この記事をまとめると
■コンパクトでリーズナブルなEVとなるBYDドルフィンとヒョンデ・コナが発売された
BYDドルフィンがかなりヤバい! ライバルと比べると割安感ハンパなし!!
■ドルフィンとコナは安いながらも日本に合わせた仕様変更が行われている
■信頼性の高さも重要ではあるが、EVの普及には低価格な国産モデルの充実が求められる
ドルフィンとコナでシェアの拡大を目論むBYDとヒョンデ
EVにはポジティブな意見もネガティブな意見もあるが、燃料代が高止まりしていることもあり、EVへの注目度が高まってきていることには違いない。
そんななかで、この秋、いずれもコンパクトなサイズで価格がリーズナブルな、気になる2台が日本に上陸した。BYDのドルフィンとヒョンデのコナだ。価格はドルフィンが363万円~、コナが399万3000円~で、もちろん補助金を考慮するとさらに買い求めやすさが際立つ。
いまやBEVはピンからキリまであり、もともとBEVに関心のあった人は、色めき立っている人も少なくないはずだ。欧州勢を中心とする高価で高性能なBEVに関心のある人にとってはブランドも大事だろうが、日本製や海外製にそれほどこだわらない人も多く、また魅力的なクルマがあったらそれを、と考えている人が多いと考えられる。
ちょうどスマホやパソコン、アパレルなどもそうであるように、そうイメージしてみるとわかりやすい。見た目や性能が十分で価格が安ければ、そちらに目が向くのは当然だ。ぜんぜん悪いことではない。
2台についてざっとおさらいすると、ドルフィンは中国のBEV大手である「BYD」の、コナは韓国大手で日本市場に再上陸をはたした「ヒョンデ」の、いずれも日本導入第2弾BEVとなる。狭い日本でももてあまさないコンパクトなサイズのBEV専用車であるほか、ウインカーのレバーが右側にある点で共通している。
BYDドルフィンは、その車名のとおりイルカをイメージしたというエクステリアデザインでなかなか個性的だ。日本仕様は全高をルーフ後端のアンテナを低くして20mm下げて1550mmとするなど、日本向けに配慮している。航続距離が400kmの「スタンダード」と同476kmで高出力の「ロングレンジ」の2種類が選べる。
4290mm×1770mm×1550mmというコンパクトなサイズながら、車内は十分な居住空間が確保されていて、後席も狭くない。インテリアの各部に海を感じさせる要素をちりばられていたり、作動音をいろいろ選べたりという遊び心も見られる。中央の大画面ディスプレイは、ワンタッチで縦横を切り替えることもできる。
ヒョンデの「コナ」は、ひとまわり大きい4355mm×1825mm×1590mmというサイズとなる。4モデルが選べ、航続距離は456~625kmと比較的長い。シームレスホライゾンランプによる未来的で個性的なデザインが目を引く。
回生ブレーキシステムは前方の交通状況に応じて回生の強さを自動的に調整する機能も備えているほか、日本仕様は発進~停止の多い交通事情に合わせてアクセルレスポンスが最適化されている。
また、V2L/V2Hの外部給電にも対応しており、充電前にバッテリー温度を最適化して充電時間を短縮したり、スマートフォンで車両の施解錠や始動が可能なデジタルキーや、エアバッグ展開の事故発生時に信号をセンターに伝送する事故自動通報システムなどをヒョンデとして日本初採用するなど、小さいながらも多彩な機能を身につけているのも特徴だ。
日本メーカーが販売するEVの現状は?
一方、日本には軽自動車規格のBEVが存在し、人気を博している。2023年秋現在、日本でもっとも低価格で、もっとも売れているBEVがサクラだ。航続距離が180kmながら、これで十分と思った人が少なくないことは、販売実績が証明している(姉妹車のekクロスEVはなぜかそうでもないが……)。
しかし、その少し上のクラスとなる、前述のドルフィンやコナを迎え撃つ日本勢は手薄といわざるをえない。500万円級のクラスもテスラに完敗というほかないのが現状だ。
たとえばホンダeは、このところずっと月販50台を下まわっているが、もっと大幅に価格が安いか、あるいはもう少し航続距離が長ければ、販売はだいぶ違ったはず。売れていない理由は、大方が感じているとおりおそらくシンプルだ。
リーフの2023年9月の販売台数656台と、671台のアリアをわずかに下まわった。登場から時間が経過して、値上げされても一定数の販売を維持しているあたりは、こうしたベーシックなBEVへのニーズが根強くあることの表れではあるが、見込まれたほどは売れていない。既存の乗用車と同じように使って欲しいという思いもあって、あえて「普通」に作られたわけだが、もう少しいわゆる「遊び心」が欲しいところだ。
その他の車種で、アリアやbZ4Xやソルテラあたりはサイズが大きく価格帯もだいぶ違うが、アリアはさておき、bZ4Xとソルテラの実情はかなり寂しい数字となっている。MX-30についてはマツダとしてもBEVの延長にあるものと認識している話題のロータリーEVがまもなく出るので、これからが本番と見るべきだろう。
いずれにしても、問題となるのが価格だ。スペックなど内容的にも、ドルフィンやコナは割安感があり、日本勢や欧州勢が割高に感じられてしまう。その最大の要因が、バッテリー調達のためのコストだ。日本や欧州のメーカーは中韓勢ほど安く売ることは難しい。
とくに日本のリーフは、これまで販売された数十万台が発火事故を起こしていない等といった優れた信頼性をもっとアピールできるのにという気もする。ところが、ユーザーにとってはそれに以前に、まず価格、次いで商品としての魅力に目が向くのはやむをえないだろう。
ご参考まで、国産車と輸入車の合計で、2023年9月の販売台数は、BEVが9017台(乗用車全体の2.48%、前年比+3.75%)、PHEVが5670台(同1.56%、+22.65%)となった一方で、HEVは17万0953台(同47.04%、+23.86%)も売れた。優れた魅力的な車種がたくさんある日本ではまだまだHEVが強い。
このうち最量販のサクラが3801台(別計算のeKクロスEVは375台)、日産全体では5128台で、ちなみにBYD全体で過去最多の189台、ヒョンデ全体で36台だった。国内の販売網で圧倒的に優位な日産をもってすれば、これぐらいはいくわけだが、それでも、普通車でも軽自動車のなかでも、10位に入るにはほど遠い台数ではある。
日本には、売れ筋のコンパクトカーも、やはり充電の不安のないHEVの比率が高い。それもあって、日本のメーカーはこれまでコンパクトなBEVにそれほど力を入れてこなかった。もちろん日本が先進国のなかではずいぶん立ち遅れているインフラの整備状況にも影響を受ける。
いろいろな事情がかさなって、なるようになった結果が現在の状況であるわけだが、日本のメーカーもよりコンパクトかつ軽量で効率の高い次世代バッテリーの開発を進めており、コンパクトなBEVがそう遠くないうちにいくつか世に出されそうな情報も耳にする。ひとまず、もうしばらく各社の動向を見守ることにしたほうがよさそうだ。
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