購入するのではなく定期的に料金を支払うことで、商品などを利用できる「サブスクリプション」。“サブスク”とも略されるこの定額制サービスは近年、自動車業界にも広がっている。
自動車メーカーでは、トヨタが新車で「KINTO」をスタートさせたあと、ホンダが中古車で「HONDAマンスリーオーナー」というサブスクを導入しているが、今年3月26日にはスバルも中古車で参入。
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さらに導入するメーカーが増えそうな勢いだが、クルマに乗る手段として今後は定額で支払うようなサブスクが主流になるのか? その現状からサブスクで得するケースについての解説も合わせて、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏がガイドする。
文/渡辺陽一郎 写真/SUBARU、TOYOTA、HONDA
【画像ギャラリー】トヨタ、ホンダに続きスバルも参入!! 自動車サブスクリプションはお得か否か
■携帯電話の普及でクルマを定額制で使うサービスが広がりつつある
トヨタのサブスクリプションサービスKINTOは、KINTO専用の特別仕様車「KINTOツーリングセレクション」の取り扱いなども行っている
最近は動画の配信からホテルの宿泊まで、さまざまな業種でサブスク(サブスクリプション/定額制)のサービスが実施されている。クルマの分野でも、トヨタの「KINTO」を筆頭にサブスクが普及しはじめている。
クルマのサブスクは、定額制でクルマを使うサービスだから、基本的にはカーリース、あるいは長期のレンタカーに近い。ただしKINTOでは新車を卸し、使用期間が満了すると返却する仕組みだ。
KINTOは2019年にサービスを開始して、2020年には取り扱い車種も増やした。2019年3月から2020年12月までの累計契約件数は、1万2300件になったと発表されている。2020年6月以降には、1カ月当たり1000件を超えたこともあるという。
それでもトヨタの2020年における国内販売総数は145万台を超えた。1カ月平均でも12万台以上だ。KINTOは1カ月に1000件を超えた状態だから、普及の途上にあるサービスに位置付けられる。
トヨタがサブスクのKINTOに力を入れるのは、若い人達を中心に、クルマの使用に対する見方が変わってきたからだ。これまでクルマは購入して所有するのが常識だった。仮にローンを利用しても、残価設定型とは異なる従来型で、最終的には完全に返済してユーザーが所有権を得ることが前提だった。
そこにクルマを返却することも可能な残価設定ローン、さらにサブスクと変化が生じた背景にあるのは、携帯電話の普及だ。携帯電話は各種のサービスを含めて定額制だから、購入せずに料金を毎月引き落とす方式が多い。
特に若年層の場合、月々の出費(いわゆるお小遣い)に占める携帯電話料金の割合が30~35%に達するという調査データもある。出費に対する判断の仕方も変わり、「価格がいくらの商品なら購入できるか」ではなく「その商品のために月々いくらまで支払えるか」という思考になってきた。
残価設定ローンが急速に普及を開始した2010年頃、販売店からは「残価設定ローンが携帯電話の感覚で使われている」という話を聞いたことがある。
■トヨタやホンダに続いて、スバルも中古車のサブスクを設定
SUBARUサブスクプランのホームページ
また最近は「ユーザーが新車の購入に際して販売店を訪れる平均回数は、3回未満に留まる」という調査結果もある。メーカーや販売店のインターネットを使って、車種、グレード、オプションパーツなどを選び、購入の意思を固めてから販売店へ出向くユーザーが増えた。
クルマはサイズの大きな商品で登録制度もあり、購入後の点検や車検、リコールなども実施されるから、契約時にはセールスマンと情報交換をしなければならない。通信販売で日用品を購入する場合とは対応が違う。
つまりクルマは特殊な商品だが、クルマ離れといわれる若年層と接点を持つには、まずインターネットの利用は絶対に必要だ。メーカーや販売店も、いろいろな売り方、使い方を用意しておくことが求められる。
現時点ではどれが主流になるかわからず、乗り遅れるのも避けたい。そこで各社とも、ネットで申し込みのできるサブスクを開始している。
そしてトヨタのKINTO、ホンダのマンスリーオーナーなどに加えて、スバルも2021年3月からサブスクプランを設定した。
■クルマのサブスクは任意保険の有無で損得が分かれる
SUBARUサブスクプランで選べる車両はすべてアイサイト付き
スバルのサブスクプランは、ホンダのマンスリーオーナーと同様、中古車を貸すサービスだ。全車がアイサイトを装着している車両で、利用料金は月額3万9820円以上とされる。
例えば2019年式インプレッサスポーツ1.6i-Lアイサイトであれば、12カ月契約の場合、月額料金は4万5870円だ。同じ車両を24カ月で契約すると3万9820円に下がる。
利用料金には、税金、自賠責保険料、メンテナンス費用、任意保険料も含まれる。任意保険料は対人賠償と対物賠償が無制限、人身傷害補償は1名当たり5000万円、一般車両保険などに加入している。
運転者の範囲や年齢に条件は付帯されないため、契約者が未成年の友人と一緒にドライブに出かけ、運転を交代した時に未成年者が事故の加害者になっても任意保険を使うことが可能だ。
他社にも当てはまることだが、サブスクの損得勘定は、任意保険の有無によって大きく変わる。サブスクを最も効率よく使えるケースは、契約者に未成年の子供がいるなど、任意保険を全年齢補償にする場合だ。
全年齢補償の任意保険に加入すると、車両保険まで含めれば、任意保険料がインプレッサなどでも年額24万円/月額2万円に達することもある。若年層の事故率が高いためだ。そこに税金、自賠責保険料、車検&メンテナンス費用などを年額に換算すると約10万円を要する、月額なら約8000円だ。
そして先に述べた2019年式インプレッサスポーツ1.6i-Lアイサイトの中古車価格は約170万円になる。これを3年間の残価設定ローンで使用すると、月々の返済額は約3万5000円だ(3年後に返却する)。以上を任意保険料などと合計すると、月額約6万3000円の出費になる。
一方、先に挙げた2019年式インプレッサスポーツ1.6i-Lアイサイトのサブスクでは、利用料金は24カ月で契約すると月額3万9820円だから2万2000円ほど安い。12カ月契約の月額4万5870円と比べた時は約1万7000円安くなる。
総合的に判断すると、出費を最も抑えられるのは現金購入だ。任意保険の等級が高まって保険料の安くなったユーザーも、残価設定ローンを使ったほうが出費を抑えられる場合がある。しかし事故が続いて等級を下げたユーザーを含め、任意保険料の高い場合は、スバルのサブスクがオトクになる。
■スバルとホンダのサブスクは、それぞれ一長一短がある
HONDAマンスリーオーナーは月々2万9800円~。自動車保険も付く
サブスクを運用するスバルの販売店では、利用状況を以下のように説明した。
「サブスクでは、税金や点検費用などの負担が不意に発生せず、月々で均等の出費になる。そのためにクルマを初めて使うお客様は、出費がわかりやすく安心できる。ただし今はスタートした直後だから、サブスクを実施しているのは神奈川県と新潟県のみだ。契約件数も少ないが、新しい試みだから期待している」。
一方、ホンダマンスリーオーナーは、最短で1カ月から借りられる。最長は11カ月だから、スバルの12カ月/24カ月に比べて期間が短い。
そして利用料金は、2020年式ヴェゼルXホンダセンシングが1カ月当たり5万9800円だ。
スバルの場合、ヴェゼルXとほぼ同価格になる2019年式インプレッサスポーツ1.6i-Lアイサイトの12カ月契約が、前述の月額4万5870円になる。つまりホンダマンスリーオーナーは、期間が短い分だけ1カ月当たりの料金は高めだ。
標準付帯される任意保険は、ホンダの場合、人身傷害が1名に付き3000万円だからスバルの5000万円に比べて少し低い。走行距離の規定は、1カ月:1000kmとされ、この距離を超えると1km当たり6円が加算される。
スバルは1カ月:1500kmと余裕を持たせたが、これを超えると1km当たり22円の加算になる。このように一長一短がある。
なおレンタカーのマンスリー契約は、1か月当たり12万~15万円が多い。これに比べるとサブスクは割安だ。
■開始まもないサービスなのでじっくりと比較検討を
トヨタのKINTOでは、ヤリスクロスは1.5Gの場合、月々の料金は3年コースで4万4550円
さらに安いのがトヨタのKINTOになる。3年間が最短コースだが、前述のとおり新車を卸して使う。しかもヤリスクロス1.5Gの場合、月々の料金は3年コースで4万4550円だ。
以上のようにサブスクは、サービスが開始された直後で競争関係も曖昧だから、損得勘定も多岐にわたる。いろいろと比較して検討したい。
今後の発展は未知数だが、自分でクルマを所有したいと思わないユーザーには、合理的なサービスだ。特に任意保険が全年齢補償になるユーザーは、一層割安になる。要は若年層を集めるためのサービスだ。
そしてホンダのようなマンスリーなら、スキーに出かける冬季は4WDのSUV、夏はミニバンという季節に応じた乗り替えも可能になる。その半面、クルマは自分の所有にならないから、ユーザーが愛車にお金を掛けて愛情を注ぎにくい面もある。自動車メーカーにとって、メリットばかりとは限らない。
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一か月5000km位ならあってないようなもんだけど。