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ミッレミリア、90年前に繰り広げられた伝説の一戦! イタリア勢を圧倒したメルセデス・ベンツ SSKLの激闘

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ミッレミリア、90年前に繰り広げられた伝説の一戦! イタリア勢を圧倒したメルセデス・ベンツ SSKLの激闘

イタリア勢 vs メルセデス・ベンツ

「世界で最も美しいレース」といわれるミッレミリア。ブレシア~ローマ~ブレシアの1000マイル(約1600km)で戦う公道レースは1927年から1957年まで毎年開催され、数々の伝説を生んだ。フェラーリやアルファロメオ、マセラティ、ランチアなどのイタリア勢に加え、ブガッティやイスパノ・スイザ、アミルカーといった多彩なマシンがこぞって速さと強さを競いあった。

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ところで、草創期のミッレミリアは第1回の勝者OM(Officine Meccaniche)を皮切りに、第2~4回はアルファロメオが3連勝と、イタリアンメーカーが圧倒的に優勢だった。その流れを止めたのがメルセデス・ベンツ。1931年、名手ルドルフ・カラツィオラの駆ったSSKLが、初めてイタリア勢から栄光の座を奪取したのである。

「完全アウェイ」の不利な状況

いまからちょうど90年前。第5回ミッレミリアは4月12日にスタートした。往路はブレシアを出発してパルマ、ボローニャへ向い、アペニン山脈を越えてフィレンツェ、シエナ、そしてローマというルート。復路はペルージャ、マチェラタを通ってアドリア海へ向い、リミニを経てボローニャ、ヴェローナ、そしてブレシアへと戻ってくる。この過酷な1000マイルに、およそ151のチームが挑もうとしていた。

土地勘があり、部品供給面でも有利なイタリアチームに対し、ドイツ製マシンにドイツ出身ドライバーが乗るメルセデス・ベンツは完全に“アウェイ”の状態だった。カラツィオラはかつてこう振り返っている。

「実際のところ、ルート上にはスペアパーツのショップがしっかり確保されていたんです。かたや、我々は節約を強いられました」

プライベートチームとしてエントリーしていたメルセデス・ベンツ勢は、ドライバーがルドルフ・カラツィオラ/ヴィルヘルム・セバスティアン組、監督にアルフレート・ノイバウアー、そしてマシンがSSKLという布陣。彼らがルート上に用意できた部品ショップは、たったの4軒だったという。

軽量化した車体に7.0リッターエンジンを搭載

ちなみに、本レースに参戦時点でのマシンの正式名称は「SSK モデル1931」。「SSKL(ドイツ語でSuper-Sport-Kurz-Leicht 、英語でsuper sports short lightの意味)」はレース後の1932年からの呼称である。高性能を誇ったSシリーズ(W06)の最後を飾る4代目モデルであり、レース出場だけを目的にわずか4台のみが作られた。ドリルでいくつもの穴を開けた薄いフレーム構造により軽量化を図り、125kgものダイエットを敢行。空荷重量は1352kgに抑え込んでいた。

搭載した6気筒エンジンの排気量は7069ccで、ルーツ製スーパーチャージャーを組み合わせることで300hpを発揮。最高速度は235km/hに達していた。

16時間の激闘の末に見た“監督のダンス”

カラツィオラ/セバスティアン組の出発は、1931年4月12日午後3時12分。道幅はどこも狭く、山道も混じり合う複雑なルートのため、カラツィオラが全速力で走ることができたのはようやくレース終盤になってからであった。カラツィオラはこう語っている。

「私は16時間運転し続け、我々は16時間イタリア中で怒鳴りっぱなし。太陽が沈めばヘッドライトの光を頼りに手探りで進み、夜明けになると目を眩ますような春の日の出を目指して走り続けた。数百のクルマの大群の中で、自分たちがどのあたりにつけているのかも、16時間ずっと分からないままでした」

激動の16時間を終え、ブレシアに戻ってきた瞬間をカラツィオラは振り返る。

「フィニッシュラインでは、アルフレート・ノイバウアーがほとんど取り乱した様子で踊りあがっていました。一体何が起こっているんだ?と、最初のうちは状況が把握できずにいたんです。でも、次第に事の次第が分かってきた。私はミッレミリアを制したのだ、と」

不景気が世界を襲った1931年

1931年は、世界経済的には決して明るい年でなかった。1929年に起きたウォール街大暴落は世界中の景気に重大な影響を及ぼしていた。むろん自動車産業も例外ではなく、ドイツの新車生産台数は1929年の13万9869台が、1年で8万8435台に急落。1931年には6万4377台まで落ち込んでいる。当時のダイムラー・ベンツAGの総売上高も、およそ半分の6880万ライヒスマルクに減少。財務状況に鑑み、1930年に役員会は「1931年モデルのレーシングカー開発計画」を中止した。ワークスドライバーのカラツィオラは、同年の欧州ヒルクライム選手権で勝利していたにも関わらず、解雇の報を受ける。

しかし、レースディレクターのアルフレート・ノイバウアーはカラツィオラとの契約をなんとか結び、ファクトリーによる最小限のサポートとSSKLの提供を取り付けた。その返礼として、カラツィオラは「1931年のシーズン中は、ダイムラー・ベンツのレースとスポーツイベントだけのために働く」ことを約束している。1931年はレースのプログラム数自体、ずいぶん乏しい状態であったものの、ダイムラー・ベンツチームは11の勝利を獲得。欧州ヒルクライムチャンピオンの座も防衛した。

「これはメルセデス・ベンツの成功である」

ルドルフ・カラツィオラは1930年代、すなわち最初のシルバー・アロー時代のスタードライバーである。1935年と1937年、そして1938年にはヨーロッパGP選手権のチャンピオンを獲得。これは1950年にスタートしたF1選手権のチャンピオンと同等のタイトルであり、スポーツ界の最高峰ともいえる栄誉であった。また、メルセデス・ベンツのマシンを駆って、欧州ヒルクライム選手権も3度制している。1901年1月30日にドイツのレマーゲンで生まれたカラツィオラは、1959年9月28日にわずか58年の生涯を閉じた。

『アルゲマイネ・アウトモビール・ツァイトゥング』誌は1931年9月号で、カラツィオラの快挙についてこう記している。

「ドイツの新聞で、ドイツの自動車産業の成功として記載されているのを目にした。失礼ながら申し上げれば、そのように一般化してしまうことは不適当に思える。これはメルセデス・ベンツの成功なのであり、ドイツの自動車産業全体の功績としてひとまとめにすべきではない。なぜなら、かようにメジャーな国際的レースに参加できる自動車ブランドは、ドイツではメルセデス・ベンツをおいて他には存在しないからである」

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