三菱自動車工業(以下、三菱)が2024年2月15日に販売を開始した新型トライトンは、1978年に発売されたピックアップトラック「フォルテ」をルーツとするモデルとして、世界約150ヵ国で販売されてきた世界戦略車です。この新型は「新世代のピックアップトラック」に相応しい快適性や高い走行性能を持ち、さらに「三菱らしさ」も満載のモデルとなっていました。
存在感のあるデザインと高いオンオフ性能
新型トライトンは「Power for Adventure」という商品コンセプトのもとで開発を進められ、内外装デザインからシャシ、ラダーフレーム、エンジンなどが一新されました。2023年7月にタイ・バンコクでワールドプレミアされてからグローバル展開されており、2024年2月についに日本でも販売が開始されました。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
さっそく、実車と対面すると、その迫力に圧倒されます。なぜなら、ボディサイズは全長5360×全幅1930×全高1815mm、ホイールベース3130mmと巨体で、「BEAST MODE(勇猛果敢)」というコンセプトでデザインされたフロントマスクも存在感を主張しています。ちなみに、このボディサイズは日本国内で販売されているピックアップトラックのトヨタハイラックス(全長5320×全幅1900×全高1840mm)とはほぼ同じぐらいのサイズとなります。
搭載されるパワートレーンは、新開発の2.4L直列4気筒クリーンディーゼルターボエンジンで、回転数と負荷に応じてふたつのタービンを協調させる2ステージターボシステムを採用しています。最高出力は204psで、最大トルクは470Nmを1500回転からフラットに発生する特性を持っています。
まずはワインディングロードでその実力を確認
まずは一般道を走ることができました。高い着座位置の運転席に飛び乗るように座ると、見晴らしが良く、視界が広がります。スタートスイッチを押して、エンジンを掛ければ、意外と大人しめ?なサウンドで、静粛性の高さが伺えます。もちろん、大きく震えるような振動などもありません。
さっそく走り出すと、まず車幅感覚の掴みやすさに注目しました。全幅は1930mmあるので、かなり大きい部類に入りますが、スクエアなボディ形状や見切りの良さで想像以上に運転はしやすそうです。さすがにバック駐車の際など全長の長さ(特に後方)を感じる場面もありましたが、そこは4つのカメラによるマルチアラウンドモニターなどを活用して、慎重に運転すれば問題はありません。
今回はワインディングロードの走行となったので、高い速度域については確認することはできませんでしたが、低回転からトルクを発生するエンジンのおかげで、アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から出足は良く、車両重量が2140kgもあるクルマとは思えないほどの瞬発力を持っていました。
大きな車体とは裏腹に軽快なハンドリング、コーナーが楽しい
それでいてハンドリングは意外なほど軽快。ハンドルを切り込んだらスーッと曲がり、高い追従性で狙った通りにコーナーを駆け抜けることができます。ふと、この時、いま4WDで走っていることに気づきました。セレクターを確認したところ、4Hモード(フルタイム4WD)でした。
以前、パートタイム4WDのSUVに乗っていた筆者の場合は、構造は理解しているつもりでも、トライトンのように本格的な悪路走破性を持つモデルが、乾燥舗装路を4WDのままひらりひらりと舞うようにコーナーを駆け抜けたことにあらためて衝撃を覚えました。
これは三菱の独自技術として、1990年代前半のパジェロから採用している4WDシステムなので驚くことではないのですが、その進化版となる「スーパーセレクト4WD-II」のすごさをあらためて体感した場面でした。トルク感応式のセンターデフを備えたこの4Hモードでは、このように乾燥舗装路でも常に4WDで走行することが可能でなのです(前後のトルク配分は前40、後60が基本)。
さらにトライトンには左右の駆動トルクを分配する「アクティブヨーコントロール(AYC)」も搭載しています。コーナー内側にある前輪に弱くブレーキをかけることで旋回性を向上させ、後輪にブレーキ制御式のアクティブLSDも組み合わせることで、グリップ力を高めて、トライトンほどの大柄なボディであっても意のままに操れる走行性能を実現しているのです。
ちなみに2Hモードに変更して後輪駆動でも走ってみたのですが、4Hモードの安定感と操縦性能を両立したバランスが良すぎて、ワインディングロードは4Hで良いなと思ってしまいました。とはいえ、市街地などで軽めの操作感の方が動きやすい場面などでは2Hを使うと良いのでしょう。
こんな風に2Hと4Hでしっかりと違いを体感できるのも良いですよね。2Hは後輪駆動らしい素直なハンドリングで、4Hに切り替えるとハンドルも少し重くなり、前輪への駆動力がハンドルを握る両手からも伝わりますし、直線では安定感マシマシで、鉄の棒になったような安定感があります。トライトンがすごいのはそのままコーナーへ侵入しても曲がっていけることですが……。
そんな感動と驚きを味わいながら、さらに伝えたいのはその快適性です。室内に乗り込んだ時から静粛性は高いと感じていましたが、ディーゼルエンジンのガラガラ音などは当然無縁。車内はしっかりと遮音され、静粛性はかなり高いので、クルージングはかなり快適なことでしょう。今回は高速道路を乗ることはできませんでしたが、高速巡航も期待できます。
オフロードコースも余裕でクリアする走破性が頼もしい
続いてオフロードコースを試乗しました。ここに舞台を移せば、トライトンのさらなる実力の高さを見ることができます。驚いたのは、過酷なコースなはずなのですが、アクセルペダルでうまくコントロールすることで、4Hのままでもクリアできてしまったこと。それはそれで問題なので、モーグルと呼ばれる難関にもチャレンジ。ここでは4LLc(ローギヤ直結4WD)モードを試したり、デフロックを使ってみました。すると、特別操作に気を使うことなくクリアすることができました。
この性能の高さを日本ではあまり発揮する機会はなくとも、まだまだ発展途上の世界各国での使用なども想定されたトライトンにはこのようなタフな性能が求められています。日常的にこのようなオフロードを走る機会がない日本でも、この性能を知れば、いざというときの安心感は段違いです。
通常であれば高いオフロード性能を手に入れたかわりに、オンロード性能を犠牲にしてしまうことだってあると思いますが、トライトンは違います。オフロードはパジェロ、そしてオンロード性能からはランサーエボリューションの雰囲気を感じた(グレードもGSRだし)のは気のせいでしょうか。
まだまだ趣味性が高く、一般的とは言い難いピックアップトラックですが、トライトンほどの高い快適性を備え、オンオフ問わず走りも楽しめるモデルであれば、大型SUV選びの候補として選択肢に入れても良いのではないでしょうか。もちろん、その巨体を停める駐車場を確保できる環境があるならばですが……。きっと、すてきなカーライフがまっているはずです。(撮影:井上雅行)
三菱トライトン GSR 主要諸元
●Engine
型式:4N16
エンジン種類:直4DOHCディーゼルターボ
排気量:2439cc
エンジン最高出力:150kW(204ps)/3500rpm
エンジン最大トルク:470Nm(47.9kgm)/1500-2750rpm
燃料・タンク容量:軽油・75L
WLTCモード燃費:11.3km/L
●Dimension&Weight
全長×全幅×全高:5360×1930×1815mm
ホイールベース:3130mm
車両重量:2140kg
●Chassis
駆動方式:4WD
トランスミッション:6速AT
サスペンション形式 前/後:ダブルウイッシュボーン/リーフスプリング
ブレーキ 前/後:Vディスク/ドラム
タイヤサイズ:265/60R18
●Price車両価格:5,401,000円
[ アルバム : 三菱トライトンGSR はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
迷惑をかけるとか気にしない人が買うんだろう。