「バック トゥ ザ フューチャー」3部作の中で、翼の生えた怪物デロリアンDMC-12はタイムマシンに変異した。その心臓部、"フラックスコンペンセーター" - 点滅するチューブのついたブリキの箱。クラシック オブ ザ デイ!
当時の『バック トゥ ザ フューチャー』の脚本家にとって、光るディスプレイ、ボタン、スイッチは特に重要だった。タイムマシンに「デロリアンDMC-12」が選ばれたのはそのためだ。その形とガルウィングドアが宇宙船のように見えたのだ。
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デロリアンの改造には多くのアドリブが盛り込まれた
品質が悪いという汚名を着せられたこのスポーツカーは、1980年代初頭にはすでに安価で入手可能だった。アメリカ人のケヴィン パイクは、1984年の3部作の第1部に登場する映画オリジナルのデロリアンの製作を担当した。彼は、「1台は12,000ドル(約180万円)、1台は15,000ドル(約225万円)、1台は18,000ドル(約270万円)で購入しました」と述べている。今日、使用可能なデロリアンを30,000ドル(約450万円)以下で手に入れるのは難しい。
リビルドには多くの即興で手に入る部品が使われた。「ダッジ ポララ」のリムカバーとヘリコプターエンジンの部品を組み合わせて、フラックスコンペンセーターの「プルトニウムチャンバー」のアタッチメントとして使用した。
多くの照明エレメントを統合するのも手間がかかることがわかった。当時、ゴム製のフレキシブルなLEDチューブは存在しなかった。ケヴィン パイクは、ガラス製ですぐに割れてしまうネオン管を使わざるを得なかった。
DMC-12は完全な失敗作だった
デロリアンはショーのスターだが、巨大な旋回半径、燃費の悪さ、粗いサスペンション、鈍いステアリングなどクルマとしての出来はイマイチだった。ルノーの5速ギアボックスは、荒々しい2.8リッターV6と不器用に協調する。
このクルマを開発したジョン デロリアンは、ゼネラル・モーターズのトップマネージャーだった。1970年代初頭、GMはそのようなものにまったく興味を示さなかった。デロリアンは、世界最大の自動車メーカーに不満を抱いて退社して、1975年にデロリアンモーターカンパニーを設立した。イタルデザインは彼らにミッドエンジンスポーツカーのスケッチを提供した。イタルデザインは、ポルシェが「928」の提案として却下したジウジアーロのデザインを再利用したと言われている。
今日、使用可能なデロリアンを30,000ドル(約480万円)以下で手に入れることは難しい。タイムマシンのレプリカは増え続けている。ケヴィン パイクは、世界中で改造されたデロリアンの台数を約135台と見積もっている。
大林晃平: 以前にもデロリアンのことをアウトビルトジャパンのコンテンツで記したことがあったが https://autobild.jp/1879/ 今回はこの車を世界的に有名にした映画「バックトゥザフューチャー」のデロリアンのタイムマシンが主役である。
その前にざっとデロリアンの成り立ちとその数奇な運命に簡単に触れておくと、デロリアンはかつてGMの重役であったジョン Z デロリアンが同社を退いた後、自らの名前を抱いた自動車を作るという夢を現実にするため、1981年から生産されたガルウィングドアのステンレス製ボディを持つ2シータークーペである。カクカクっとしたデザインのボディはジョルジョット ジュージアーロが描いたもので、エンジンはPRV(プジョー、ルノー、ボルボ)の開発したV6エンジンを搭載。5速マニュアルミッションと3速ATがあり、主に走る部分の開発に関してはロータスが関わっている。
本当の自動車名称はDMC-12というのが正しく、これはデローリアンモーターカーズと言う意味の「DMC」に、12,000ドルを販売目標価格として設定した「12」と言う数字に起因するネーミングである。ところが当初の12,000ドルではどうにもこうにも販売することができず、実際にはその倍の25,000ドルの価格となってしまったことと、様々な部分の信頼性が悪かった(とにかくしょっちゅう壊れた)ことが仇となり、受注キャンセルが続出。会社は資金繰りに生きづまり、最終的にはデロリアン社長もコカイン所持容疑で逮捕されるなど様々な問題を抱え、結局9,000台を切る、8975台で生産を打ち切った、以上がものすごくかいつまんで解説したデロリアンの歴史である。
さてそんなデロリアンは一時期忘れ去られた存在であったが、映画「バック トゥ ザ フューチャー」に1985年に出演したことで一躍脚光を浴び、今でも世界中で認知される車となっていることは言うまでないだろう。おそらくボンドカーと並び、映画内でこれだけの主役級存在感を張ることのできる一台はこれと、スティーブ マックイーンの乗ったマスタングくらいだろうか。
バック トゥ ザ フューチャーの1作目では3台ほどのデロリアンが使われたと聞くが、最初の作品が大好評であったため、そのあとに作られたパート2と3には、さらに3台ほどが使われ、様々な改造と改良を施されている。1と2と3でその姿はずいぶん異なるし、劇中での設定や仕様なども大きく異なるが、おそらくもっともファンが好きなのは最初の1の中でも、未来で改良を受けた結果、空き缶などのエネルギーだけで空を飛び次元を転移することのできる「なんでもあり仕様」ではなく、クリストファー ロイドの演じたエメット ブラウン博士(通称ドク)が一番最初にタイムマシンに改造したモデルに尽きる、と思う。
88マイル(141km)まで加速した時に、次元転移装置に1.21ジゴワットの電流を流すことにより自由に未来へも過去へも行くことができる、というのが当初の劇中の設定で、この1.21ジゴワット(GW)と言う数値は、「バック トゥ ザ フューチャー」ファンだったら誰でも記憶し、合言葉のように言える数値と言える。
ちなみに次元転移装置は「フラックス キャパシター」と劇中で言われており、Y字型に配置された3本のチューブがどうやら次元転移装置の構造上のキモの部分らしい。(ドクが1955年の11月5日にトイレで転んで頭をぶつけた際に着想して描いた絵がもとになって発明されたという設定)。
この次元転移装置と組み合わされるのがタイムディスプレーと言われる光電管3段階のデジタル表示部分と、1.21ジゴワットを発生するための超小型の核分裂炉(つまり原子炉)だが、プロトニウムの燃料棒を差し込むことにより核分裂反応を起こすという設定であり、補給の際には被爆しないように、黄色い放射線防護服を着なくてはいけないなど、設定はなかなか細かい。
なお、三段階のタイムディスプレー部分は最上部の赤色の表示が転移を希望する先の時間、二段目の緑の部分が現在時間、最下部の黄色っぽいデジタル表示が前回の出発時間となっており、基本的には出発した場所と同じ部分に転移することになっている(ので、数々のシナリオ上のトラブルが発生するのである)。
なお、そんなデロリアンタイムマシンのマイクロチップは日本製という設定だし、試験走行の際には、日本の双葉電子工業製無線操縦装置が使用されたり、ハイラックスやソニーのビデオカメラが出てきたりするなど、日本製品が輝いていた頃の良い時代だなぁと思わざるを得ない部分が多数出てくる映画であり、そういう意味でも細かい部分でもぬかりなく? 時代を描いた作品であった。
そんなデロリアンが劇中でつけていたナンバープレートはカルフォルニアナンバーで「OUTATIME」と書かれている。これは「OUT OF TIME」つまり時空を超えるという意味で、こういった部分まで配慮しているのも、アメリカ映画らしいなぁ、と思う部分である(アメリカのサイトでは、レプリカのナンバープレートが30ドル前後で売られているのも、アメリカだよなぁ、と思う)。
なんでも当初、映画でのタイムマシンの設定は冷蔵庫だったともいわれているが、子どもが真似して冷蔵庫に入ってしまう可能性があるため、自動車 = デロリアンという設定に変更されたという。とにかくデロリアンがタイムマシンの題材として選ばれて良かった。現在も憧れのアイテムとして君臨できているのだから。
Text: Stefan Voswinkel, Matthias Techau and Marcel Nobis
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