最上級グレードが7割、3列仕様が8割
2021年12月16日に発売された三菱自動車のプラグインハイブリッドSUV「アウトランダーPHEV」に試乗することができました。世界的に見ても量産プラグインハイブリッド車の元祖的なモデルですが、結論からいえばプラグインハイブリッド車として確実に進化していました。
>>アウトランダー PHEVのおすすめグレードとユーザーの評価を見てみる
ちなみに2022年1月26日段階での受注台数は9373台、うち最上級グレードが73%を占めるというのは初期受注の傾向でしょうが、3列シート仕様が全体の83%を占めるというのは注目に値します。
初代モデルは2列シート仕様だけの設定でしたが、新型は後輪駆動モーターをインバーターと一体化したeアクスルとすることでスペースを確保、3列シート(7人乗り)を実現したことは市場から高く評価されているようです。
バッテリー容量は20kWhと、従来モデルの13.8kWhから大幅に拡大。WLTCモードで83~87kmのEV走行を可能にするなど、プラグインハイブリッドとしての魅力を高めているのも好調なスタートダッシュにつながっているのでしょう。
期待通りの高速安定性。マイパイロットの完成度も高い
試乗ステージは高速道路、市街地そしてオフロードコース。いずれもプラグインハイブリッドSUVにとっては気になるステージです。
まずは高速道路での印象。高速巡行ではエンジンでダイレクトにタイヤを駆動することも可能なハイブリッドシステムを搭載していますが、今回試乗した80~100km/hの速度域ではほぼモーターで走行していました。ポイントは、前後のモーターでバランスよく駆動することで、4WDらしいスタビリティが生み出す安心感は期待通りと言えます。
MI-PILOT(マイパイロット)と呼ばれる先進運転支援システム(ADAS)の完成度も高速走行での満足度を高めています。ミリ波レーダーと単眼カメラを併用することで緻密な制御を可能としたマイパイロットは、ステアリングのボタンひとつで簡単に起動するのも使いやすいポイントで、積極的に使いたくなるADASになっています。
電気自動車と比べてもそん色ない静粛性
高速道路、市街地走行に限らず、アウトランダーPHEVはバッテリーの充電量に応じてエンジンがかかり発電をします。30%程度の充電率から試乗を開始したのですが、ずいぶん長い時間走っても、バッテリーだけで走っているように感じていました。
さすがにおかしいと思ってインフォメーションディスプレイで確認すると、エンジンが回って発電しています。恥ずかしながら、エンジンがかかったことに気付かないほど静粛性が高かったのです。従来モデルを上回るのはもちろん、純粋な電気自動車と比べてもノイズや振動面でのネガが感じられないレベルに仕上がっているのは驚きです。
市街地ではそうした静粛性と加減速におけるスムースネスがさらに際立ちます。新型アウトランダーPHEVのボディサイズは全長4710×全幅1860×全高1745mm、試乗した「Pグレード」の車両重量は2110kgという立派なものですが、あまりにも静かに走るので、まるで超高級車のように感じます。
取り回しが悪いという意味ではなく、その“ゆったり感”が実際以上にボディを大きく感じさせるのはなんとも不思議な体験でした。もっとも燃費性能についても大きくて重いボディといったレベル(ハイブリッド走行でのWLTCモード燃費は16.2~16.6km/L)というのは弱点ではありますが。
オフロードではボディサイズを感じさせない俊敏な動き
舗装路ではゆったり感が前面に出ていたアウトランダーPHEVですが、オフロードコースに行くとイメージは完全に変わります。
前後2つの駆動モーターと四輪ブレーキの統合制御による「S-AWC」はアウトランダーPHEVの特徴ですが、新型モデルにはノーマルを含めて7種類のモードが用意されています。その中から、ダート路面に合わせた、グラベルやマッドといったアグレッシブなモードを選ぶと、ボディサイズを感じさせない俊敏な動きを見せます。
グラベルモードではアクセルコントロールで姿勢を変えることもできますし、マッドモードではタイヤを空転させて泥を弾き飛ばすといった走りも可能です。タイトなコースを攻め込んでいっても車両感覚は掴みやすく、思い通りに曲げたり、加速したりできるため、まるでボディが小さくなったように感じたのは本当に不思議な体験でした。
タイヤの潜在能力を引き出すS-AWCが秀逸
なにより驚いたのは、255/45R20というサイズの標準タイヤのままオフロードコースをアグレッシブに走れたことです。装着タイヤは高速道路や市街地では高い静粛性を見せますが、S-AWC制御がその潜在能力を引き出すことで、滑りやすい路面でも十分なグリップを感じさせるのは印象的。今回の試乗ではワインディングは試すことはできなかったのですが、舗装路でのスポーツドライビングに合わせたターマック・モードを選べば、そうしたシチュエーションでもハンドリングを楽しめることができるでしょう。
新型アウトランダーPHEVのプラットフォームはルノー・日産・三菱自動車アライアンスで共有するもので、日産がリーダーとなって開発したものですが、20インチタイヤを許容できる基本設計の要件は三菱自動車からのリクエストだし、S-AWCの持ち味などは完全に三菱自動車の味つけになっています。
まさにクロスオーバーSUVに求める多面性を走りで表現しているのが新型アウトランダーPHEVといえます。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
※写真:プロトタイプ試乗会(撮影:小林俊樹)、三菱自動車(発表時の画像)
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みんなのコメント
フルデジタルメーターじゃないしメーターに地図表示出来ず、後席専用のエアコン調整パネルもない中身RAV4のレクサスNXのハイブリッドモデルの価格で、アウトランダーはPHEV、ランエボ譲りの4輪制御のS−AWCが買えるという、高級車の価値観を変えるクルマ
トヨタをギャフンと言わせるクルマを作ったのは日産でもホンダでもなく三菱っていうのが痛快!
ただ先代乗りだがどこぞの燃費命車と違って、カタログ値はでるし、普段はEVで走るからリッター40㎞相当で走ってくれる。
ガソリン高騰でも懐は余り傷まない。
それより、常時AWDのレスポンスと走安性、静粛性でお釣りが来る。