使い勝手にこだわった北米企画のニッチなアメリカンSUV
2001年の北米自動車ショーで、ホンダはコンセプトカー「モデルX」を発表した。当時のリリースには「このクルマは、4人乗りのFF車を想定して設計されており、ルーフ後部のスライド機能や可倒テールゲートの採用によりオープンで大容量のカーゴスペースが出現し、サーフボードなどを縦に積むことが可能」とあった。 また、観音開きのドアとセンターピラーレス構造の採用により、「大きな荷物の積み下ろしを容易にし、乗降性を高めるなどアクティブな趣味を楽しむための様々な工夫がなされている」などと記載されていた。
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若者のライフスタイルに寄りそった斬新な使い勝手が魅力!
2003年、ホンダは北米の研究拠点で企画・開発されたSUVのエレメントを発売した。異例なのはコンセプトカーとほぼ同じスタイリングであったことに加え、開発に携わったのが多くの若い北米スタッフだったこと。大学のキャンパス、ビーチ、キャンプ場などで徹底的にリサーチを行い、若者のライフスタイルにフィットするSUVとして登場したのだ。 特徴はコンセプトカー同様にセンターピラーレスの大開口観音開きドアと、クラムシェルと呼ばれる上下分割テールゲートによる積載性の高さ。機能に合わせた斬新なスタイリングは、アウトドアギアと呼びたくなるようなものだった。
コンセプトはビーチのライフガードステーション!?
エレメントが面白いのは、海水浴場で安全を見守るライフガードステーションをモチーフとしたスタイリング。機能を全面に打ち出したバンパーとボディ下部には樹脂を採用したことで、力強いラギッドさを見せている。 また、ルーフの一部とボディ下部のクラッディングに傷が付きにくい無塗装の新素材を用いることで、多少の擦り傷などは気にならない使い勝手を優先。ヘッドライトもあえてボディの奥へ凹ませ、当時は新しかったHIDを標準装備として、デザインと機能性を両立させた。
やり過ぎなユーティリティ性能は最新ミニバンにも匹敵
注目のユーティリティを見ていくと、フロントドアは最大で78度、リヤドアは90度まで大きく開き、開口部の高さは1140mm、同幅は1550mmと大胆に大きくとられていた。
テールゲートも上下を開けた状態で高さ1025mm、幅1110mmを誇り、ロアゲートを開けるとフロアと一直線でつながる。そのため、荷物の出し入れがしやすいうえ小物ならアッパーゲートを開けるだけで載せ下ろしが可能だった。 ちなみにロアゲートの高さは660mm、耐荷重は200kgまでとなっていたため、日差しを遮り小雨を避けながら座って寛ぐことができる、昔の家によくあった縁側のような使い勝手も便利であった。ちなみに背もたれになるシートバッククッションまでオプション設定されていたのも面白い。 これだけの開口部を持つモノコックボディながら「G-CON」と呼ばれる衝突安全性能によって、前面フルラップ衝突55km/h、全面オフセット衝突64km/h、側面衝突55km/h、後面衝突50km/hという、高効率エネルギー吸収&高強度ボディを実現。 さらにカーゴスペースは最新ミニバンにも負けていない多機能さを備え、助手席を倒せば10フィートのサーフボードを積み込める。さらに、後席を左右に跳ね上げればタイヤを外さずにマウンテンバイクが収納できるほか、シートすべてをフルフラットにすれば180cmの長身の人でも横になれる空間を確保していた。
また後席にはスライド機構が備わるうえに、前席よりも130mmヒップポイントが高く設定されていたため、リヤシートでも良好な視界が確保された開放的な空間も魅力であった。 もちろん特筆すべきは豊富な収納の数々。オーバーヘッドコンソールを筆頭にインパネトレイ、4つのホルダーやセンタートレイなどが装備される。水滴や汚れを水ぶきできるワイパブルフロアや防水シート表皮(3色パターンを用意)、撥水ルーフライニングもあって、まさにアウトドアレジャーにぴったりの仕様であった。
トルクフルで実用的な北米仕様の2.4L直4エンジンを搭載
では走りの面はどうだったのだろうか? 搭載するエンジンはトルクを優先した北米仕様のK24A型2.4L直4 i-VTECとなり、最高出力160ps/5500rpm、最大トルク22.2kg-m/4500rpm(レギュラーガソリン)を発揮し4速ATが組み合わされた。
ラインアップは全車4WD車となり、通常走行時はFFながら必要に応じて後輪にも駆動力を配分するデュアルポンプシステムを採用。このシステムと前後サスペンション(フロントストラット/リヤダブルウイッシュボーン)により、ワイドトレッド化と低床化仕様のアーム類を用いることでユーティリティ性能を含めた使い勝手にも配慮された設計となっていた。 ちなみにタイヤは215/70R16のM+S(マッド&スノー)を標準としながらも、最小回転半径は5.2mに抑えられ、日本の交通事情でも苦になることはない取り回し性能も発揮していた。
当時の日本市場のニーズには合わず不人気モデルに……
このエレメントは、北米をメインマーケットとして開発されたクルマであったため、日本ではマイナーな存在でヒットモデルとはならなかった。発売後にホンダディーラーへ立ち寄ると、10人位の外国人がエレメントを取り囲みながら興味津々の様子だった。そこで話を聞くと近所の大学に通う留学生ということで、セールススタッフいわく「外国人がすごく見に来るけど、日本では売れないかもしれない……」と、その読みが的中してしまった。 ちなみに筆者自身はアウトドアに興味はないが、キャンプ好きの知人に聞くといまアウトドアシーンで人気車種の1台であるという。確かに日本車離れした佇まいに、包容力のあるユーティリティ性能や使い勝手は、まさに空前のアウトドアブームにぴったりのSUVと言えるだろう。
■ホンダ・エレメント主要諸元
〇全長×全幅×全高:4300mm×1815mm×1790mm
〇ホイールベース:2575mm
〇トレッド 前/後:1575mm/1580mm
〇車両重量:1560kg
〇乗車定員:5名
〇最小回転半径:5.2m
〇最低地上高:175mm
〇室内長×室内幅×室内高:2035mm×1485mm×1210mm
〇エンジン:K24型 直列4気筒DOHC(北米仕様)
〇総排気量:2354cc
〇最高出力:118KW[160ps]/5500rpm
〇最大トルク:218N・m[22.2kg-m]/4500rpm
〇タイヤサイズ:215/70R16
〇サスペンション 前/後:ストラット/ダブルウィッシュボーン
〇ブレーキ 前/後:ベンチレーデッドディスク/ドラム・イン・ディスク
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みんなのコメント
今なら人気車になってたかもしれません。
このような、楽しい車を作って行ってください。