欧州では3年間に12万台を販売
キアのコンパクト・クロスオーバー、X(クロス)シードは好調だ。デビューは2019年で、これまでに12万台が欧州ユーザーのもとへ渡っている。英国では、キアの販売の10%をXシードが占めているという。
【画像】欧州で販売好調 キア Xシード 競合するクロスオーバーと写真で比較 全112枚
通常のハッチバック版、シードと同等数が売れてもいる。ルノー・メガーヌやフォード・フォーカスなども含む、従来的なファミリー・ハッチバックのお株を奪う勢いで、クロスオーバー人気は高まる一方のようだ。
そんなXシードは発売から3年目を迎え、モデル中期のマイナーチェンジが施された。今後の戦いも、安全に進めるために。基本的には見た目のリフレッシュが中心で、ショールームでのアピール力を高めることへ力が注がれている。
英国に導入されるパワートレインは、160psを発揮する1.5Lのガソリンターボと、1.6Lガソリンに駆動用モーターが組み合された、141psのプラグイン・ハイブリッド(PHEV)という2種類。今回試乗したのは、主にPHEVの方だ。
マイナーチェンジでは、ヘッドライトがLEDとなり、フロントグリルやバンパーまわりのデザインが一新された。これには、フロントタイヤへの気流を整えるエアカーテンも内蔵されている。
リアバンパーも新しくなり、ディフューザー風のデザインが与えられた。キアは両サイドの造形をエグゾースト風と表現するが、必要なのだろうか。
快適性重視の柔らかいスプリング
インテリアの変更は小さい。ダッシュボード中央にはインフォテインメント用のタッチモニターが据えられ、内装は期待以上に上級感がある。トリムグレードには、GTラインが追加された。
ホイールベースは2650mmと短めで、リアシート側のゆとりは限定的。だが、オーバーハングが伸ばされ、荷室容量は31Lプラスの426Lへ大きくなっている。多くのハッチバックなどと比べても、実用性では勝るといえる。
シャシー側にも大きな変更はないが、サスペンション・スプリングはフロントで7%、リアで4%柔らかくなった。快適性重視のキアの姿勢を表している。衝撃を吸収する油圧バンプストップが、フロント側に採用されたという。
運転してみると、マイナーチェンジの僅かな違いを感じる。従来より洗練された印象で、渋滞時も運転しやすい。
PHEV版ではEVモードを選択すると、駆動用モーターだけでほぼ無音の走りに浸れる。最長48kmまで対応し、日常的なチョイ乗り程度なら充分にまかなえる。
ガソリンエンジンへのバトンタッチも滑らか。高負荷時には張り詰めたサウンドが聞こえてくるが、フルスロットル時でもさほど走りに活発さはない。一方で、6速デュアルクラッチATは滑らかに変速し、一般的な速度域でのマナーは良好といえる。
若干柔らかくなったサスペンションのおかげで、乗り心地はゆったりしている。低速域では、細かな入力が連続するような場面で、若干落ち着きに欠けるようではあった。
クイックで正確なステアリング
ステアリングレシオはクイック寄りにあり、軽快にフロントノーズの向きが変わる。ステアリングホイールへ伝わってくる感触は小さいものの、重みづけは好印象。正確性にも優れる。
グリップ力は高いといえ、姿勢制御も良好。狙い通りにコーナーをライン取りしていける。攻め込んでいくと、駆動用バッテリーで増えた質量を感じてしまう。そのまま限界領域へ達すると、穏やかなアンダーステアで教えてくれる。
一方で、車重の軽い1.5Lのガソリンターボでは、機敏な身のこなしと落ち着きのある挙動が備わっていた。乗り心地も、衝撃吸収性でPHEV版に勝る様子。
パワートレインに関わらず、惹き込まれるようなドライビング体験を与えてはくれない。鋭いコーナリングを楽しむのではなく、穏やかにストレスフリーに運転するスタイルが向いている。ソフト方向に振られたシャシーは、Xシードの個性とも合致する。
英国価格はまだ発表されていないが、数100ポンド(数万円)の上昇で抑えられるようだ。快適性を増し、大きくなった荷室を考えれば納得できる範囲といえる。装備も充実していて、実用性も高い。
マイナーチェンジ後も、キア Xシードが多くの支持を集めることは間違いないだろう。ただし筆者が選ぶなら、PHEVより手頃な1.5Lガソリンターボを選ぶとは思う。
キア Xシード PHEV 4(欧州仕様)のスペック
英国価格:−
全長:4395mm
全幅:1826mm
全高:1483mm
最高速度:188km/h
0-100km/h加速:11.0秒
燃費:71.4km/L
CO2排出量:32g/km
車両重量:1609kg
パワートレイン:直列4気筒1580ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:8.9kWh
最高出力:141ps/4000rpm(システム総合)
最大トルク:26.9kg-m(システム総合)
ギアボックス:6速デュアルクラッチ・オートマティック
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