F1イタリアGPのフリー走行1回目で、アンドレア・キミ・アントネッリはメルセデスからF1公式セッションデビューを果たしたが、最終コーナーのアルボレート(旧パラボリカ)でいきなり45Gの大クラッシュを喫した。
メルセデスが望んだ結果ではなかったかもしれないが、トト・ウルフ代表はおよそ10分という走行時間の中で、アントネッリの才能を改めて認識したようだ。
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実際、少ない周回データを掘り下げて、マシンコントロールを失った原因を突き止めようとしてみると、アントネッリの圧倒的な天性のスピードと経験の浅さの両方が浮き彫りになる。
メルセデス首脳陣も、W15がかなりのダメージを負ったことを心配するよりも、セッション開始から10分程度で見られたアントネッリの才能の片鱗を大きな励みと捉えている。
そしてウルフ代表曰く、アクシデントの原因を暫定的に分析した結果、マシンとタイヤがアントネッリのスピードに耐えられなかったことが原因だったという奇妙な結論が導き出された。
「彼がやったことに対して、マシンが耐えられなかった……」
ウルフ代表がそう指摘したのは、アントネッリがFP1で行なった2回目のアタックだ。
アントネッリはFP1でまず1分23秒955をマークして、タイムシートのトップに浮上。計測2回目では、第1セクターで自己ベストを記録すると、第2セクターでは全体ベストをマーク……自身のタイムを更新すること間違いなしと思われたが、アルボレートで全てが狂ってしまった。
テレメトリデータを詳しく見てみると、メルセデスが発見したいくつかの興味深いディテールが見えてくる。それはアントネッリが他のどのドライバーよりも速かったと証明すると同時に、全てが台無しになった原因を説明してくれている。
重要なのは計測2回目のレズモ2から。アントネッリは当該セクションを、ミニマムスピード184km/hで駆け抜けた。これはFP1でレッドブルのマックス・フェルスタッペンが記録したファステストラップでの通過速度よりも、7km/h速かった。
さらに印象的なのはアントネッリが190km/hでアスカリ・シケインを通過していたことだ。FP1ファステストラップと比較すると、フェルスタッペンは176km/hで通過していた。メルセデスのルイス・ハミルトンの場合は177km/h、フェラーリのシャルル・ルクレールは178km/h、マクラーレンのランド・ノリスは179km/hと他の上位ドライバーも同様に、アントネッリに通過速度で上回られた。
セッション終了後に前ドライバーのデータを比較し、コース路面がどれだけ改善したかを考慮しても、アントネッリのレズモ2出口とアスカリの第1セグメントを通過するスピードを、誰も上回ることができなかっただろう。
しかしアントネッリがレズモとアスカリの両方を猛スピードで通過したことで、結果的にタイヤが限界を越えてしまったのだ。
アントネッリはアスカリを抜けたところで、特にリヤタイヤがオーバーヒート気味となり、アルボレートを迎えた頃にはリヤのグリップ力がほとんどなくなっていた。そのため、リヤから流れてコントロール不能となったマシンはアウト側のウォールに吸い込まれていった。
セッション後、ウルフ代表はこう語った。
「彼は“噛みつかれた”のだと思う。みんな温度に苦しんでいて、特にアスカリをああいったスピードで走るとリヤタイヤ温度に苦しむことになる。だからリヤがアウトに流れたのだ」
もちろん、アントネッリがいくつかのコーナーで他を上回るスピードを見せたのは、タイヤの経験が浅かったから。アントネッリは計測ラップで攻めすぎたために、タイヤがオーバーヒートを引き起こし、クラッシュに繋がったと言える。
他の経験豊富なドライバーたちは、タイヤを活かしておくため、ペースを管理しなければならないことを理解していた。
しかし、仮にメルセデスがアントネッリの才能、つまりF1マシンを限界までプッシュする能力を有していると証明したかったのなら、イタリアGP初日でそれは実現したことになる。
「我々は彼を速くすることよりも、むしろ減速させることに問題がある」とウルフ代表は語った。
「我々が1周半で目にしたモノは、まさに驚くべきことだった」
アントネッリがめまいを訴えたため、金曜日のメディア対応はキャンセルされたが、FIA F2の予選には参加。最速タイムを記録したローディンのゼイン・マローニから0.214秒差の6番手につけた。
そしてメルセデスからメディアに送られた動画の中で、アントネッリは次のようにコメントした。
「なんて1日だ」
「最初のFP1が終わった。残念ながら、クラッシュのせいですぐに終わってしまった。52Gの大きなクラッシュだった。チームとジョージ(ラッセル/FP1ではアントネッリにマシンを貸与)には本当に申し訳ない」
「単なる僕のミスだ。コンディションに対して少しプッシュしすぎた。もう少し段階を踏んで走ればよかったが、次に向けた教訓になったことは間違いない」
「このような機会を作ってくれたチームには本当に感謝しているし、ティフォシたちにも会えて、コース上で全ドライバーと共に最初のラップを走ることができて本当に良かった」
「今はまだ調子が優れているわけではないけど、回復して、残る週末に集中したい。まだレースは残っているし、良い結果を残せるように頑張りたい」
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