2022年1月13日に発表発売となった新型ヴォクシー/ノアが、1月中旬の時点ですでに受注3万台を超えているという。年末から全国のトヨタ販売店で受注を受け付けていたとはいえ、つい先日まで従来型を売りまくっていながらこの数字は驚異的。早くも大ヒットと言っていいだろう。しかしその内訳を見るとすこし気になる点もある。
また、今年はホンダから新型ステップワゴンが発売される。国内最激戦区であるミドルクラスミニバンに、新たな販売戦線が誕生する。新型ヴォクシー/ノアと新型ステップワゴンはそれぞれどのような特徴を持っており、どちらがお買い得なのか。最速でライバル比較をお届けします。
飛躍アルファードと失速ヴェルファイア…運命を分けた理由と未来
文/渡辺陽一郎
写真/トヨタ、ホンダ、ベストカー編集部
[gallink]
■新型ヴォクシー/ノア両車の受注は好調だがその内訳は…
2022年1月上旬の時点で、新型ヴォクシー&ノアの受注台数が3万1500台に達した。受注は(2022年1月13日の)正式発表発売前から行われ、販売店では2021年10月初旬には簡単な資料を見せて予約受注の告知を行っていた。12月8日頃からは正式な価格を公表して見積り書も作製。そのような状況でも先代ヴォクシー&ノア+生産を終えたエスクァイアの登録台数は1か月平均で1万565台を確保していた。
2022年1月上旬時点で、新型ヴォクシー&ノアの受注台数はすでに3万1500台に達している(写真中央に立つのは3代続けてヴォクシー/ノアの開発に携わるチーフエンジニアのトヨタ車体・水澗英紀氏)
このあたりの経緯を考えると、新型ヴォクシー&ノアの受注台数が3万台を超えても不思議はないが、好調に売られる商品であることは間違いない。
トヨタが発表した新型ヴォクシー&ノアの販売基準台数(月販目標台数)は、ノアが1か月当たり8100台、ヴォクシーは5400台とされる。合計すれば1万3500台で、モデル末期だった2021年の1万565台に近い。つまり新型の販売基準は「無理をせずに達成できる台数」としたわけだ。
ここで注目すべきは、販売基準台数と、実際の受注台数では、ヴォクシー&ノアの内訳が異なることだ。販売基準台数では、ノアが60%(8100台)でヴォクシーは40%(5400台)だが、先に述べた(現時点での受注台数である)3万1500台は、ヴォクシーが60%を占める。両車の比率が販売基準と受注では逆転しているわけだ。
先代型の2021年における販売内訳は、ヴォクシー55%、ノア35%、エスクァイア10%であった。ヴォクシー対ノアの比率は、おおむね60:40%になる。
新型ヴォクシーはエアロのみ、ノアは標準ボディとエアロの2種類を用意するから、本来なら後者の売れ行きを伸ばしたい。そこで新型では、ノアのフロントマスクを従来以上に存在感の強い形状に改め、ヴォクシーは革新的なデザインへ飛躍させた。加えて価格も異なり、装備がほとんど共通のエアロ同士で比べても、価格はノアが5万~7万円安い。ノアを中心に攻めたいトヨタの意図が伺われるが、今後の販売動向は分からない。
■新型ヴォクシー/ノアとステップワゴンの内外装を比較
2022年には、新型ヴォクシー&ノアのライバル車となるホンダのステップワゴンと日産セレナもフルモデルチェンジを行う。ステップワゴンは2021年12月にティザーキャンペーンを開始して、2022年1月7日には、内外装のデザインも公開された。
ホンダの販売店によると「2月には価格も明らかにして予約受注が始まり、納車を伴う発売は4月から5月になる」という。
新型ヴォクシー&ノアと新型ステップワゴンを比べると、車内はステップワゴンが若干広い。身長170cmの大人6名が乗車して、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ2つ分に調節すると、3列目に座る乗員の膝先空間は、ステップワゴンでは握りコブシ2つ分だ。ヴォクシー&ノアでは、2つ弱に留まるから少し狭い。
シートのサイズは、1/2列目は両車ともに同等だが、3列目はヴォクシー&ノアの座面が少し長い。その代わりステップワゴンは座面の厚みを20mm増して座り心地を向上させた。多人数乗車時の居住性を総合的に判断すると、車内の視覚的な広々感も含めて、ステップワゴンが少し勝る。
荷室の使い勝手はヴォクシー&ノアが改善を行った。先代型もレバーを引くと自動的に左右に跳ね上がったが、ストラップで固定する必要もあった。そこで新型は、跳ね上げた3列目をサイドウインドー側に押し込むと、自動的にロックされるようにした。ステップワゴンの3列目は、以前と同じ床下格納でスッキリした荷室になるが、シートアレンジの使いやすさではヴォクシー&ノアが勝る。このように両車を比べると、居住性と積載性は一長一短だ。
■装備の比較
次は装備を比較する。まず安全性を高める装備として、ヴォクシー&ノアはスライドドアに安心降車アシストを採用した。電動スライドドアを開こうとしている時、車両の脇にクルマや自転車が接近すると、作動を停止するものだ。通常の横開きドアでは、開いた時に乗員の前側が塞がれ、横向きに降車するが、スライドドアでは斜め前方が開放される。そのために子供の飛び出しを誘発しやすい。
しかも横開きドアなら、開いたことが後方から接近する車両のドライバーにも分かりやすいが、スライドドアは外側への張り出し量が少ないから分かりにくい。狭い場所で乗り降りしやすいスライドドアのメリットが、路上のコインパーキングに駐車した時などは、危険性を高める原因になってしまう。
安心降車アシストは、価格も魅力だ。ドライバーの死角に入る後方の並走車両などを知らせるブラインドスポットモニターと併せて、13万4200円でオプション設定した。共通のセンサーを使うことで、安心降車アシストのコストを低減させている。
ヴォクシー&ノアでは、プロアクティブドライビングアシストも注目される。例えば車両が路側帯を歩く歩行者を検知した時、車道に近付いてくる危険を予測して、ブレーキやステアリングによる回避操作を支援する。ドライバーがアクセルペダルを戻した時は、先行車との車間距離が近付き過ぎないように制御したり、カーブを曲がる時も支援を行う。衝突被害軽減ブレーキは、危険が迫った時に作動するが、プロアクティブドライビングアシストは、危険に近寄らないように制御する装備だ。
ヴォクシー 注目される点はプロアクティブドライビングアシスト。危険を予測してブレーキやステアリングによる回避操作を支援するシステムである
このほかヴォクシー&ノアは、スライドドアの開閉に伴って自動的にせり出すユニバーサルステップ(サイドステップ)もオプション設定した。電動ではなく機械式だから、オプション価格も3万3000円と安い。フリーストップバックドアも採用され、バックドアを好みの位置で、半開き状態で停止できる。車両の後方が狭い縦列駐車中でも、荷物を出し入れしやすい。
駐車を支援するアドバンストパークは、駐車場所がモニター画面に示され、スイッチを入れると作動を開始する。操舵と車速が自動調節され、前進と後退の切り替えも自動的に行う。リモート機能付きも用意され、スマートフォンを使って車外からでも車庫入れの操作を行える。1つの車庫に複数の車両が駐車している時など、スライドドアを備えたミニバンでも乗り降りしにくい場合があり、このような時にはリモート機能は便利だ。
■ミニバンとしての基本的な機能に差はない
新型ステップワゴンの装備は正確には不明だが、先進装備として分かっているのは、スパーダに装着されるバックドアの電動機能、スパーダプレミアムラインに装着されるハイビーム時に対向車などの眩惑を抑えるアダプティブドライビングビーム程度だ。これらの装備は、新型ヴォクシー&ノアにも用意されるから、ステップワゴンの優位性にはならない。
そして新型ステップワゴンは、先代型に設定のあった縦長のサブドアを内蔵するバックドアを廃止した。狭い場所で開閉できて、3列目シートの左側を格納すると、バックドアのサブドアから乗り降りできた。先に述べたボディの側面から乗降できない時にも使える便利な装備だったが、「お客様から人気を得られなかった」という理由で廃止されている。
WLTCモード燃費は、ヴォクシー&ノアでは2Lのノーマルエンジンが15.0~15.1km/Lだから、先代型に比べて燃料代を約10%節約できる。ハイブリッドは23.0~23.4km/Lで、先代型に比べると燃料代を15~17%減らせる。
ここまでヴォクシー&ノアの燃費性能が向上した理由は、エンジンなどのメカニズムを刷新したからだ。ノーマルエンジンはハリアーなどが使うタイプに変わり、ハイブリッドは第5世代に切り替えられた。
新型ヴォクシー&ノアはプラットフォームを刷新したが、その目的もこれらの新しいメカニズムを採用することだった。開発者は「従来のプラットフォームは設計が古く、新しいエンジンやハイブリッドを搭載できない。そこで新型では、プラットフォームなどを含めて、すべてを造り変えた」という。
ステップワゴンの燃費は不明だが、エンジン、e:HEV(ハイブリッドシステム)、プラットフォームなどは先代型と基本的に共通だ。e:HEVも燃費を向上させて、4WDにも改善を加えるが、燃費についてはヴォクシー&ノアが優位になる可能性が高い。
ヴォクシー&ノア/ステップワゴン/セレナなどのミニバンは、20年以上にわたり、日本のユーザーを見据えて進化してきた。そのためにミニバンの基本となる車内の広さや荷室の使い勝手は、相当に熟成されている。運転のしやすさを考えると、ボディの大幅な拡大はできない。そうなるとフルモデルチェンジを行っても、ミニバンの基本的な機能には差が生じない。
■ライバル社との選択の決め手は装備となるだろう
新型ヴォクシー&ノアとライバル社は、価格も競争が激しいために拮抗している。
今後発売される新型ステップワゴンとセレナは、ヴォクシー&ノアを意識して若干割安に抑えるはずだが、大きな差額には至らないだろう。
そうなるとユーザーは選ぶ時に迷う。そこで選択の決め手になるのが装備だ。特にミニバンは大切な家族を同乗させるから、安全装備は気になる。
ヴォクシー&ノアの安心降車アシスト、プロアクティブドライビングアシストなどは、選択理由のひとつになり得る。
ミニバンでは、子供や高齢者も乗せるから、乗降性やシートアレンジの使い勝手も大切だ。ヴォクシー&ノアに割安な価格で設定されるユニバーサルステップ、フリーストップバックドアなどは、ミニバンのユーザーには魅力的な装備になり得る。
就学年齢の子供がいる世帯では、日常的な出費が高まるので、燃費性能も大切だ。前述の通り、ヴォクシー&ノアはそこもしっかり押さえた。
以上のようにヴォクシー&ノアは、1か月で1万台を超える膨大な販売実績に支えられ、トヨタらしいコストを費やした周到なクルマ造りを行っている。かつてのマークIIやコロナで見せた「トヨタらしさ」も息付いている。
一方ステップワゴンも、シートの座り心地を改善して、e:HEVと4WDも進化させる。クルマの本質を押さえるが、ヴォクシー&ノアに比べると、安全性や使い勝手を向上させる装備のワザが足りないように思う。
新型ステップワゴン ホンダの国内販売の将来は新型ステップワゴンで決まるといっても大げさではないだろう
2021年1~12月の国内販売状況を見ると、新車として売られたホンダ車の33%がN-BOXで、軽自動車全体になると50%を超えた。そこにフィット、フリード、ヴェゼルを加えると84%に達する。
ホンダのブランドイメージが「小さなクルマのメーカー」にダウンサイジングしてよいなら、ステップワゴンは今までの機能を踏襲して進化させても構わない。その代わり売れ行きは時間の経過に伴って下がっていくだろう。
逆に、かつてのホンダのブランドイメージを取り戻して国内販売を整えたいなら、ミドルサイズ以上の最多販売車種になるステップワゴンは大切だ。細かな機能にまで工夫を凝らして売れ行きを伸ばせば「小さなクルマのメーカー」から離脱することも可能になる。
ホンダの国内販売の将来は、新型ステップワゴンで決まるといっても大げさではない。頑張れステップワゴン、負けるなホンダ!
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文/渡辺陽一郎
お察しください笑