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【GSX-RRの進化 車体編】美しく絞り込まれたフレーム。“ステップ・バイ・ステップ”で屈指のコーナリングマシンに

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【GSX-RRの進化 車体編】美しく絞り込まれたフレーム。“ステップ・バイ・ステップ”で屈指のコーナリングマシンに

■GSX-RRの進化 車体編

 2020年に世界GP参戦60周年、創業100周年を迎えたスズキが、MotoGPクラスのライダーズタイトルとチームタイトルの2冠に輝いた。

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 リーマン・ショックに端を発する世界的不況の影響を受け、2011年いっぱいでMotoGP参戦を休止していたスズキ・ファクトリーが、グランプリサーカスに戻ってきたのは、2014年の最終戦、バレンシアGP。翌2015年からフルエントリーを再開し、そこからわずか6年でGSX-RRは頂点にたどり着くことになるが、他のメーカーに比べて数分の一とも囁かれる予算の中で、そこへと至る道のりは、決して平坦なものではなかっただろう。

 その道をひと言で表すならば“正常進化”。市販車のフラッグシップ、GSX-Rが一時期流行したセンターアップタイプのエキゾーストシステムを採用せず、細部を煮詰めることで性能をアップさせてきたように、開発課題をひとつずつ解決することで、トップを狙えるパフォーマンスを得てきたのだ。

 その進化の過程を、車体編、エンジン・空力編の2回に分け、成績の伸びとあわせて追ってみたい。

■カーボン製プレート接着で得た適切なフレームの剛性バランス

 直列4気筒1000ccエンジンを搭載するGSX-RRはコーナリングマシンと評されるが、スイングアーム・ピボット付近が美しく絞り込まれたデザインが特徴的なアルミ製ツインスパーフレームは、少しずつ改良が加えられてきた。

 復帰初年度の2015年に使われた、滑らかな面で構成されたフレームを中心とする車体は、2014年の最終戦でランディ・ド・プニエが駆ったマシンと基本的に同一で、レースによってトップブリッジにカーボン製のプレートを貼り付けるなどして剛性バランスの微調整を試み、ジオメトリーの最適化にも取り組んだ。

 なお、トップブリッジのカーボンプレート接着はフロントのフィーリング向上に効果が得られたようで、2016年以降、ずっと採用されている。

 2015年は、前年に量産車ベースのエンジンを搭載したCRT(クレーミング・ルール・チーム)マシンで2位表彰台に立ったアレイシ・エスパルガロ、2013年のMoto3王者、マーベリック・ビニャーレスのコンビで参戦。カタルニアGPではエスパルガロがポールポジションを獲得し、ルーキーのビニャーレスも2番手に続くなど、当初からマシンの素性の良さを感じさせた。決勝でもふたりのライダーはともに最高位6位と健闘。およそ丸3年のブランクを考えると、まずまずの成績だったといえるだろう。

 スイングアームは、2016年前半まで下側に補強が入ったような、穴が空いた逆トラス形状のものを装着していたが、シーズン後半にはその穴をふさぎ、ひとつの面で形成されるスイングアームが投入された。ちなみに穴がふさがれたのは右側のみで、左側は他メーカーと同様、チェーンラインのため、穴が設けられている。

 こちらの形状も2017年以降に踏襲されているが、スイングアームの下端にカーボン製のカバーを貼り付け、ここでも剛性コントロールを行っている様子がうかがえる。

 前傾して積まれるエンジンの搭載角度も何通りかの中から選べるようになっている模様で、そこでもマシン全体での剛性バランスや前後重量配分を調整しているようだ。  2016年は、ビニャーレスがイギリスGPで初優勝。計4回の表彰台でランキング4位。2017年は、ドゥカティから移籍したアンドレア・イアンノーネとMoto2クラスから昇格したアレックス・リンスの布陣で臨んだが、ともに1回の4位が最高位と、前年の活躍に比べ、やや物足りない結果に終わった。

 2018年、カーボン製プレート接着による剛性バランスの微調整は、メインのフレームにも施された。しなやかに路面を追従するコーナリング性能に磨きがかかり、リンスが3回の2位を含む計5回のポディウムでランキング5位。イアンノーネも計4回表彰台に立った。

 2019年には、リンスがアメリカズGPとイギリスGPで勝利を挙げ、4位とさらにランキングを上げた。

 適性な剛性バランスが見つかったのか、無骨なカーボンプレートがフレームから取り去られた2020年のGSX-RRは大躍進。参戦2年目となる2017年のMoto3チャンピオン、ジョアン・ミルがヨーロッパGPでの1勝のみながら計7回のポディウムでチャンピオンに輝き、リンスもアラゴンGPで1勝、計4回の表彰台でランキング3位の好成績を収めた。

 予算規模の大きなメーカーなら剛性を変更したフレームやスイングアームをその都度作れる訳だが、逆にコンパクトな体制が利点となり、カーボン製プレート接着を駆使しての開発など、一歩ずつ細かな調整がしやすかったという面が、もしかしたらあったのかもしれない。スズキは“ステップ・バイ・ステップ”のやり方で車体を煮詰め、頂点にたどり着いたのだ。

(エンジン・空力編に続く)

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みんなのコメント

1件
  • スズキが990cc4サイクルのMOTOGPに当初V4で挑んだのは当然の選択だった
    エンジン幅が狭い為に最高速に有利で振動が少なく耐久性や更なるパワーアップにも有利
    しかしV4のノウハウが無いスズキは少ない予算で成熟させることはできなかった
    復帰にパラ4を選んだのは長年の開発実績が有効に生かせるのと
    ヤマハの活躍によってパラ4でもタイトルが取れるのが分かったから
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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