現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > プロショップが考える理想のGT-R像とは? RB26&VR38チューニングの秘策を公開!(前編)

ここから本文です

プロショップが考える理想のGT-R像とは? RB26&VR38チューニングの秘策を公開!(前編)

掲載 6
プロショップが考える理想のGT-R像とは? RB26&VR38チューニングの秘策を公開!(前編)

独創的な発想が生むRB26DETTチューニング理論

 R32スカイラインGT-Rの時代から積極的にドラッグレースに参戦し、数々の記録を打ち立ててきた広島県福山市のチューニングショップ『ウエストスポーツ』。GT-Rを得意とする同店は、他とひと味違う独自のセットアップを施すことで有名だ。ウエストスポーツ流のGT-Rチューニングにはいったいどんな秘策が隠されているのか? 前/後編の2回に分けてその秘密に迫りたい。前編では「理想のRB26DETT」について亀谷治夫代表に話を聞く。

初期型の日産「R35GT-R」のメンテナンス&チューニングの絶対条件とは? プロショップがお教えします(前編)

(初出:GT-R Magazine 154号)

Vカムの装着で低速トルクを補うのが第一歩

 2020年でオープンから30周年という節目を迎えた『ウエストスポーツ』。第2世代GT-Rでは1000ps超でゼロヨン8秒台というモンスターマシンを手掛け、古くからエンジンチューンにおいては同業ライバルからも一目置かれる存在である。

「R32からR33の時代はとにかくパワーを追求しました。当時、谷田部のテストコースで行われていた0-300km/h計測で一番になることを狙っていたのです。結果的には機会に恵まれずトップを獲ることはできませんでしたが、あのころに積んだ経験は現在も生かされていると思います」と語る亀谷治夫代表。

 名うてのチューニングショップが加盟する『CLUB RH9』創立初期から主要メンバーとして活動し、同クラブが主催する鈴鹿サーキットのタイムアタック企画では、1000psオーバーのR35デモカーでチューンドGT-Rのコースレコード「2分4秒649(’20年当時)」をマーク。そんな経歴を聞くと、超ハードな仕様を得意とするショップというイメージを抱くかもしれないが、同店を訪れるGT-Rオーナーの大半が求めるのは“ストリート仕様”だという。

「当店の第2世代GT-Rのお客さまはHKSの可変バルタイシステム Vカムの装着率が非常に高く、常連さんはほぼ100%に近いと言ってもいいほどです。レブリミットが8000rpmという高回転型のRB26DETTは、どうしても4000rpm以下での力不足が否めません。低速からトルクが確保できるという点で、Vカムの装着は街乗りで絶大な効果を発揮します。R32の時代からHKSさんには懇意にしていただいており、当時は本社のエンジンベンチでウチのデモカーのRB26をテストすることもありました。Vカムが発売された際も、確かショップでは当店が装着第一号だったと思います」

2.6Lの排気量のままでも十分に楽しめる!

 当時、HKSでGT-Rの開発担当をしていたのは現社長の水口大輔氏で、開発時のデータを提供してもらいながら日夜セッティングを煮詰めたという。そんな長い付き合いもあり、同店で扱うRB26のエンジン関係のパーツはほぼHKSの製品がメインになっているとのことだ。

「Vカムと併せて2.8L仕様にステップアップされる方も多いですが、2.6LのノーマルのままでもまずはVカムを装着することを勧めます。これにGT‒SSタービンやGT2530タービンを組み合わせることでノーマルよりも扱いやすくなり、パワー的にも楽に500psオーバーが可能となります」

 ニッパチ(2.8L)+Vカムは第2世代GT-Rオーナーの多くが口にする「理想の仕様」である。ここで取り上げるR34GT-R VスペックIIニュル(オーナー:小畠光昭さん)は、同店のユーザーの中でトップランクのスペックを誇る一台。HKSの2.8LキットにVカム・ステップPROを組み合わせ、GT2530KAIタービンで実測637ps/74.2kg‒mを発生している。

「低速トルクの確保に関しては通常のVカムでも十分ですが、ステップPROのカムシャフトは中空構造となっており、軽さに加えて捻れにも強く、高回転域の伸びに差が出ます。ハードウェアの性能はもちろんですが、最終的に鍵を握るのはやはりコンピュータのセッティングだと考えています」と亀谷代表は説く。

数値に表れない領域まで調律すればフィーリングは激変

 同店ではコンピュータセッティングはすべて現車合わせで施しており、純正ECUベースのロムチューンとHKSのFコンV PROによるフルコン制御の双方を手掛けている。

「ロムチューンと比べると、Vプロのほうが圧倒的にセッティングの幅が広がります。パワーはハードウェアの性能である程度決まるものだと思っています。わたしはピークの数値はあまり重視していません。最も重要になるのは過渡領域での特性です。先ほどステップPROのカムのメリットをお話ししましたが、通常の中実構造のカムは高回転域で微妙に捻れが発生することで、6番シリンダーの点火時期に遅れが生じてしまいます。それは純正のクランクシャフトにも言えることで、6番の点火が2度くらいずれることもあるほどです。そうなると、せっかくバランスの取れた直列6気筒でも各気筒の燃焼に差が生まれてしまいます」

 亀谷代表が拘る「過渡特性」とは、数値には表れない領域まで入念に調律することを指す。気筒ごとにアンバランスな燃焼を揃えてあげることでよりスムーズにエンジンを回し、下から上までキレイに吹け上がることを意味するという。

「Vプロにもある程度基準となるベースのデータが入っているのですが、わたしはほかのチューナーとは違うアプローチでセッティングを進めています。各気筒別に点火時期と燃調を整えますし、マップにはVプロとは別のフルコン(リンク)の計算式も応用しています。ピークの性能はハードでだいたい決まってしまいますが、最終的にはセッティングでいかにバランスが取れるかが重要です」

ツボを抑えれば高ブースト圧でも壊れない!

 同店で最もポピュラーなのは2.8L+Vカム+GT-SSタービンという仕様で、最大ブーストは通常1.3kg/cm2あたりが一般的である。だが、亀谷代表いわく、

「もっと上げたいならば、1.5kg/cm2とか1.6kg/cm2掛けても問題ありません。それにはヘッドガスケットをステンレスのメタル製に換えていることが前提で、もちろんインジェクターの容量など物理的な限界はありますが、ブースト圧を上げてもノッキングを起こさなければエンジンは壊れないのです。パワーを出すにはBIGサイズのタービンが必須というイメージがありますが、燃焼効率をしっかりと確保したセッティングを施せば、小さめのタービンでもブーストを上げることでパワーを得ることが可能なのです」

 同店でエンジンをオーバーホールしたGT-Rオーナーの多くは15年、20年と施工後もノントラブルで、エンジンを降ろすことなく乗り続けているという。ハードウェアの選択である程度の性能は決まるが、実際にドライバーが感じる過渡領域でのフィーリングはチューナーによるセッティングの“さじ加減”で決まる。それがウエストスポーツの哲学なのだ。

 後編では、鈴鹿サーキット最速ホルダーである同店の“R35デモカー”の秘密に迫る。

(この記事は2020年8月1日発売のGT-R Magazine 154号に掲載した記事を元に再編集しています)

こんな記事も読まれています

【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
【F1第22戦決勝の要点】 岩佐歩夢が分析するメルセデスの速さの秘密「マシン特性の不利を覆すほどのいい仕事」
AUTOSPORT web
1.2L 3気筒+モーター3基で300ps ルノー・ラファール E-テックへ試乗 アルピーヌに相応しい走り
1.2L 3気筒+モーター3基で300ps ルノー・ラファール E-テックへ試乗 アルピーヌに相応しい走り
AUTOCAR JAPAN
ヒョンデ「アイオニック5」がマイチェンで航続可能距離703キロに! 気になる車両価格は523万6000円から…30台限定の「コナ マウナ ロア」にも注目
ヒョンデ「アイオニック5」がマイチェンで航続可能距離703キロに! 気になる車両価格は523万6000円から…30台限定の「コナ マウナ ロア」にも注目
Auto Messe Web
『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
『絶対完走』の重圧に耐えた勝田。来季シートがかかっていたことを示唆【ラリージャパン後コメント】
AUTOSPORT web
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 後編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
中型からステップアップ 人気の“ミドルクラスネイキッド”スズキ「SV650」とカワサキ「Z650RS」どっちを選ぶ?【スペックでライバル比較】
VAGUE
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
ラリージャパンで一般車の侵入という衝撃トラブルが発生! SSのキャンセルもあるなかトヨタ勢は2・3・5位に着ける
WEB CARTOP
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
米国にある「廃車の山」で見つけたお宝 40選 前編 ジャンクヤード探訪記
AUTOCAR JAPAN
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
サーキット派に朗報! ウェッズスポーツ「TC105X」に16インチの新サイズ登場…マツダ「ロードスター」や走りのFF車にオススメです
Auto Messe Web
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
【ラリージャパン2024】最終ステージでトヨタが逆転! マニュファクチャラーズタイトル4年連続獲得、豊田章男会長「感動という共感を生んだ」
レスポンス
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
1度の運転では好きになれない シトロエンCX 5台を乗り比べ(2) GTiにファミリアール 仏大統領も愛用
AUTOCAR JAPAN
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
独創的な「近未来」フォルム! シトロエンCX 5台を乗り比べ(1) モデル名は空気抵抗係数から
AUTOCAR JAPAN
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
4連覇を決めたフェルスタッペン「苦しいシーズンの中で多くのことを学んだ。だからこそ特別だし、誇らしい」
AUTOSPORT web
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
【ポイントランキング】2024年F1第22戦ラスベガスGP終了時点
AUTOSPORT web
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
カワサキ新型「レトロスポーツモデル」に反響多数!「古き佳き」スタイリングが“現代”に刺さる!? 玄人も注目する“バイクらしさ”を味わえる「W230」とは?
くるまのニュース
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
「ジャガー」のブランドロゴが大胆に変更! 英国の名門ブランドはどこに向かう? まもなく登場する“新たなコンセプトカー”とは
VAGUE
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
村民の力で蘇った昭和のボンネットバス! 熊本県・山江村の宝物マロン号がロマンの塊だった
WEB CARTOP
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
本物の贅沢──新型ロールス・ロイス ブラック・バッジ・ゴースト・シリーズII試乗記
GQ JAPAN

みんなのコメント

6件
  • そりゃ客が新車で持ちこんで来て、ショップの言いなりにフルチューニング。
    全部客のカネでさ。
    で、それをショップのデモカーとして自由に使わせてもらう。

    これがショップにとっての最高ですな
  • 今となってはノーマルのGTRを探すのは大変だ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1880.03258.0万円

中古車を検索
GTの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

2695.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

1880.03258.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村