万が一の事態を想定するなら見た目よりも機能性を重視したい
世の中SUVばかりになって来たと、思いませんか? ロールスロイスのSUV、カリナンは見ましたか? ランボルギーニ・ウルスにはチータというご先祖様がいらっしゃるし、そもそもトラクター作ってましたから、違和感は少ないですね。泥が似合わないクルマを競ったら、ロールスロイスがダントツのナンバー1だと思いますが、それでもトレンドであるSUVに手を出さざるを得ないんでしょうね、きっと。
SUVがトレンドとなっているのは、日本だけでなく世界中です。とくに発祥の地アメリカのマーケットではすっかり主力として定着しています。ユーティリティの高いクルマをファミリーカーとして使うのがアメリカの歴史で、かつてはステーションワゴンがその座にありましたが、それがミニバンに代わり、そして今SUVへとトレンドが変化してきたのです。そういう意味では、SUVがステーションワゴン的な要素とミニバン的な要素を上手く組み合わせていることにも、納得できますね。
SUVは、ランドローバーのようなクロカン4WDから、コンパクトカーの車高を上げただけのものまで、幅広いですよね。でも、そのルーツはピックアップトラックなんです。トラックを乗用車のように扱って楽しむ、というのがアメリカン・テイストでしょうか。そのなかで最近のトレンドになっているのは、シティ派のアーバンSUVです。泥はまったく似合いません。高速道路のほうがピッタリです。タイヤはM+S(マッド・アンド・スノー)だったとしても、エンジンはハイパワーで高速クルージングは得意です。
クーペ的なスタイリッシュさ、スポーティな運転感覚、そして大きなユーティリティなど、いろいろなクルマの美点を併せ持つのが現代のSUV。だからクロスオーバーという表現がピッタリ。さらに、最近の過激な気象状況もあって、SUV本来の走破性の高さにも注目が集まります。しかしSUVだから走破性は高い、というのは錯覚です。SUVにもいろいろなスタイルがあり、そのキャラクターによって性能はさまざまなんです。
まず豪雨などの水害では、もっとも役に立つのは4WDシステムよりも、最低地上高です。グランドクリアランスと呼んだりします。地面からのクリアランスが小さいと、悪路を含めて性能が発揮できません。腹を打って亀の子になってしまったら、どんな駆動方式も有効ではありません。本格派のオフローダーであれば200mm以上は最低限必要です。しかし一般的な乗用車は130mm前後。「なんだ、たった7cmのハナシか」というものではありません。その7cmが、かなり大きな差になるんです。走破性に期待するなら、少なくとも180mmくらいの最低地上高は欲しいですね。
雪道や冠水路では、前後のバンパーに付けられたエアロパーツも、大きなデメリットになります。空気を抑えるような、エアダム形状のスポイラーは、走破性を大きく低下させます。フロントタイヤの接地点からフロントのバンパー下端を結んだ直線の角度をアプローチアングル、リヤをデパーチャーアングルと呼びます。これが大きいほど、大きな障害物を乗り越えることが可能になります。そのため下に、前に伸びたエアロパーツは、邪魔になるだけなんですね。
4WDシステムは、その先の選択です。4WDシステムがもっとも有効なのは発進時です。もっとも大きな力がタイヤにかかる瞬間です。駆動力を4輪に分散させることができるので、タイヤはグリップを失いにくく発進しやすいのです。これは路面ミューが低いほどグリップが失われやすいので、4WDシステムの効果が高くなります。確かにセンターデフロック機構付きは悪路走破性は圧倒的に有利ですが、FFベースの4WDにありがちなオン・デ・マンド方式=フロントタイヤが滑り出したとき、リヤタイヤに駆動力が与えられる方式でも、発進時であれば有効に機能します。少なくとも、普通の道をターゲットにするなら、システム自体に大きな差はありません。
駆動方式よりも重要なのはタイヤです。排水性が高いのは、やはりオールシーズンタイヤ。マッド・アンド・スノー(M+S)と表記される場合もありますが、高い排水性を持っていることで、冠水路でもグリップを作り出しやすいのです。トレンドでもある18インチや19インチといったワイドな大径タイヤでは、排水性が悪くグリップは低くなってしまいます。
スタイルとしては走破性が高そうなSUVですが、しかし仕様によっては一般的な乗用車と変わらないこともあります。もししっかりとした走破性を確保しようとするなら、スペックを含めて検討することが重要なんです。
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