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バスの話 低床フルフラット、リターダー付きAT世界標準がようやく日本に導入

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バスの話 低床フルフラット、リターダー付きAT世界標準がようやく日本に導入

海外では常識とされることが、国内では「意外なこと」、というのを多くの人が経験すると思うが、先日、ドイツ・フランクフルトの市内を走る市バスがフルフラットであることに気づいた。気にして他も見てみると、また、海外経験が豊富な人に話を聞いてみると、このフルフラットの低床バスは、欧州では当たり前の形状だということが分かった。そこで、バス、トラックなどに部品供給をしている世界的サプライヤーのZFへ話を聞いてみた。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

実は、偶然にも、低床のフルフラットバスは東京都の都バスに採用が始まるというタイミングだった。2017年9月7日に東京都交通局からリリースが発行されていて、そこには『誰もが利用しやすい路線バスの実現に向けた取り組みを進めます』という文言とともに、フルフラットバス導入を2018年度中に行なうと書かれているのだ。

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そこでフラットフロアのバスを調べてみると、ネット情報によれば欧州メーカーのSCANIA(スカニア・スウェーデン)社だと分かった。そこでSCANIAに部品供給しているZFに取材をすると、フラットフロアのバスにZFのリヤアクスルとATトランスミッションの納入が決まり、そのバスが東京都に納入されるということなのだ。都バスがガイシャになる。もちろん都バス向け仕様になっているのは言うまでもないが。

■世界のバス事情と旧式の国内バス事情

冒頭で書いたように、多くの人が海外では低床のフルフラットバスに乗ったり、見たりして体験していると思うが、国内では中ドアより後方には段差がある。東京都では2020年大会に向けて、またその先を見据えての対応としてフルフラットバスの導入、としてある。

これは、海外から多くの人が来日し、その会場移動にバスを利用することを考えていると。そこで誰もが利用しやすい路線バスのモデルを先導的に構築し、東京から全国へ発信する取り組みと位置付けているわけだ。段差をなくしバリヤフリーとし、高齢者のみならず誰もが車内後方まで移動しやすくなり、前方の混雑緩和に寄与するとしている。

つまり、低床のフルフラットはバス利用者にとってデメリットとなるものはなく、メリットだけがあるということだ。だから、海外では、特に欧州ではフルフラットが当たり前であり、段差のあるバスは限られた利用になっているというわけだ。

ZFの麦嶋氏の説明によると、現在のバスのセグメントは国内では大きく分けて2つであると。それは市バスと観光バスだ。だが欧州では3つあり、プラスしてインターシティというセグメントがあるという。これはいわば中距離であり、乗降があまりなく、比較的長い時間乗車する乗り方のバスで、郊外を走る路線バスだ。バスの後ろに段差があるタイプはこの郊外用のバスとして利用されているのが一般的だという。国内に目を向けると、この欧州では郊外用の路線バスが大都市東京のど真ん中で運行されている、ということに気づくわけだ。

東京都でもそうした世界の常識に遅れてはならないと判断したのかどうか、フルフラットバスを導入することに対しては積極的であるということが分かった。

■低床に必要なアクスル

車両後端をフルフラットにするには、どうするか。現状は大型もしくは中型トラック用のリヤアクスルと共用するバスが一般的でそのため、フロアを高くする設計になっている。ZFでは、1983年には低床用のリヤアクスルの販売を始めており、35年前から製造、販売していることになる。そして96年頃からは、その利便性が認められ、多くのバス製造メーカーから支持され本格量産を行なっている。その最初の顧客がメルセデス・ベンツだったそうだ。もちろん現在もメルセデス・ベンツを始め、世界中のバスメーカーへの供給は継続されている。

この低床化をするためにはデフの配置をオフセットしたりして、アクスルの専用設計が必要になる。35年以上の歴史を持つZFのアクスルは信頼と実績を重ね、現在ではライバル不在となるほどマーケットのシェアを押さえているという。つまり、低床のフルフラットバスを見たら、ZFのアクスルを採用しているとみて間違いないのだ。

また、台湾などアジアにおいてもフルフラットが行政からの指定形状になっている国もあり、もはや段差のあるバスが大都市の市バスとして走行しているのは少数派だという。

■低床フルフラットのメリット

バス車内での人の流動性の点からもメリットがあるという。通常、運賃は運転席で支払われるわけで、これは世界中で共通だ。理想的には、リヤドアを設けてリヤから乗り込み、降車時は前へ移動し料金を払う。あるいは、その逆で、運賃先払いでリヤドアから降車するという動きがスムーズだ。


現在の都バスは前払いで、バス中央から降車する。段差のある後方の通路に立つ人は少なく、前から中央付近に人がたまっているというスペース効率の悪さが目立つ。こうしたスペース効率や人の流動性の点でも段差のあるバスを市バスとして利用するのは効率が悪いわけだ。

国内でも一部連節バスのフルフラットが走行しているエリアもあり、東京町田市や神奈川県藤沢市ではメルセデス・ベンツの連節バスが運行されている。また、新潟市でもSCANIAの連節バスが運行されている。こうしたバスは近代的で、大都市に相応しい効率と先進性を持ち合わせていると感じるが、そこを常識としている欧州、アジアの人達の視点で、段差のあるバスは郊外用の効率の悪いバスを東京で走らせていると目に映るのだろう。

■ATトランスミッション

そして、もうひとつ驚いたことは、バスにはマニュアル車が非常に多いことだ。国内でも2015年にMT車の製造がなくなったようで、この先はAT化されていくが、その部分でも世界から遅れていることは否めない。欧州では、市バスは10年以上前からAT車のみとなっている。今回の都バスへSCANIAの低床バスが30台弱導入されるが、もちろんAT仕様になっている。

そしてこのATもZF製のトランスミッション“Ecolife”になっている。こちらはリターダーを標準装備としている点も注目したい。というのはリターダーとはバスやトラックに搭載される補助ブレーキで、エンジンブレーキや排気ブレーキより制動力が強く効かせることができる電子制御された機械式の補助ブレーキだ。

このリターダーの搭載は世界標準とされているが、国内ではMTということもあり、搭載していないバスがほとんどだ。それが2016年に起きた軽井沢碓氷バイパスで起きたスキーバスの事故で、リターダーの搭載が注目されることになったという。リターダーがあればブレーキの摩材への負荷が少なくて済み、フェード現象も起こりにくい。さらに言えば、ドラムブレーキはもはや認可しない国が多い中、現在の国産バスはドラムブレーキをいまだ使っている。SCANIAのバスは当然ディクスブレーキを標準としているので安心だが、こうしたことからもバスの機構、構造では世界の潮流に乗っていないことが分かる。島国だからこそ独自展開したのかもしれないが。

■まとめ

東京都が導入を決めた低床バスは、単に床がフルフラットであることの他、世界の常識も同時に輸入することになることが分かる。公共機関としてのバス運用において、ようやく世界標準が日本にやってくるということなのだ。

最後にパワートレーンだが、メインはディーゼルである。経産省の推し進める政策によりFCVバスも運行されるが、1500台近くあるうちの数台がFCV、CNGで、残りはディーゼルということになる。低炭素社会に向けての取り組みにおいてもBEV化が必須と思われるが、国の政策はFCVである。

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