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結局FRって何がいいの? レーシングドライバー山野哲也がFFとの違いと愉しみを伝授する

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結局FRって何がいいの? レーシングドライバー山野哲也がFFとの違いと愉しみを伝授する

 FF(フロントエンジン・フロントドライブ=前輪駆動)とFR(フロントエンジン・リアドライブ=後輪駆動)。

 一般的にFRはFFよりも「ドライビングが楽しい」などと評されることが多い。

結局FRって何がいいの? レーシングドライバー山野哲也がFFとの違いと愉しみを伝授する

 古くは1983年、レビン/トレノのモデルチェンジに際して、ベースとなるカローラ/スプリンターシリーズがFFに移行したにもかかわらず、旧型E70系のプラットフォームを継続して、FRで残置したAE86型はクルマ好きに好意的に受け入れられたし、1987年登場のS13型シルビアがFRを採用した時も同様であった。

 FRはクルマ好きの心を揺さぶる駆動方式であることは間違いないのだが、では、FFと比べて何が違うのか? FRならではの魅力とは何なのか? マシンコントロールの達人、山野哲也氏が解説する!!

※本稿は2022年5月のものです
文/山野哲也、写真/ベストカー編集部 ほか、撮影/奥隅圭之
初出:『ベストカー』2022年6月26日号

■FRとFFの違いとはなにか?

FRは初期段階でフロントタイヤにも一定の荷重がかかっているため、ミドシップやRRよりも立ち上がり加速時の前輪グリップが確保しやすい

 こんにちは、山野哲也です。FRとFFの違いをドライビングの観点から解説しましょう。

 FR、FFそれぞれの駆動レイアウトを代表するスポーツモデルとしてマツダロードスターとスズキスイフトスポーツの2台に改めて乗りましたが、ロードスターは日本が生んだ世界を虜にした最高のFRです。

 1989年の初代NA型からすでに33年が経過していますが、4代目となる現行のND型は、2代目、3代目とボディサイズもエンジンパワーも拡大していった流れを断ち切り、原点回帰を目指して軽量化。

 排気量ダウンして過剰なエンジンパワー競争をやめ、最適なバランスを追求。理想的なライトウエイトスポーツとなりました。

 ロードスターがこれほどまでに高く評価されるのは、やはりFRであることは大きいです。

 FRというレイアウトは、クルマを作る側からすれば構成パーツが多く、非効率。FFやMR、さらにはRRでは必要のないプロペラシャフトが必要です。重たくなるし、パーツが多いのでコストもかかる。

 しかし、クルマの運動性能という面ではメリットが大きい。前輪と後輪で役割を分担できるため、それぞれのタイヤのグリップ性能を最大限に生かしやすいのです。

 つまり、前輪は向きを変えるためのグリップ力に専念できます。

 コーナリング中に加速する場合、FF車だと駆動のために縦方向グリップ力を使うことで、横方向のグリップ力が減ってしまいますが、FR車では駆動力は後輪の仕事なので、前輪横グリップは最大限に生かすことができるというわけです。

 また、フロントにエンジンが搭載されているため、静的な前後重量バランスがいいというのもメリット。

 ロードスター990Sの場合、車重990kgで前輪:520kg、後輪:470kg。FFのスイフトスポーツは970kgの車重で前輪:620kg、後輪350kgとなり後輪の荷重が小さくなる。

 ちなみにミドシップのポルシェケイマンは1410kgの車重で前輪:620kg、後輪790kgと前輪の荷重が小さいです。

■FRは4つのタイヤの性能を引き出しやすい!

スポーツドライブビギナーにとってはFFのほうがマシンコントロールの習得はしやすいのだが、ある程度のスキルを身に付けたら、コントロールの自由度が高いFRのほうが操りやすくなる

 FRはイニシャルで前後のタイヤに比較的均等に荷重がかかっているため、タイヤの接地荷重をコントロールしやすいです。

 ドライバーがあまり意識しなくても、自在に姿勢変化をコントロールできる領域が広いということがFRの魅力の大きな部分です。

 例えばミドシップだと、コーナー進入時にブレーキングでフロントに荷重をかけてターンインのグリップを稼ぐことはできますが、立ち上がりで加速すると前輪荷重が抜けてしまうため、より慎重なアクセルコントロールが求められます。

 一方FFでは後輪の軸重が小さいため、下り坂のターンインなどでは後輪荷重が抜けてリアを振り出しやすくなるために、これをコントロールするテクニックが必要です。後輪の性能を使い切ることができない場面が多い。

 またフロントに荷重がのしかかり過ぎ、アンダーステアにもなりやすいのです。

 ロードスターは特に前後重量バランスに優れ、FRのメリットを最大限に生かすクルマ作りをしています。

 さらにフロントにダブルウイッシュボーン、リアにマルチリンクを採用することで、ロール時など、車体の姿勢変化時にもタイヤの接地変化を抑えたサスペンションで、4つのタイヤの性能をしっかりと使い切ることができます。

 とはいえ、スイフトスポーツもよくできたFFスポーツであることは間違いありません。

 先ほど言った、FFではどうしても不足してしまう後輪が分担する仕事を少しでも高めるために、FFとしては異例なほどリアトレッドが広いのが特徴です。

 ショートホイールベースで回頭性を高める一方で、リアのワイドトレッドでしっかりと踏ん張らせる。

 一般的なFFの速いクルマの作り方とは逆を行って、楽しく安定度の高いFFスポーツを作っています。

 ドライビングということに絞って話をすれば、FRよりもFFのほうがシンプルです。ドライバーは基本的に前輪のグリップ状態を意識すればいればいい。

 しかしFRは前輪と後輪別々に接地状態、グリップ状態を把握して、なおかつ両者を連携させて最適な状態を引き出してやるドライビングが求められます。

 ある程度のスキルを身に付ければコントロールの自由度が大きいため、楽しいのですが、習得するまでのハードルは高いです。

 実は、FFでは完璧な前後バランスを目指そうとすると、駆動力を持たない後輪の動きをステアリング操作などで制御しなければならないため、FRよりも難しくなってきます。

 一見シンプルなFFですが、究極を目指すと難しい面も出てきます。

【番外コラム】FFとFRでデザインに差が出るのか?

FRのCX-60(上)とFFのCX-5(下)。同じマツダのミッドサイズSUVの2台だが、フォルムの違いが如実に見て取れる

 FR車は一般的にエンジンを縦置きにして、ちょうど運転席と助手席の間あたりにトランスミッションが位置するようなパワートレーンの配置となる。

 トランスミッション後端からプロペラシャフトが伸びて、リアアクスル部のディファレンシャルギアで左右に動力が振り分けられて後輪を駆動する。エンジン搭載位置は前輪アクスル上からややから後方にかけてとなる。

 これに対しFFはフロントアクスル直上か、やや前方にエンジン+トランスミッションを横置きにして前輪を駆動する。

 横置きパワートレーンにより、バルクヘッドは前進して、全体的にキャビンフォワードのプロポーションとなるのがFF車の特長だ。

 これに対し縦置きパワートレーンのFRは前輪からバルクヘッドの距離は長くなり、ロングノーズ、キャビンバックとなることで、伸びやかなプロポーションが作りやすくなる傾向がある。

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みんなのコメント

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  • 山野さんには、速くなりたいなら常に4つのタイヤの声を聞けと教わった。
    駆動方式に関係なく、タイヤの繊細な意見を聞ける人が一番速いそうだ。
  • MR以外乗ったけど、駆動方式にかかわらず楽しめるけどね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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