現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > トヨタには燃料電池もあるのに…… レクサスがEVに熱心な理由は何か?

ここから本文です

トヨタには燃料電池もあるのに…… レクサスがEVに熱心な理由は何か?

掲載 更新 20
トヨタには燃料電池もあるのに…… レクサスがEVに熱心な理由は何か?

 2050年にカーボンニュートラルを実現するという目標のため、世界中の自動車メーカーはEV(電気自動車)化を進める姿勢を示している。しかし、EVについてトヨタの豊田章男社長は自工会会長として「電動化=EV化」への懸念を示しており、さらに技術面ではFCV(燃料電池車)も持っている。

 そんなトヨタが、今年3月30日にレクサスでは新型EVのSUVコンセプト、LF-Zエレクトリファイドを公開。今後のブランド変革に向けた取り組みについて、2025年には全車種に電動車を設定するといったアナウンスをしたが、その象徴ともいえるのがEVのコンセプトモデルだった。

逃亡から1年半 カルロス・ゴーンは日産の救世主だったのか? それとも疫病神だったのか??

 トヨタはFCVもあるのに、レクサスブランドでは最近はやけにEV推しになっているように見える。これはいったいどういうことなのか?

文/桃田健史  写真/TOYOTA

【画像ギャラリー】レクサスの新型EVコンセプト LF-Zエレクトリファイド発表! 歴代コンセプトカーとあわせてチェックする!!

■レクサスが今後投入する電動車にFCVはない?

レクサスは2021年3月30日、EVコンセプト「LF-Z エレクトリファイド」を世界初公開。最高出力は544ps/71.4kgm、0-100km/h加速は3.0秒と、スーパーカー並みの高性能を発揮する

 レクサスは2021年3月30日、今後のブランド戦略について「LEXUS CONCEPT REVEAL SHOW」をオンラインで実施し、コンセプトモデル「LF-Zエレクトリファイド」を世界初公開した。

 そのなかで、2025年までにグローバルでEV(電気自動車)、PHV(プラグインハイブリッド車)、HV(ハイブリッド車)など、10モデル以上の電動車を含む25モデルを投入するとした。それによりレクサスの全モデルに電動車を設定し、ガソリン車より高い比率になる。

 さらに2050年には、材料の製造、車両製造、販売、そして廃棄に至るまでLCA(ライフライクスアセスメント)を考慮したクルマづくりを目指すと説明している。

 つまり、ボルボ、ジャガーランドローバーなど欧州のプレミアムブランド各社が掲げる、20xxまでに完全EV化という触れ込みにはなっていない。

 また、レクサスでは今後投入する電動車を「EV、PHV、HV等」と表現しており、このなかにFCV(燃料電池車)がはっきりと表現されていない。

 これは、なぜなのだろうか?

 その理由を考える前に、トヨタの電動車戦略についても触れておく。

■トヨタ全体としての電動化戦略は大きく変わらず

2021年4月19日、上海モーターショーにて発表されたTOYOTA bZ4Xコンセプト。スバルと共同開発したEV専用プラットフォーム「e-TNGA」を採用。2022年までのグローバル投入を目指す

 トヨタは2021年4月19日、中国の上海モーターショーで新EVシリーズ「bz(ビーズィー)」の第一弾としてスバルと共同開発中の四輪駆動EV「bz4X(ビーズィフォーエックス)を世界初公開した。2022年央までにグローバルで販売する。

 また、2025年までには「bzシリーズ」での7モデルを含み、グローバルで15のEVモデルと投入する。

 2020年末時点では、乗用車と商用車をあわせてHVが45モデル、PHVが4モデル、EVが4モデル、そしてFCVが2モデルの合計55モデルが電動車だが、これを2025年までに70モデル程度まで増やす計画だ。

 こうしたトヨタの電動化戦略は、「トヨタが2019年6月に行った『EV普及を目指して』というメディア向け説明会で示した基本方針に準じており、そこから大きなブレはない」(トヨタ関係者)という。

 つまり、電動化のコア技術としてモーター、バッテリー、パワーコントロールユニットがあり、これに充電器を連携されるEV、充電池とエンジンを連携されるPHV、エンジンを連携させるHV、そしてFC(燃料電池)スタックと高圧水素タンクを連携させるFCVという電動化の基盤のなかで、トヨタとレクサスの電動化戦略が着々と進んでいくことになる。

 また、EVについては専用プラットフォームのe-TNGAを導入する。

■レクサスの燃料電池戦略はどうなるのか?

レクサスは2015年の東京モーターショーで燃料電池車のコンセプトモデル「LF-FC」を披露。当時から持ち上がっていたレクサスのFCV構想はいつ日の目を浴びるのだろうか?

 では改めて、レクサスのFCVは今後、どうなっていくのか?

 時計の針を少し戻すと、レクサスは2015年の東京モーターショーにレクサス初の燃料電池車コンセプトモデル「LF-FC」を公開している。

 全長5300mm×全幅2000mm×全高1400mm、前輪にインホイールモーターを持つFCVで、「未来社会のレクサスフラッグシップカー」という触れ込みだった。

 この発表の数カ月前、当時のレクサスインターナショナル社長の澤良宏氏に対して、燃料電池車構想について聞いたことがあった。その際、澤氏は「レクサスでもしかるべきタイミングでFCVを量産したい」と話していた。

 しかるべきタイミングとは、「MIRAI」とのパワートレーン共有化の目途がついた時、というイメージを筆者は持った。

 結局、初代MIRAIではそのタイミングが訪れず、2020年に2代目MIRAIが発表されて以降も、レクサスFCVの話題がレクサスサイドから漏れてくることはなくなってしまった。

 また、レクサスは第46回東京モーターショー(2019年10月23日~11月4日)で、電動化ビジョン「Lexus エレクトリファイド」を発表し、その象徴としてインホイールモーター式EVの「LF-30 エレクトリファイド」を公開した。

2019年の東京モーターショーで発表されたレクサスLF-30エレクトリファイド

 その際、「レクサスはこれからも、PHV、EV、FCVなど、世界各地のニーズやインフラ環境に応じて適材適所で商品開発を進めラインアップを拡充する」と説明している。

 ところが、前述にように直近のレクサスブランド戦略のなかでは、「LF-Zエレクトリファイド」がレクサス全体の象徴となり、今後の商品構成のなかでFCVという名前が出てきていない。

 その背景には、急速に変化するグローバルでのEVシフトがあると、筆者は見る。

■ESG投資旋風でEVシフトが一気に進んだことが影響か?

最近ではプレミアムブランドにおいて一気にEVシフトが進んでいる。ベンツは新型EVのEQSを2021年4月5日に発表した

 レクサスにとっても、またトヨタ全体にとっても、トヨタとして電動化の将来のロードマップを公開した2017年時点ではFCVやEVを含む電動化戦略について、HV市場を基盤として、PHV、EV、そしてFCVへと徐々に電動化の高度化が進むという考え方だった。

 それが2019年6月の「EVの普及を目指して」という発表時点では、「5年前倒し」となった。これは欧州でのCO2規制強化によるCAFE(企業毎平均燃費)の厳格化を軸足として、米ZEV(ゼロエミッションヴィークル)規制や中国のNEV(新エネルギー車)規制の強化を踏まえたもので、これがレクサス電動化においても影響を及ぼした。

燃料電池車の普及には社会インフラの整備が進むのが日欧の一部であるため、EVやPHVの強化が先行したとみられる。

 さらに、2010年代後半から2020年代にかけて、グローバルでESG投資旋風が吹き荒れて、プレミアムブランドで一気にEVシフトが進んだ。ESG投資とは、従来の財務状態だけではなく、環境、社会、ガバナンスの要素も考慮した企業への投資のことだ。

 そうしたなか、レクサスとしては、トヨタが持つFCV技術の応用は充分に考慮しつつ、EV拡充をさらに急ぐ必要性が高まったのだといえる。  いずれにしても、レクサスらしい各種EVモデルが早期に市場導入されることは、ユーザーにとっては魅力ある次世代車が触れることができる点でプラス要因になると思う。

【画像ギャラリー】レクサスの新型EVコンセプト LF-Zエレクトリファイド発表! 歴代コンセプトカーとあわせてチェックする!!

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

頑張れ日産! フェアレディZの2025年モデル発表、あわせて新規注文を再開!
頑張れ日産! フェアレディZの2025年モデル発表、あわせて新規注文を再開!
カー・アンド・ドライバー
もう待ちきれない! [新型GT-R]はなんと全個体電池+次世代モーターで1360馬力! 世界が驚く史上最強のBEVスポーツカーへ
もう待ちきれない! [新型GT-R]はなんと全個体電池+次世代モーターで1360馬力! 世界が驚く史上最強のBEVスポーツカーへ
ベストカーWeb
「ジャパンモビリティショー2024」に若者たちはどう感じたか? 対話と提案で「次世代モビリティ社会」を作る
「ジャパンモビリティショー2024」に若者たちはどう感じたか? 対話と提案で「次世代モビリティ社会」を作る
ベストカーWeb
プライベート空間重視な人におすすめ! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
プライベート空間重視な人におすすめ! トヨタ ハイエースがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
熊本「交通系ICカード廃止」はむしろ良かった? “大危機”から垣間見える「地方の選択肢」と、都心で広がる可能性とは
熊本「交通系ICカード廃止」はむしろ良かった? “大危機”から垣間見える「地方の選択肢」と、都心で広がる可能性とは
Merkmal
スズキ初ってマジか!! 新型フロンクスの新アイテム採用のヒミツが衝撃
スズキ初ってマジか!! 新型フロンクスの新アイテム採用のヒミツが衝撃
ベストカーWeb
12月7日(土)京都お東さん広場(東本願寺門前広場)で「京都モビリティ会議」開催(入場無料)
12月7日(土)京都お東さん広場(東本願寺門前広場)で「京都モビリティ会議」開催(入場無料)
ベストカーWeb
ルーミー/トール受注再開! 現行は2027年まで販売ってどうよ!? 3年も生き延びるってマジか!? ビッグマイチェンは2025年!
ルーミー/トール受注再開! 現行は2027年まで販売ってどうよ!? 3年も生き延びるってマジか!? ビッグマイチェンは2025年!
ベストカーWeb
全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
全車[EV]化計画を撤回!? ベンツもボルボもEV化減速してるけど…[ホンダ]はどうするん? 
ベストカーWeb
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ホンダが激カッコいいSUV発表! [アキュラADX]みたいなクルマが日本にも必要だろ!
ベストカーWeb
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
[車検]費用が増える? 2024年10月より車検での[OBD検査]を本格運用へ
ベストカーWeb
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
即納って不人気車なの!? なんでそんなに待たなきゃならん!? [納期]にまつわる素朴なギモン
ベストカーWeb
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
いまさら人には聞けない「ベンチレーテッドディスク」と「ディスク」の違いとは? ブレーキローターの構造と利点についてわかりやすく解説します
Auto Messe Web
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
ラリージャパン2024開幕直前。豊田スタジアムやサービスパークの雰囲気をお届け/WRC写真日記
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース

みんなのコメント

20件
  • 水素の充填が広がらないと不便だから売れない

    中国市場はEVが旬だ
  • 水素はインフラが整備されないと普及しない、水素で導入が進むのはトラック等の大型輸送車両ではないか?それらが増えればインフラの整備も進む、それまで細々とでも技術を蓄積しなければならない、それかいっそのこと水素又は、e-fuelのエンジンへ走るか?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村