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動的能力を磨いたツーリング ポルシェ・マカン Tへ試乗 走りに振った足腰+4発ターボ

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動的能力を磨いたツーリング ポルシェ・マカン Tへ試乗 走りに振った足腰+4発ターボ

4気筒マカンのシャシーをチューニング

ポルシェがモデルラインナップにツーリングを意味する「T」を復活させたのは、2017年。先代に当たる991型の911 カレラTが皮切りだった。

【画像】動的能力を磨いたT ポルシェ・マカン 競合の欧州製SUVと比較 全116枚

その2年後には、718ボクスターと718ケイマンにもTが追加された。人気のコンパクトSUVへ展開されるのも、時間の問題だったといえる。

2022年、予想通りマカンにもTが登場した。ノーマルのマカンよりシャープでダイナミックな動的能力が与えられ、スタイリングもスポーティに仕上げられている。オプションの選択肢も、ポルシェらしく多彩だ。

エンジンは、1番手頃なマカンと同じ、最高出力266psを発揮する2.0L直列4気筒ターボガソリン。動力性能では、3.0L V6ターボを搭載するマカン Sの下に該当する。

だがシャシーは、T専用にチューニングを受けている。アンチロールバーは硬さを増し、車高は標準で15mmダウン。オプションのエアサスペンションを選べば、25mm低くなる。よりドライバーフォーカスなマカンであることは、間違いない。

見た目では、暗めのアガット・グレーに塗られたフロント・スプリッターやミラーカバー、サイドシル、ルーフスポイラーなどが特長。専用色の20インチ・アルミホイールが全体を引き締めている。

暗いボディカラーを選ぶと、専用ボディキットが馴染んでしまいそうだが、鮮やかな色を選べば充分な差別化が図られているのがわかる。試乗車のように青みがかったホワイトだと、効果的だ。

スポーツサルーンのようにコーナーを縫える

インテリアには、シルバーのストライプとステッチが施された、ソフトテックスと呼ばれる素材のスポーツシートが標準装備。ヒーターも内蔵される。スポーツクロノ・パッケージも、オプションで選べる。

もし、通常のマカンをTと同等の内容に仕立てると、マカン Sの価格を超えてしまうという。巧みな価格設定も従来どおり。

Sよりパワーで劣るマカン Tだが、エンジンがコンパクトなことで、フロント側の重量は58kgも軽い。ノーズの動きが軽快で、コンパクトSUVというより、Dセグメントのスポーツサルーンのように正確にコーナーを縫っていける。

ステアリングホイールの重み付けは完璧。姿勢制御も素晴らしく、ボディロールは最小限に抑えられている。

マカン Tでは、四輪駆動システムに手が加えられ、リアタイヤ側がより主導となるよう設定された。その変化は、限界領域付近まで攻め込まずとも体感することができる。

タイトコーナーからの脱出で、アクセルペダルを早めに踏み込んでみると、真っ先にリアタイヤが反応し若干アウト側へスライド。そのれから、マカンは前方に突き進んでいく。

ドライバーの気分次第では、思う存分リアタイヤを振り回すことも可能。グリップ力やバランスにも長け、ドライバーの自信を常に鼓舞してくれる。

一方でエンジンのサウンドは、心から楽しめるというわけではない。オプションとなる、スポーツ・エグゾーストを考えても良いかもしれない。

高速域でのロードホールディング性が向上

2.0L 4気筒ターボの最大トルクは40.7kg-mもあり、1800rpmから得られる。クイックに変速をこなす7速デュアルクラッチAT(PDK)が、効果的にトルクを路面へ展開してくれる。回転数の上昇とともに、パワー感も高まっていく。

だが、息を呑むほど速いわけではない。滑らかに加速するが、ついオーバーブーストを効かせられる、スポーツ・レスポンスボタンを押したくなってしまうことも事実だ。

試乗車には、ブレーキ制御のトルクベクタリング・システムも備わっていた。たとえ控えめなパワーであっても、トラクションが不足気味な条件では有効だった。

引き締められたサスペンションの恩恵は、高めの速度域でのロードホールディング性に表れている。スポーツプラス・モードを選択すると、エアサスペンション装備車の場合、更に車高は10mmダウン。シャープな身のこなしが一層強まる。

一方で、細かな路面の乱れも逐一ドライバーへ伝えてしまう。穏やかな気分で運転したい場合は、ノーマル・モードが良いと思う。

2021年に施されたフェイスリフトで、マカンのインテリアは最新状態になっている。センターコンソールに並んでいたボタンは、タッチセンサー式に置き換わり、モダンな見た目を得た。

アンドロイド・オートには非対応だが、アップル・カープレイは利用可能。インフォテインメント・システムは、フォルクスワーゲン・グループのなかでは操作しやすい設計といえる。

動的能力を絶妙に磨いた狙い通りの魅力

4気筒エンジンのマカンは、優れた万能選手だ。入り組んだ市街地でも困らないボディサイズに、大人4名が比較的快適に過ごせる車内空間を備え、不満のない動力性能も備えている。穏やかに運転すれば、燃費も悪くない。

そんなベストセラー・モデルのヒエラルキーを乱すことなく、動的能力を絶妙に磨いたグレードが投入された。狙い通りの魅力を、マカン Tは得ていると感じた。

マカン Sほど強い主張はなく、ノーマルのマカンからアップグレードされた事実は、日常的な運転では気付きにくい。見た目を除いて。一方で、本領を発揮できるようなルートに出れば、より訴求力のある操縦性を味わえる。

4気筒エンジンのポルシェ・マカンを検討している腕利きのドライバーなら、Tへのステップアップは検討の価値があるだろう。

ポルシェ・マカン T(欧州仕様)のスペック

英国価格:5万3970 ポンド(約863万円)
全長:4726mm
全幅:1922mm
全高:1621mm
最高速度:231km/h
0-100km/h加速:6.2秒
燃費:9.3-9.9km/L
CO2排出量:229-242g/km
車両重量:1865kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:266ps/5000-6500rpm
最大トルク:40.7kg-m/1800-4500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

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