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歴史ある名車を楽しむ。

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歴史ある名車を楽しむ。

カーライフ [2024.08.08 UP]


歴史ある名車を楽しむ。

“お祭り渋滞”回避をサポート!ナビタイムが新機能「イベント渋滞予測」リリース【動画あり】

人生を彩るニュークラシックカー
年式は古過ぎないのに、デザインはほどよいレトロ感がある。乗り回すのにちょうどいい走行性能を持ちながら、故障は少ない。まだ高値になる前で、手の届きやすい価格帯。2000年前後ってちょうどそんな年式だ。いろいろとちょうどいい「ニュークラシック」なクルマの話をしよう!

構成・文/フォッケウルフ 撮影/木村博道、茂呂幸正、我妻慶一
(掲載されている内容はグー本誌 2024年8月発売号掲載の内容です)


見てよし! 乗ってよし! 使ってよし! のAround 2000 カーズがアツイ!
ホンダ シビック(EK型) 1995-2000
90年代後半、国民車シビックは変革の時期を迎える。EK型ではスポーツモデルの「タイプR」に活路を見出す一方で、次のEU型シビックは、全高の高い高効率パッケージング車へと変化させた。この6、7代目両モデルは日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得する。

東京湾アクアライン since 1997
1997年12月に開通した、神奈川県と千葉県を結ぶ高速道路。人工島の海ほたるPAを挟む形で、神奈川側は地下トンネル、千葉側は橋という特殊な造りになっていて、25年以上経った今でも多くの人が利用している。

さまざまな面から楽しめる、ちょっとだけ古いクルマ
「ちょっと古いクルマっていいよね」。最近、そのような意見が多方面からよく聞かれる。調べてみると、街で見かけるオシャレな人がこぞって選んで乗っているのは、2000年前後のクルマばかり。はて、クルマ好きにとって2000年ってどんな年だっけ?
 一方、ここ5年くらいで一番もてはやされているのは、80年代後半から90年代のスポーツモデルだ。どのクルマもすっかり価格が高騰してしまい、マニアックってほどでもない普通のクルマ好きには手が出しづらい状況になっている。
 そこで今、注目を集めているのが、2000年前後の年式の「ニュークラシック」と呼ばれるクルマたち。20年から30年くらい前に製造されたモデルだと、最新デバイスも付いていないし、流通台数だって少し前のモデルほど多くはない……。なぜみんなこの頃のクルマを選ぶのか?
 そこには、アナログなクルマならではのよさがあるからだ。独特の味やあたたかみが感じられ、自然と愛車を好きになる。さらに、クルマとしっかり向き合って運転するという姿勢まで身に付く。最新モデルしか買ったことのない世代にとっては、新鮮な体験になるに違いない!



2~3世代も前なのに……なぜ今、2000年前後のクルマがおもしろいのか? 
機能・装備・技術の革命前夜
現代から約25年前といえば、クルマに複雑な電子デバイスが付く前夜である。操作もメカニズムも今から考えればシンプルでアナログだった。いい意味で「面倒くさい」クルマたち、今その魅力が再認識されている。


Pickup(1) アナログの心地よさを味わえる
 ニュークラシックカーには、現代のクルマから失われつつある、“アナログの魅力”が存在する。たとえば、物理ボタンやダイヤルを操作した感覚やサイドブレーキを引いた際に感じる感触など、どれも近年の電子スイッチやタッチパネルでは味わえないもので、人によってはクルマの操作感や乗り味もナチュラルに感じられるだろう。数値では表現できない感覚的な話だが、アナログ式のクルマから「あたたかさ」や「心地よさ」が感じられるようになれば、乗員と愛車との距離は近くなったともいえる。

以前は1DINオーディオが主流だった。操作は煩わしかったかもしれないが、こういう個性もあるんだと数値的じゃない感性によるクルマの違いも知ることができた。



Pickup(2) カスタムの方向性が自由自在
 自分好みのパーツを付けること。人はそれを「カスタマイズ」と呼ぶが、そういったことが比較的、自由に実施できるのはニュークラシックカーならでは。現代の年式に近くなればなるほどクルマには新しい技術やメカニズムが使われる。それは安全性や快適性を高めるだろうが、愛車を好みの方向性に染める自由度を狭めていき、カスタマイズの方向性も絞られてしまいがちになる。カスタマイズの方向性を自分好みに自由に決めていくことで、自分だけの愛車の魅力もわかってくるだろう。

カスタマイズの方向性は千差万別。同じ車種でも感性の違いで個人の趣味性が出るというもの。街中や駐車場などで人のクルマを眺めるだけでも楽しい体験になる。



Pickup(3) 複雑なデバイスが少なくDIYも楽しい
 クルマの整備というのは専門的なもので、素人が手を入れられる範囲は限られている。しかし、いじれるところを自分なりにいじるのは楽しいし、どこをどうしたらクルマがよくなるのか、構造だって学ぶことができる。これも、電子デバイスが多くなった最新のクルマにはできない楽しみ方のひとつだ。DIYやメンテナンスは手間も時間もかかることだが、手をかけるほどクルマはよくなっていくし、クルマの楽しみ方が広がるというもの。これもまたニュークラシックの楽しみ方なのだ。

装備やパーツがしっかり備わっているか、状態はどうか。さらに、動いているか、機能しているかを確認する……いい意味で面倒くさい作業が、また楽しい。



2~3世代も前なのに……なぜ今、2000年前後のクルマがおもしろいのか? 
ジャーナリストの懐古と考察
クルマが千差万別なら、乗る人だって十人十色。若い頃からクルマを愛してやまないモータージャーナリストたちが語る、2000年頃と、そして現在のニュークラシックカー。その魅力の源についてじっくり考察してもらう。



藤島知子>荒々しくも軽快で楽しい! 夢のような走りのクルマたち

2000年代に20代を過ごしたモータージャーナリスト。各種媒体での執筆やTV番組MCなどで活躍。長期にわたって日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。
 現代のクルマは環境規制に応じて電動化の道筋を辿り、安全性を強化した取り組みが事故被害の低減に成果をもたらしています。それらは各メーカーの地道な努力の賜物といえる一方で、車両は大きく重くなり、さらには、材料費や燃料代の高騰、円安などにより、車両価格も上がってしまいました。日本は世界有数の自動車大国でありながら、現在、クルマを所有することに対する逆風が吹き荒れています。
 特に今、スポーツモデルを手に入れようと考えたら大変で、内燃機関を積むMT車なんて、絶滅危惧種。日産 GT-RやフェアレディZ、スバル WRX、マツダ ロードスターあたりはまだ元気ですが、2000年頃までスポーツカー界を盛り上げていた、トヨタのセリカやMR2、日産 シルビアや180SX、三菱ランサーエボリューション、マツダRX-7といった当時の花形モデルは歴史が途絶えてしまいました。
 各社がこぞって性能競争をした90年代は、役者にも恵まれて、デザインも個性豊かでした。若者はスポーツカーに憧れるのが当然で、私の周囲でも「いつかは自分も手にしたい」と夢を見ていた人が多くいました。当時は、このような気持ちを盛り上げてくれるクルマが、この先も販売され続けると信じて疑いませんでしたが、結果的には、「目の前の当たり前は永遠に続くものではない」という教訓を得ました。
 当時のクルマで私にとって思い出深い1台は、24歳のときに5年ローンで新車購入したRX-7(FD型)です。コンパクトなロータリーエンジンが実現した低く流麗なシルエットは、他のスポーツカーとは一線を画していました。軽快な反面、操縦性においてはピーキーな一面が顔を出し、粗削りな部分がかえって唯一無二のはかなさを感じさせて、より引き込まれていったものです。
 今後、クルマの電動化が、まだ見ぬ世界を提案してくれると期待しています。しかし一方で、ピュアな内燃機関車の荒々しくも軽快な走りを実現することは難しくなっていくでしょう。こうした変わりゆく時代だからこそ、あの頃のクルマを中古車で手に入れて乗ることが、現代のクルマでは得られない経験をもたらしてくれるに違いありません。


FAVORITE CAR
マツダ RX-7(最終型)
サバンナの系譜を受け継ぐスポーツクーペ。ロータリーエンジンによる鋭い走りと美しいスタイリングが特徴の国内屈指の人気モデルで、藤島氏もカスタマイズして乗っていた。
中古車中心相場 360万~600万円



気になる3台
マツダ ロードスター(2代目モデル)
世界中にファンを持つ2シーターオープンスポーツ。埋め込み式ヘッドライトが特徴の2代目モデルは、98年にデビューし、05年まで販売された。
中古車中心相場 30万~170万円

日産 シルビア(最終型)
日本を代表するスポーツクーペで、駆動方式はFRを採用。最終型は99年に登場し、そのスタイリングのよさと扱いやすいボディサイズで走り屋たちの人気の的に。
中古車中心相場 210万~350万円

トヨタ セリカ(最終型)
トヨタ伝統のスポーツクーペで、最終モデルは99年に登場。先代モデルまでの骨太なラリーイメージから一転、未来的でクールなスタイリングが採用された。
中古車中心相場 40万~110万円


岡本幸一郎>円高で輸入車も買いやすかった。今から思うと信じられない時代

96年にフリーのモータージャーナリストとして独立し、新車から中古車、パーツまでさまざまなジャンルの自動車記事を執筆。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を歴任。
 バブルが終焉を迎えてからも自動車業界はアツかった。クルマ好きはクルマにお金をつぎこむのが普通で、当時はガソリンが安かったので燃費が悪くても気にせず乗れた。
 世の中的にも今よりずっと制約が小さく、自動車メーカーはのびのびとやりたいことができて、それがまたユーザーに受け入れられた。
 あの頃は各メーカーの280馬力モデルが揃っていた。当時からGT-RやNSXなどはあったが、ランエボ対インプレッサの性能バトルが熾烈さを増して、お互い毎年のように進化して新しくなった。ちなみに、筆者が3台乗り継いだRX-7(FD型)も途中から280馬力車の仲間入りをはたしている。とにかくあの頃は、100万円台から1000万円級まで、スポーツ系の魅力的なクルマが選び放題だったのだ。
 そして当時はステーションワゴンにも勢いがあり、特にレガシィやステージアといった高性能モデルが人気を博したものだ。やがてミニバンの台頭によりワゴンが徐々に追いやられていくなかで、次に目立ってきたのが、ホンダが送り出したオデッセイとステップワゴン、そしてトヨタのエスティマだった。ミニバンといえば、次世代からはアルファードにお株を奪われてしまったが、97年に登場して一世を風靡した初代エルグランドも記憶に残る1台だった。
 セダンはどうだったか。かつて名を馳せたシーマの影が薄れていく一方で、セドリック/グロリアの丸目のグランツーリスモはインパクトがあった。中古車市場では今でも高い人気を誇っている。スポーティセダンとして鳴り物入りで登場したアルテッツァには拍子抜けした人も少なくなかったが、やっぱり素性は悪くなかったと後から高く評価された。筆者の知人でも購入していじり倒していた人が多かった。
 輸入車では、シボレー アストロのローライダー仕様が人気で、夜の街を走り回っていたのが懐かしい。じつは筆者もおもしろそうだと思って一度購入したことを思い出す。
 当時は円高が進み、輸入車の新車価格が下がっており、カマロが200万円台の前半、コルベットやキャデラック セビルが500万円台前半から買えた時期もあった。今となっては信じられない話である。


FAVORITE CAR
マツダ RX-7(最終型)
91年にデビューすると、一躍、人気モデルとなった本格派スポーツで、2003年まで販売されていた。岡本氏は「世界一のスポーツカー」と認めて、同車を3台乗り継いでいる。
中古車中心相場 360万~600万円


気になる3台
スバル レガシィツーリングワゴン(3代目モデル)
日本を代表するワゴンモデルとなったスバルの基幹車種。98年登場の3代目モデルは、このワゴンのほか、セダンのB4、SUV風のアウトバックも設定されていた。
中古車中心相場 30万~90万円

日産 エルグランド(初代モデル)
1997年に誕生したフルサイズミニバンで、その圧倒的迫力のフロントデザインで一世を風靡した。以後、同クラスにはライバルも参入することになる。
中古車中心相場 40万~90万円

トヨタ アルテッツァ
待望の「FR」スポーツセダンとして、98年にデビューし、05年まで販売された。6速MTモデルも設定されるなど、セダンらしからぬ爽快な走りが魅力だった。
中古車中心相場 40万~160万円

※中古車価格はグーネット 2024年7月調べ。記事中の価格は参考であり、中古車価格を保証するものではありません。



私なりの、ニュークラシックの楽しみ方 いつだって、マイカーが好き!
ニュークラシックカーを求めて東奔西走。2000年前後のクルマを選ぶ人って、もしかして若い人が多い!? 人によって激しかったり、ゆるやかだったり、各者各様のマイカー愛をたっぷり感じてきました。



距離が近く感じられるのはこの時代ならではの魅力

ホンダ シビックタイプR(1997)×井上悠大(29)編集記者
 子どもの頃から実家のクルマをいじって遊んでいたという井上さん。クルマ&バイク好きな父親の影響もあり、見事なカーマニアに成長した。そんな井上さんが憧れを抱いていたのは、F1で活躍していたホンダ。また、無類のハッチバック好きということもあり、必然的に募る思いはシビックタイプRへ。
 特にEK型への思い入れは学生時代から深いものがあったが、徐々に相場が上がっていたこともあって、入手することはなかば諦めかけていた。しかし2018年、偶然の出会いが。「別のクルマを見にホンダ車専門店を訪れたら、ちょうど下取りで入ってきて値札もまだ付いていない、この車両が店頭に置いてあったんです」。運命だった。
 走行距離は約4万km。当時の相場は250万円前後だったが、店主は100万円ほど低い価格を提示してくれた。「じつは買ってすぐにエンジンブローさせてます」と笑って話す井上さんだが、約6年が経った今も、EKへの愛情は揺るがない。
 「操作時のダイレクト感はこの時代のクルマならではです。一体感があるというか、クルマとの距離が近い」と魅力を語り、今後もほかのクルマに目移りすることはなく、「新しいクルマを買うとしたら増車しかありません」と語る井上さん。視線の先には、いつも愛車が映っている。

ホイールやマフラーはほかにも3~4セット保有。ホイールは気分によって変える。リアスポイラーは自分のチョイスで、「基本的には純正ノーマルが一番だけど、これだけはどうしても欲しかった」。これからはエンジンや足まわりなどのリフレッシュ系メンテを進めていくそう。怖いのは盗難で、ステアリングを外すなどの対策はしている。


25年前の輸入セダンは若者を落ちつかせる?

BMW 325i(2000)×半田大樹(26)会社員
 年齢の割には落ち着いた雰囲気の半田さん。愛車がBMWのセダンで、しかも25年前のモデルって、なんだかいろいろ大人過ぎじゃない?
 そもそもこのクルマを購入したのは約5年前。かつて父親が乗っていたE46型のBMW3シリーズを探していたところ、たまたま15万円と格安の出物があったという。「私の父が乗っていたのはクーペだったんですが、私はセダンのほうが好みでして」と、やはりアダルトな発言をする半田さん。
 実際にオーナーとして乗ってみると、改めて3シリーズに心酔させられそうで、ステアリングの手応えや6気筒エンジンを回したときの爽快感など、昔のクルマならではの“味”が車両にしっかり残っていることも魅力のひとつなんだとか。
 さすがに維持していくうえでのメンテナンスにはそれなりの金額はかかったものの、「信頼できるショップさえ見つけられれば、輸入車だからといって構えることはないと思います」と、輸入車のデビューとしてもBMWをおすすめしてくれた。
 現在、走行距離は18万kmを超えているが、外観がピッカピカに磨かれていてまるで新車のよう。この時代のクルマらしく、現在は相場がだんだん上がり始めているようだが、手放す気はまったくないという、落ち着き払った半田さんであった。

当然今は使えないダイバーシティアンテナだが、当時の雰囲気を感じさせるパーツなのでそのままにしてあるのだとか。「キドニーグリルはこっち派です」と、現代の大型グリルより、当時の小型グリル推し。若干反り上がったトランクエンドのデザインがお気に入り。ホイールやシフトノブは半田さんの好みで交換したもの。


装備も外装色も内装色も求めたものがすべてここに!

ホンダ プレリュード(1999)×田中丈翔(26)会社員
 取材現場に颯爽と現れたのは、なんと黄金色のプレリュード。このクルマ、白色ボディはよく見るけれど、こんなに派手なボディカラーが存在していたとは!
「この色『スパークルイエロー・メタリック』だったから、このクルマを選んだって部分もあります」という田中さん。ちなみに現在お付き合いされているガールフレンドからは、「初めて会ったときにこのクルマに乗ってきてたら、たぶん付き合ってなかった」と言われているそう。彼女との出会いが先でよかった!
 そのほか、赤い内装色やサンルーフなど、田中さんにとってのさまざまな好みや憧れが、ちょうどぴったりハマった物件をたまたまネットで見つけたが、その翌日には、もうその店舗を訪れていたというから、彼の行動力は半端ない。今では、この愛車の将来のために、ネットなどでパーツを見つけると、片っ端から購入しているのだとか。
 21年に購入して以降、基本的に乗るのは休日オンリーだが、北は山形、西は九州まで、これまで何度もロングツーリングに興じているという。しかしこの車両、水温が少し上がったり、内装がめくれてきたこと以外、トラブルはほぼなしという超優良物件だ。「信頼性もある程度高いし、走行性能もしっかりしてる」と、まだまだ蜜月は続きそうである。

存在自体は何となく知っていた程度のクルマだったが、端正なデザインでまとめられたリアコンビネーションランプを見てひと目惚れしたという。「今ではサンルーフのないクルマには乗れない」というほどサンルーフもお気に入り。赤い内装は絶対条件だった。外観ではシルバーのグリルのみ交換している。こだわりの逸品だ。


二人の愛を育んだのは絶対に壊れないクルマ?

トヨタ bB(2004)×安藤 守(41)整備士/安藤めぐみピアノ講師
 じつは安藤夫妻のbBは、これで2台目だ。最初は奥様のめぐみさんが新車に乗っていたが、追突されて廃車になってしまう。しかしbB以外に欲しいクルマがなかったため、今度は中古車で、現在のbBを購入した。つまり通算20年以上bBに乗り続けているが、「最初に見たときにビビッときたんです。選んだ理由はそれだけ」という。
 そんなめぐみさんが、もうひとつビビッときて選んだもの? それが守さんだ。最初のbBにはサンルーフが付いていて、それが閉まらなくなってしまったときに修理を担当した整備士だったのが、後に旦那さんとなる守さん。なんと、bBが二人の仲を取り持った。愛車が育んだラブストーリーだ。
 最近は主に守さんの通勤車として乗られているが、3匹の愛犬たちと出かける際にも大活躍。「車内が広くて、荷物も積めるから便利」と言うめぐみさん、さらにお気に入りのポイントは、「コラムシフトですね。今のクルマにはないし、操縦していて感触がいい」のだとか。
 いつか動かなくなる日までbBに乗っていたいとめぐみさんは思っている。しかし、その道のプロである守さん曰く、「このクルマ、壊れづらいんです。パーツもまだ在庫が見つかりますし」とのことで、しばらくは元気に活躍してくれそうだ。

ステアリングの根元からシフトレバーが生えている「コラムシフト」。今やタクシーでも見かけなくなったが、ベンチシートと相性ぴったり。グリルはオプションパーツを守さんが自分で塗装。ホイールはこのクルマ用にもう1セット持っている。愛犬のパグちゃんステッカーは仲間たちと自作したオリジナルデザインだ。


「世代またぎトーク」あの頃(2000年前後)、クルマは神だった……
何もかもが豊潤で無駄に溢れていて、パンチの効いていたあの時代。時代の寵児だったスポーツカーは低燃費車に取って代わられようとしていた。当時を生き残った業界の識者がニュークラシックシーンのことを語り合う。

「氷河期世代」安藤二等兵
1976年埼玉生まれ。『ベストカー』、『CARトップ』という業界2大誌に在籍後、アイテム情報誌の編集なども務めつつ、現在はフリーの編集ライター。本誌も手がける。

「新人類世代」清水草一
1962年東京生まれ。自動車評論家として、さまざまな雑誌やメディアに連載多数。数々のお笑いフェラーリ文学を上梓し、現在は交通ジャーナリストとしても活動中。

安藤「僕が某自動車雑誌でアルバイトとして働き始めたのが98年なんです。だからこの当時(2000年前後)のクルマは、ほぼすべて乗っております!」
清水「私はバブル絶頂期の89年からこの業界に入った。その後の10年間で、自動車を取り巻く環境は大きく変わったな」
安藤「たとえば98年の軽自動車の規格変更ですね!」
清水「それをきっかけに、軽自動車はニッポンの国民車に成長していった。当時の代表車種はスズキのワゴンRだ」
安藤「あれは売れましたね」
清水「93年発売の初代はサイズの小さい旧規格、98年発売の2代目はサイズが拡大された新規格だが、どっちも歴史に残る名車だ。機能的でデザインが洗練されていたから、今乗っていてもカッコいいと思うぞ」
安藤「2000年前後のクルマで個人的に強く印象に残っているのは、やはり98年のトヨタ アルテッツァと99年のホンダS2000です! どちらも自動車雑誌が特集を組みまくって、盛り上がりました」
清水「バブル崩壊以後、速いクルマのブームは終焉したが、クルマ好きもメーカー側も、スピードに対するロマンの復活を望んでいたのだな」
安藤「でも、どっちも一代限りで絶版になっちゃいました。なぜでしょう?」
清水「出してはみたが、思ったほど需要がなかったことに尽きる。欲しいと思っても、買うところまでいく人が少なかった」
安藤「そうかもしれません。そういえばこの後、いろいろなスポーツモデルが絶版になりましたね」
清水「シルビアやセリカは、最後のモデルが99年に発売されている。しかしまったく売れなかった」
安藤「そういう国産絶版スポーツが、今、大人気なわけですね!」
清水「スポーツカーは一種の遺産になったんだ。だから古典的なほど価値がある」
安藤「お聞きしたかったのは、初代プリウス(97年発売)の衝撃度です。私は当時まだこの業界に入っていなかったので、『21世紀に間に合いました』っていうCMが心に残っているだけなんですが」
清水「そりゃもちろん衝撃的だった。それまでの『速さ=善』という価値観をひっくり返したクルマだからな。ただ、初代はそれほど売れなかった」
安藤「それが変わったのは、03年発売の2代目からですね!」
清水「ITバブル崩壊などで不況が深刻化して、世の中のムードが俄然、『燃費=善』になった。それで2代目プリウスは売れに売れ、軽自動車と並ぶ国民車になったんだ」
安藤「一方ホンダは、99年に初代インサイトを発売しています」
清水「あれにはビックリした」
安藤「個人的には、プリウスより強く印象に残ってますね。ホンダ初のハイブリッドカーが、スーパーカーみたいな二人乗りの燃費スペシャルだったんですから!」
清水「そんなに燃費が大事ならこれでどうだ! という力業だったが、実用性がゼロだった。その後ホンダは、インサイトをベースにしたハイブリッドシステムをシビックに搭載して対抗したが、長い苦難の行進となった」
安藤「それが進化して、現行型シビックやフィット、ヴェゼルなどに積まれているe:HEVにつながるわけですね!」
清水「日産のeパワーともども、トヨタに対抗できるハイブリッドシステムができるまで、20年かかったってことだ」
安藤「ミニバン系では、2000年前後は日産エルグランドの天下だった印象が強いです!」
清水「バブル期のスポーツカーに代わって、若者のステイタスになっていたな」
安藤「それが今みたいなアルファード/ヴェルファイア一強になるなんて、誰が想像したでしょう!」
清水「当時のトヨタは、機を見るに敏なマーケティングが特色だった。02年に後出しジャンケンな初代アルファードを出してエルグランドを打ち負かした。しかし今のトヨタは本物志向。加えて大胆にして繊細な戦略で連戦連勝している。無敵だ」
安藤「トヨタといえば、2000年に登場したWiLLシリーズのWiLL Viが強烈でした。なにしろカボチャの馬車ですから!」
清水「当時のトヨタデザインは、まだ試行錯誤の最中だったのだ」
安藤「20年経っても、フィガロやBe-1など日産のパイクカーのような、高い評価にはならないですね」
清水「その代わりトヨタは、現行モデルのデザインが格段に進歩している。失敗は成功のもとってことだ」
安藤「当時のクルマのなかでは、僕は日産キューブ(98年発売)を復活してほしい気がするんですが……」
清水「四角いフォルムの傑作だったが、現在は軽ハイトワゴンがその後を立派に継いでいるぞ」
安藤「トヨタ プログレ(98年発売)の小さな高級車ってコンセプトも、今だったら通用しませんか?」
清水「当時あのコンセプトはあまりうまくいかなかったが、高齢化が進んだ今は、ノートオーラやレクサスLBXのような小さな高級車がよく売れている。あえてプログレを復活させる必要はないだろう」
安藤「じゃ、日産ティーノ(98年発売)のような前席3人乗りのクルマはどうでしょう」
清水「それはあるかもしれないな。子どもは多くてひとりという家族がこれだけ増えているのだから」
安藤「復活もアリですよね! 現代だったらどんなデザインになるかワクワクします!」


2000年頃のクルマ世相
2001年 ETCサービスが開始
今でこそ当たり前となっているが、高速道路でETCのサービスが開始されたのは2001年。それまではチケットを手渡ししていたなんて、今の若い人は信じられないかも。

2002年 フィットがカローラを抜く
33年連続販売台数の王者だったトヨタ カローラを打ち破ったのはホンダ フィット。シティやロゴなどでコンパクトカーの製品としての価値を高めてきた成果だった。

2003年 東京でディーゼル排ガス規制
まずは地方自治体からということで、2003年に公害防止のためのディーゼル車運行規制が開始された。その後、各社の企業努力もあってクリーンディーゼルが生み出される。


「とてもよくなった」モデルチェンジ
トヨタ ヴィッツ(初代モデル)▶︎ トヨタ ヤリス(現行型)

トヨタ クラウン(11代目モデル)▶︎ トヨタ クラウン(スポーツ)

ホンダ シビック(7代目モデル)▶︎ ホンダ シビック(現行型)

 名称は変わったが、ヴィッツはヤリスとなり、世界トップクラスのコンパクトカーへと成長した。16代目となる現行型クラウンは、セダンの殻を脱却。4種類のボディタイプを販売する離れ業を見せている。シビックは上級車へ移行したものの、走りのよさはそのままに、現行型は美しいリアビューも獲得している。



リメイク希望車
トヨタ プログレ
「小さな高級車」は名前や姿形を変えて今も生き残っているが、やっぱりセダンがいいんじゃないだろうか。高齢ドライバーが増える今後の道路状況にも合うはず!

日産 キューブ(初代モデル)
一時期、同社のマーチを超えるほどの人気を獲得したカクカクデザインのコンパクトカー。2代目モデルは存在したが、もっとカクカクで復活をお願いしたい。

マツダ RX-8
車名が「RX-8」じゃなくなってもいいが、ロータリーエンジンは復活! というカーマニアの希望がよく聞かれる。発電用エンジンじゃないロータリーを求む!

日産 ティーノ
「前席3人乗り」というコンセプトは難しい。ホンダ エディックスもなくなった。それでも明るい家族の姿として復活を望むのは、ムルティプラに乗っていた安藤だ。

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