■新型ハリアーは、シンプルで洗練されたデザイン
2020年4月にフルモデルチェンジしたトヨタ「ハリアー」の車両価格が判明した。そこで、欧州ミドルクラスSUVの雄であり、北米で生産されるBMW「X3」と五番勝負をして、ハリアーをいま選択することが賢者の選択となるか、ジャッジしてみよう。
●対決01:ボディサイズ・エクステリアデザイン
ハリアーは先代モデルに比べると、全長プラス15mm、全幅プラス20mmとボディサイズは大きくなり、スリーサイズは、全長4740mm×全幅1855mm×全高1660mmとなった。
一方のX3は、全長4720mm×全幅1890mm×全高1675mm。ハリアーの方が全長が20mm長く、全高が15mm低いということもあって、昨今流行りのクーペスタイルのSUVのような外観だ。
クーペSUVというジャンルを「X6」で開拓したBMWには、現在「X4」というミドルクラスのクーペSUV(BMWではSAVと呼ぶ)がラインナップされており、ハリアーはちょうどX3とX4の中間といったスタイルといっていいだろう。
現行X3は、2017年に登場した第3世代となり、上位機種である「X5」とのデザイン的特徴を共有するようになった。第2世代までは明らかに若い世代をターゲットにしており、X5とのクラスの違いが分かりやすいデザインであった。
新型ハリアーのデザインは、第3世代のハリアーで確立したデザインをさらに洗練させた事がわかる。ヘッドライトやグリル、フロントバンパー開口部のデザイン処理など、明らかに先代モデルへのリスペクトが感じられ、モデルチェンジするたびに異なるデザインフィロソフィーによって再構築される日本車が多いなか、正常進化を遂げた外観といえるだろう。
ヘッドライトやテールライトもすっきりと細くなり、フロント周りだけでなくリア周りもシンプルにまとめられたハリアーは、最近のプレミアム路線のデザインで主流となりつつあるシンプリシティにまとめられている。
一方のX3は、際立ったサイドのキャラクターラインに力強いボンネットバルジ、巨大なキドニーグリルに代表されるように、押し出し感たっぷりだ。
上品で淡白なスッキリ感を求めるか、アクの強いコッテリ感を求めるかが、両車のうちどちらを選ぶかの基準となるだろう。
●対決02:インテリアデザイン
X3は、BMW伝統のドライバーオリエンテッドなインストルメントパネルデザインを踏襲しているのに対し、新型ハリアーは、エクステリアとは異なり、先代とはまったく違うデザインフィロソフィーでコクピット周りを再構築している。
ハリアーの馬の鞍をイメージしたというセンターコンソールは、車格を考慮するとワンランク上のデザインといってよいほど洗練されている。インフォテイメントのディスプレイはセンターコンソールへの埋め込みではなく、BMWだけでなくメルセデス・ベンツなど、欧州車がすでに採用しているタブレットのような独立した方式が採用された。
全体として、ハリアーのコクピットは、欧州車(特にイタリア車)の雰囲気を感じさせつつも、しっかりとオリジナル性をアピールするものだ。実物を手に触れたわけではないので、ここではテクスチュアについては言及できないが、国産車のなかでも上位に位置する優れたデザインといえるだろう。
一方のX3は、BMWを一度でも所有したことのある人ならば、すぐにしっくりと馴染めるコクピットのデザインとなっている。メーターパネルも左がスピードメーター、右がタコメーターという視認性に優れた伝統の配置だが、デジタルでアナログを再現するというプレミアムブランドの法則を忠実に踏襲している。
第3世代になって、高級感が増したX3のコクピットだが、BMWに質実剛健、シンプルでスポーティであることを求めてきたカスタマーにとっては、少々演出過剰気味でもある。
新規感、攻めたデザインという点では、ハリアーに軍配を上げたい。
リアシートの居住性について付け加えておくと、ホイールベースはハリアーが2690mm、X3が2865mmである。ハリアーのリアシートに座っていないのであくまでもカタログ上の数値とサイドビューのデザインからの推測だが、ヘッドクリアランスとレッグクリアランスは、X3の方がゆとりがあると思われる。
●対決03:安全装備
新型ハリアーには、「トヨタ セーフティ センス」が全車に標準装備されている。一方のX3には、「ドライビング・アシスト・プラス」が全車標準装備だ。
ハリアーの「トヨタ セーフティ センス」の内容を見てみよう。
1/プリクラッシュセーフティ:歩行者(昼夜)、自転車(昼)検知機能つき衝突回避支援タイプ/ミリ波レーダー+単眼カメラ式。X3では、クロス・トラフィック・ウォーニングがこれに相当する。
2/レーンレーシングアシスト:高速道路のクルージングをサポート。X3ではレーン・デパーチャー・ウォーニングに相当。
3/レーダークルーズコントロール(全車速追従機能付):X3では、アクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付)に相当。X3のACCは、渋滞時に効果的。
4/アダプティブハイビームシステム or オートマチックハイビーム:X3では、ドライビング・アシスト・プラスのひとつではないが、アダプティブ・ヘッドライトがこれに相当する。
5/インテリジェントクリアランスソナー:万一のアクセルの踏み間違いや踏み過ぎなどによる障害物との衝突を緩和し、被害を軽減する。X3では、パーキング・アシスト・プラスというものがあり、このシステムにはトップビュー+3Dビュー、サイドビュー・カメラ、リアビューカメラ(予想進路表示機能付)に加え、パーク・ディスタンス・コントロール(PDC)、縦列駐車と並列駐車を自動でおこなうリニア・ガイダンス付パーキング・アシスト・プラスも備わっている。またこの機能は、低速走行で通過する際にセンサーが駐車可能なスペースを検知して作動する。
6/ブラインドスポットモニター:ドアミラーでは確認しにくい後側方エリアの車両や急接近する車両を検知し、インジケーターで表示。X3では、レーン・チェンジ・ウォーニングや後車衝突警告機能、アクティブ・サイド・コリジョン・プロテクションなど、さらに高度なシステムを装備。
安全装備という面では、X3の方が機能が満載のようだが、ハリアーには標識の見逃し防止をサポートするロードサインアシストが備わっている。カメラで道路標識を認識しディスプレイに表示するもので、とても役に立つ機能だ。このかゆいところに手が届く機能は国産車ならではだろう。
■欧州プレミアムブランドの半分以下の価格なら、ハリアーは十分に検討の余地あり!
X3に対して、デザインや安全装備に関して大健闘しているハリアー。どうして大健闘しているのかといえば、X3の半分以下という車両価格であるからだ。
●対決04:パワートレイン
新型ハリアーのパワートレインはシンプルだ。1986cc直列4気筒DOHCガソリンエンジンにFFと4WDのふたつの駆動方式があり、2487cc直列4気筒DOHCガソリンエンジンにフロントモータをプラスしたFFのハイブリッド仕様と、さらにリアモーターもプラスした4WD仕様のハイブリッドがラインナップされる。
一方のX3は、1998cc直列4気筒DOHCガソリンターボエンジンと1995cc直列4気筒DOHCディーゼルターボエンジン、2997cc直列6気筒DOHCガソリンツインターボエンジンと2992cc直列6気筒ディーゼルターボエンジンに加え、1998cc直列4気筒DOHCガソリンターボエンジンに電気モーターをプラスしたプラグインハイブリッドの5つがラインナップされており、すべてが4WDである。
ハリアーにはディーゼルエンジンと6気筒エンジンがないので、ガソリンの4気筒エンジンで比べてみることにする。
ハリアーは、最高出力171ps/6600rpm・最大トルク207Nm/4800rpm。X3は、最高出力184ps/5000rpm・最大トルク300Nm/1350-4000rpm。数値だけを見ると、街乗りなどの日常域で運転する場合にストレスがないのは、X3であろう。
BMWはエンジン屋と呼ばれるだけあって、ここはBMWに一日の長がある。ゆえにX3に軍配を上げることにする。
●対決05:価格
多くのカスタマーにとってもっとも関心があるのは、車両価格であることは間違いないだろう。
新型ハリアーの車両価格は、1986cc直列4気筒DOHCガソリンエンジンのFFで約299万円から、4WDで約319万円から。ハイブリッド最上級のグレードのZ“Leather Package”でさえ約504万円からだ。
一方のX3は、もっとも廉価モデルであるX3 xDrive20i(直列4気筒ガソリンエンジン)でさえ、675万円(消費税込)からだ。ハリアーの直列4気筒ガソリンエンジンの4WDが約319万円からなので、X3の半分以下というプライスということになる。
X3の安全装備が充実しているのは、このプライスの差を考慮すれば当然だろう。
では、リセールはどちらがよいのだろうか。同じ年式の中古車で比べてみると、X3の方が値落ちの幅が大きいことが分かる。
ハリアーは中古市場でも人気の高いSUVであるので、高年式のユーズドも意外と高値をキープしている。裏を返せば、X3はユーズドで狙うのが賢く、ハリアーは新車で購入し、1度目の車検の際に下取りに出して次のクルマを狙うのが賢い買い方なのかもしれない。
* * *
本来的にはクラスが違う2車を、ミドルクラスのSUVという、ボディサイズでの区分けが同じだったというだけで、新型ハリアーとX3を比較検討してみた。
比較してみた結果、新型ハリアーはX3の車格が下でありながら、X3に迫る魅力を備えていることが分かった。試乗すると、価格差に納得するケースが多いのも確かだが、半分以下のプライスであることを考慮すれば、それを鑑みても新型ハリアーは非常にバーゲンプライスの1台であるとジャッジしていいだろう。
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みんなのコメント
比較の対象に全然ならない。ハリアーは、大衆車だし。