ポンドを切るIペイスが見つかるはずだ。いったん出はじめれば、そのあたりの価格が一般的になるだろう。
そうなると、新車との比較もおもしろいことになってくる。ややサイズとクラスを下げれば、中古のIペイスと同じような金額で手に入る候補が見つかるからだ。そこで、今回の比較テストをセッティングしたという次第である。
2021年現在、4万ポンドの予算で手に入るファミリーユース向きのEVを探すなら、フォルクスワーゲンID.3のトップグレード、プロSツアーが候補に入る。装備内容が充実し、ウォルフスブルクのラインナップ中でもっとも大容量のバッテリーと最強のモーターを積むそれはベストチョイスなのか。
もしくは、パフォーマンスも実用性も、ブランド力も上回る、3年落ちのIペイスを選んだほうが幸せなのか。それとも、まだ前例の少ない中古車のEVを買うのは、新車よりも成功の見込みが薄い賭けとなるのだろうか。
認定中古車なら保証は安心
まずお伝えしておくべきは、たとえ中古車であっても、Iペイスは売りっぱなしにならないことだ。フォルクスワーゲンは、ID.3に3年/9.7万kmの保証を付けている。いっぽうジャガーも、Iペイスの保証期間を3年としているが、走行距離は無制限なのだ。
今回の予算で探せるIペイスは、3年の保証期間ギリギリか、それを過ぎたものになるだろう。それでも、保証期間内で、正規ディーラーでしか整備されていないのなら、有償で保証期間を延長できる制度が用意されている。それが、安さに釣られて保証切れや出自のわからないクルマを買うより、多少高くても正規ディーラーでアプルーブド物件を選んだほうがいい理由だ。
Iペイスのアプルーブドカーは、独立系ディーラーや中古車販売店が扱う物件より10~20%ほど割高になる傾向がある。しかし、メーカーが用意するローンや家庭用充電器の無料提供を利用でき、ディーラーの2年保証も付くといったメリットがある。
都合のいいことに、バッテリーの保証はフォルクスワーゲンもジャガーも同等で、どちらも製造上の不良による故障は8年/16万kmだ。さらに、対象は新車購入者だけでなく、3人目のオーナーまで受け継がれる。保証期間内に蓄電容量が70%以下になった場合、修理かバッテリー交換に応じる点も共通だ。アプルーブドカーなら、バッテリー性能のチェックも受けられる。
しかし、どこで購入するにしろ、中古のIペイスに試乗しても、バッテリーが劣化しているかどうか体感はできないはずだ。スマートフォンのアプリを使えば、充電量と走行距離に応じて、使用可能なバッテリー残量を常にチェックできる。ジャガー最新のバッテリー管理ソフトを備えるIペイスで、フル充電でも複合モードで260km以下の航続距離までしか回復しないようなら、調べてみたほうがいい。そうした状態は、走行距離が多く、急速充電器でのフルチャージを繰り返してきた個体にありがちだ。
しかし、3年経ってもバッテリーのコンディションがよく、ディーラー保証もついた状態のいいIペイスなら、新車のID.3よりはるかに多くのものをもたらしてくれるはずだ。もっとも、バッテリー容量や航続距離、充電に関しては、より新しいID.3のほうが、少ない手間で多くを得られる。直流急速充電は、ジャガーが100kWまでの対応なのに対して125kWと上回り、家庭用の交流ウォルボックスでも、より短い時間で多くの電力を補充できる。
現実的な走行環境での航続距離は、82kWhバッテリーのID.3は400~450kmといったところ。バッテリーのコンディションにもよるが、Iペイスのバッテリーは90kWhとフォルクスワーゲンをやや上回る容量だが、中古車は状態のよい個体でも300~350km強といったところだろう。
走りも所有欲も満足できるのはIペイス
IペイスはID.3より大柄で、2モーター4WDゆえに重量もかさむので、エネルギー効率では多少劣る。とはいえ、重要なのは、パフォーマンスもハンドリングも大きいクルマだとは思えないものがある。つい忘れがちだが、Iペイスはドライビングがじつに楽しい。乗り心地はしなやかで、ハンドリングは驚くほどバランスがよく、なめらかで軽快な走りをみせる。
パワーをかけると、低速からEVらしいレスポンスのよさを発揮し、高速道路で加速すればやはり速い。3年前より競合車種は増えたが、いまでも多くのEVが持ち合わせていない、引き込まれるようなドライビングが、Iペイスにはあるのだ。
対して1モーター後輪駆動のID.3は、パワーはほぼ半分でウェイトは10%ほど軽い。フルパワーでも、Iペイスほどハードなパンチはない。運動性能は高く、悪癖も見つからないが、比べてしまうと走りにソウルが足りないと感じてしまうのだ。ID.3のほうが勝っているのは取り回しだ。車体も最小回転半径も小さいのが効いている。
どちらも静粛性は上々だが、エアサスペンションを備えたジャガーのほうはよりスムースできっちりコントロールの効いた乗り心地。ちなみに、標準仕様のスティールコイル装着車は、これよりグレードの低いクルマだと感じてしまう。
子どもが乗るには十分な後席とほどほどの荷室サイズを備えるID.3は、絶好のセカンドカーとなりえるだろう。しかしIペイスは、大人4人が無理なく乗れるクルマで、荷室は長めの旅行に必要な荷物を積める広さがあり、自転車やベビーカーも運べる。
ジャガーには、エクステリアのデザインにスター性が十分あり、インテリアの高級感もある。いっぽうでID.3のキャビンは、4万ポンド近いクルマとしてはチープで物足りない。エクステリアは風変わりだが、不恰好なところも見つけられる。
おそらく、われわれがどちらを選ぶか、うすうすお気づきだろう。ID.3をおすすめできる材料は十分にあるが、この価格に見合うとはいいがたい。Iペイスは近いうちに価格が下がると見込まれる。ディーラーがめぼしい物件を売りに出したら、すぐにでも商談の予約を入れたいところだ。
ディーラーの十分なバックアップもなしにEVを買ってしまおうというユーザーはいないだろうが、ジャガーのアプルーブドカーなら自信を持って購入できるはずだ。実電費で320kmも走れるなら十分実用に適うし、走らせるのも楽しい。Iペイスは、所有する価値があるクルマだ。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「緊急車両が来て道を譲らないとどうなりますか」 理由に「『聞こえんかった』は通用するのですか」 譲るのはマナー?義務? 具体的にどう譲ればいいのですか。
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
“生産版”「“R36”GT-R」公開に反響絶大! 日産の「旧車デザイン」採用&4.1リッター「V6」搭載で「借金しても欲しい」の声! 1000馬力超えもあるArtisan「“和製”なスーパーカー」が話題に
走行中、後ろから緊急自動車が! 譲らないと「違反」に!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
新車は保証が最低3年の保証が付帯され、中古車の場合は販売店保証しか無い事が多く保証内容も、かなり曖昧。
その中古車が乗りたい!と考えられるのなら買えば良いだけで、人気の無い中古車を購入するような扇動記事は読む価値も無い。