現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則401】限定車クロスゴルフはゴルフプラスをベースに誕生、真面目な中に洒落っ気も

ここから本文です

【ヒットの法則401】限定車クロスゴルフはゴルフプラスをベースに誕生、真面目な中に洒落っ気も

掲載 更新
【ヒットの法則401】限定車クロスゴルフはゴルフプラスをベースに誕生、真面目な中に洒落っ気も

2008年、クロスポロに続くクロスシリーズの第2弾となるクロスゴルフが500台限定で日本上陸を果たした。ベースはゴルフではなく、ゴルフプラス。またパワートレーンは最新の1.4TSIエンジンで魅力的。Motor Magazine誌ではゴルフTSI コンフォートラインとともに試乗、その違い、魅力を探った。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年3月号より)

500台の限定モデルとして追加
2007年も日本での輸入車セールストップの地位を守ったフォルクスワーゲン。このブランドの魅力は真面目さに裏打ちされた「良いもの感」にあると僕は捉えている。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

例えばクルマの細部の作り。ドアヒンジに鋳造部品を多用して、いかにも堅牢で精度の高い開閉感を実現しているところなどは、初めてフォルクスワーゲンに触れる人にも「ドイツ車らしさ」を感じさせるポイントだろう。

時代の要請に革新的技術で応えるあたりも真面目だ。ガソリンエンジンの主軸に、小排気量と過給器を組み合わせたTSIを据えたのは2007年の大きなニュースだったが、実際に乗ってみてもパワフルな上に、高速巡航での燃費の伸びにそのメリットをしっかり感じさせてくれた。

ツインチャージシステムやDSGなど、従来の物に比べれば相応に高コストとなるはずのこうしたパワートレーンを、必要とあれば短期間の内にメインに据えてしまう。そこには、ディーゼルの不在やハイエンドモデルのみが導入されるという日本固有の事情もあるのだろうが、それだけにフォルクスワーゲンの今の姿勢が浮き彫りになっているとも言えるはずだ。

パッケージングの良さも常に感心させられる部分だ。中核車種のゴルフは登場当初はサイズアップを懸念する声も多かったが、今となれば歴代同様に、扱いやすさと居住性、積載性を現在のCセグメントのサイズ感の中でバランスよく成立させた、お手本的なパッケージングとなった感が強い。

このように、クルマをどこで斬っても真面目一徹さがうかがえるフォルクスワーゲンだが、時折洒落っ気のあるモデルを登場させる。今回ゴルフシリーズに500台の限定モデルとして追加されたクロスゴルフも、そんな中の一台と捉えていいだろう。

駆動方式はFFのままクロスオーバー風に
クロスゴルフは先に登場したクロスポロ同様、駆動方式はFFのまま、外観をプロテクターやクラディングパネルで覆ってクロスオーバー風に仕立てたクルマ。基本性能はゴルフそのもののいわゆる「雰囲気SUV」だが、フォルクスワーゲンが開発すると普段は寡黙なマジメ人間がポロリとつぶやいたジョークのようでどこか微笑ましい。

注目したいのはベースとなったのがゴルフそのものではなく、真面目一徹のパッケージングを少しいじって登場したゴルフプラスであることだ。

全長×全幅は本家ゴルフと同一ながら、全高を85mmかさ上げしたのがゴルフプラスというクルマの成り立ち。言葉にすると簡単だが、全高のアップはカウルトップの位置を上げ、それに伴ってボンネットフードの傾斜も急になるなど全体をまったく新しいデザインとすることで実現させている。そのためにフォルクスワーゲンは、ボディ外板からライトなどの艤装部品までを新作する手間を掛けているのだ。

ボンネットフードの後端に樹脂製の整流版のようなパーツを装着し、大きなフロントウインドウに対応して交差型のエアロワイパーに変更しているというこだわりようだ。

そうまでしてフォルクスワーゲンが表現したかったのは、ハッチバック車のさらなるユーティリティ向上だ。実際ゴルフプラスに乗ってみると、フロントで75mm、リアで85mmそれぞれ上がったシートハイトにより、腰の上下移動量の少ない軽快な乗降性が実現されていることに気づく。フロントウインドウ越しの景色もゴルフとは異なり、室内空間の上下方向の余裕を活かしてよりアップライトなポジションを取らせるため見晴らしがいいし、リアシートは左右6:4のセパレート式で前後に160mmものスライド機構を実現した。

このリアシートは、リアモーストでは足下空間が広大で足が組めるほどの余裕があるし、フロントモーストでもアップライト化によりレッグルームに深さがあるため実用に耐える。

このように、全高85mm拡大により、通常のゴルフにない機能を付け加えることに成功したゴルフプラスだが、欧州では街で見かける機会も相応に多いものの、日本での売れ行きはあまり伸びていないのが現状のようである。

やはり本家ゴルフの存在があまりに大き過ぎたと考えるのが順当なところなのだろうが、ゴルフプラス自身にも問題はある。ひとつは全体から漂う雰囲気があまりにもゴルフそのものであること。異なった機能を備えるモデルなのに、外観にそれが一目でわかるキャッチーな部分に乏しい。これだとエントリーユーザーは手堅くゴルフを選びたくなるに違いない。

また、ミニバン的な使い勝手を持つトゥーランが登場していたことも、ゴルフプラスにとっては不利に作用したと思う。広さや多彩なシートアレンジといった機能は、パッケージングを根本から見直して作られたトゥーランにはやはり敵わない。これは事実である。

そうした逆境に置かれたせいか、日本でのゴルフプラスはこれまで最新のTSIエンジンの搭載もなく、EとGLiの2つのグレードで展開するにとどまっている。したがって今回のクロスゴルフの登場は、ゴルフプラス久々のビッグニュースなのである。

見事な仕上がりのインディビデュアル製
まずは外装から観察して行こう。ボディサイズは全長4240mm×全幅1775mm×全高1655mm。ゴルフプラスに対しそれぞれ若干のサイズアップとなっているが、前後方向はオーバーライダー、幅はフェンダーを縁取るクラディングパネル、高さはルーフレールの追加によるものだ。

こうした一連のドレスアップは、特別仕様を作る専門部署のVWインディビデュアルが担当しているが、さすがにそのフィニッシュは見事。後付け感は微塵もないし、バンパーや足下などボディ下側のボリュームが増したことで、ゴルフプラスにつきまといがちだった腰高感もなくなった。最初からこれくらい標準のゴルフと差別化できていれば、もっと注目度があがったのにと思わずにはいられない。

室内は、インテリアの基本形状はゴルフプラスと同じであるものの、格段に華やかな空間となっていた。

まず、シートやドアトリムにアイスシルバーと呼ばれる、ブルーグリーンのような独特の色合いのクロスが使われている。内装の基調色となっているグレーとのコントラストがお洒落でいい雰囲気だ。ちなみに限定500台の内訳は、ブルーグラファイトパールエフェクトという紺に近いボディカラーが200台、取材車のアイスシルバーメタリックが300台だが、両者ともインテリアはこの仕様になる。

センターコンソールや左右の空調アウトレットにシルバーの加飾が施され、ペダルにもアルミ調の素材が使われたのも見過ごせないポイント。ステアリングは専用デザインの3本スポークで、ディンプル加工された本革巻きのため握った感触も非常にいい。

シート機能はゴルフプラスと基本的に同じ。リアシートはスライド機能に加え、背もたれを前倒しすると座面も同時に沈み込むフォールダウン機構を備えておりワンタッチでフラット化できる。畳んだ状態で多少床に傾斜が残るものの、ゴルフを上回る収納力を手にできるのはゴルフプラスとこのクロスゴルフの大きな魅力だ。しかも助手席もバックレストの水平前倒しが可能なので、かなりの長尺物も余裕を持って積み込むことができる。

着座感で標準のゴルフと違いが見られるのはリアシート。フロントよりも一段高い位置に座らせられるため見晴らしがとてもいいのだ。ただ、ヘッドクリアランスは小さめ。大柄な人だと頭まわりに圧迫感があるかも知れない。

着実に進化を続けるTSIエンジン
エンジンは1.4TSIが採用された。ゴルフGT TSIに搭載される170ps仕様ではなく、すでにトゥーランに積まれ、最近ゴルフのTSIコンフォートラインにも採用された140ps仕様の方だ。

既存のゴルフプラスGLiと比べると10psのダウンとなるが、トルクは22.4kgmと2kgmも強化されており、動力性能は向上したという実感の方が強い。特にスタートダッシュの鋭さが印象的。GLiの2.0FSIも実用域で力強く扱いやすかったが、それよりさらにパンチがあり軽快だ。ただ、トルクの立ち上がりがやや唐突で、発進時にアクセルを深く踏み込むと前輪が軽くホイールスピンを起こすクセはまだ少し残っている。

もっともこれは、同時に試したゴルフのTSIコンフォートラインにも言えることだ。アイドリングに近い領域からスーパーチャージャーの過給を受けるだけに、そのマネージメントが相当に難しそうなTSIだが、DSGの制御も含め着実にアップデートされているようで、もはや粗さと感じられるようなことはない。今回感じられた軽いホイールスピンも、元気の良いFF車にありがちな刺激のようなもので、走りの質感を落とすことにはなっていない。

クロスゴルフに搭載されたのが140psのTSIだったので、ゴルフGT TSIやトゥーランのハイラインに積まれる170ps仕様との差を気にする向きもあるだろうが、両者で異なるのは主に中高回転域のトルクの盛り上がりと後伸びだ。低速域の力強さは140psも170psも大差ないため十二分に軽快。正直なところ、一度この140psを味わってしまうと、これ以上は必要ないと思えるほどなのである。

スポーティな走りを望むならGTIという選択肢があるわけで、従来のGLiにかわるエンジンとして実用性に秀でたこの140ps仕様の搭載が拡大されたことにより、170psの存在がやや中途半端になってしまうのではないかとの危惧さえ感じられる。それほどにこの140ps仕様は魅力的。特にゴルフのTSIコンフォートラインは正確なフットワークは維持しつつ、乗り心地がマイルドな標準仕様の足まわりと組み合わされるからなおさらだ。

ただしクロスゴルフは精悍なスタイリングとのバランスを考えたのか225/45R17とやや大きめのタイヤを履いているため、195/65R15のTSIコンフォートラインとは乗り味がやや違っている。剛性の高いタイヤを履いたせいで路面からの入力が強く、パタパタとした振動を感じさせるのだ。

一方でサスペンションはさほど締め上げていないため、コーナリングでのアクションは大きめに出る。つまり操縦性はさほどシャープではなく、おっとりとしたコンフォートライン寄りなのに、乗り心地だけが硬めなのだ。これはちょっと残念に感じられた。限定車なので細かい仕様設定ができないのかもしれないが、理想は15インチを標準にしておいて、17インチはオプションで選択できる方がクロスゴルフの性格には合っていると思う。

いくつか細かい指摘もしてしまったが、このクロスゴルフの登場で、今まで見過ごされがちがったゴルフプラスのパッケージが再び注目されるのは間違いない。可能であれば限定と言わず、カタログモデルに昇格させて欲しいものだ。

いささか真面目過ぎるゴルフのラインアップに、一台くらいこうしたスタイル重視のモデルがあってもいい。そう思えるのも、クロスゴルフもまた、他のゴルフシリーズと共通の質感や作り込みの良さがはっきりと確認できるクルマだからだ。やはりフォルクスワーゲンはどこまでも真面目一徹なのである。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2008年3月号より)



フォルクスワーゲン クロスゴルフ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4240×1775×1655mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1490kg
●エンジン:直4DOHCツインチャージャー
●排気量:1389cc
●最高出力:140ps/5600rpm
●最大トルク:220Nm/1500-4000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●車両価格:309万円(2007年)

フォルクスワーゲン ゴルフTSI コンフォートライン 主要諸元
●全長×全幅×全高:4205×1760×1520mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1390kg
●エンジン:直4DOHCツインチャージャー
●排気量:1389cc
●最高出力:140ps/5600rpm
●最大トルク:220Nm/1500-4000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速DCT(DSG)
●車両価格:289万円(2007年)

[ アルバム : クロスゴルフとゴルフTSI コンフォートライン はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
メルセデス・ベンツの『GLE』系と『GLS』にオンライン先行受注にて“Edition Black Stars”を設定
AUTOSPORT web
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
ラリージャパン2024“前夜祭”が豊田市駅前で開催。勝田貴元らが参加のサイン会とパレードランが大盛況
AUTOSPORT web
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
フランス人スター選手と一緒の気分? 歴代最強プジョー 508「PSE」 505 GTiと乗り比べ
AUTOCAR JAPAN
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
セカオワが「愛車売ります!」CDジャケットにも使用した印象的なクルマ
乗りものニュース
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
トヨタWRCラトバラ代表、母国戦の勝田貴元に望むのは“表彰台”獲得。今季は1戦欠場の判断も「彼が本当に速いのは分かっている」
motorsport.com 日本版
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
メルセデスAMGが待望のWEC&ル・マン参入! アイアン・リンクスと提携、2025年LMGT3に2台をエントリーへ
AUTOSPORT web
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
TCD、モータースポーツ事業を承継する新会社『TGR-D』を2024年12月に設立へ
AUTOSPORT web
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
ウイリアムズとアメリカの電池メーカー『デュラセル』がパートナーシップを複数年延長
AUTOSPORT web
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
“650馬力”の爆速「コンパクトカー」がスゴイ! 全長4.2mボディに「W12ツインターボ」搭載! ド派手“ワイドボディ”がカッコいい史上最強の「ゴルフ」とは?
くるまのニュース
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
フェラーリ育成のシュワルツマンが陣営を離脱。2025年はプレマからインディカーに挑戦
AUTOSPORT web
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
スバルBRZに新たな命を吹き込む 退役軍人のセカンドキャリアを支援する英国慈善団体
AUTOCAR JAPAN
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
オープンカー世界最速はブガッティ!「ヴェイロン」より45キロも速い「453.91km/h」を樹立した「W16ミストラル ワールドレコードカー」とは?
Auto Messe Web
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
リバティ・メディアCEOマッフェイの退任、背景にあるのはアンドレッティとのトラブルか
AUTOSPORT web
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
『ローラT92/10(1992年)』“賃貸住宅ニュース”で強いインパクトを残した新規定グループCカー【忘れがたき銘車たち】
AUTOSPORT web
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
約10年ぶりに“メイド・イン・イングランド”に!? 新型「ミニ・コンバーチブル」が“ミニの聖地”で生産開始
VAGUE
【クルマら部】「ポルシェ911」クルマ愛クイズ!全4問・解答編
【クルマら部】「ポルシェ911」クルマ愛クイズ!全4問・解答編
レスポンス
昭和の香り残す街に130台のクラシックカー…青梅宿懐古自動車同窓会2024
昭和の香り残す街に130台のクラシックカー…青梅宿懐古自動車同窓会2024
レスポンス
三菱「新型SUVミニバン」公開! 全長4.5m級ボディדジムニー超え”最低地上高採用! タフ仕様の「エクスパンダークロス アウトドアE」比国に登場
三菱「新型SUVミニバン」公開! 全長4.5m級ボディדジムニー超え”最低地上高採用! タフ仕様の「エクスパンダークロス アウトドアE」比国に登場
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

247.0287.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.940.0万円

中古車を検索
ゴルフプラスの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

247.0287.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

35.940.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村