BUGATTI DIVO / La Voiture Noire
ブガッティ ディーヴォ/ラ ヴォワチュール ノワール
モレスキン限定版にランボルギーニ仕様が登場! 「ジャケ買い」必至の名作ノートブック
数億円のクルマを完成前に購入するコーチビルディングの世界
ブガッティにおけるコーチビルディングの歴史は、いささか複雑だ。
戦前、超高級車メーカーの多くはシャシーとパワートレインを組み合わせた“ローリングシャシー”を販売。これを購入した顧客が好みのコーチビルダー(もともとはコーチ=馬車の車体メーカーのこと。後に自動車用ボディを製造するメーカーを指すようになった)にボディを発注し、ローリングシャシーと組み合わせて1台の完成車としていた。
こうしたコーチビルディングは、自動車が大量生産されるようになってモノコックボディが一般的になるとともに廃れていったが、ブガッティは一般的な自動車産業界のこうした流れよりも早く、1920年代にはコーチビルディングが少数派となっていた。その理由は明快で、創業者エットーレ・ブガッティの息子であるジャンが、自動車デザイナーとして類い希な才能を備えていたことにあった。このため多くの顧客はジャンがデザインしたブガッティを好み、結果としてブガッティはコーチビルディングよりも内製されたボディのほうが主流になるという、時代に先んじた形態を採るようになったのである。
現代ブガッティのコーチビルディングはディーヴォで蘇った
そんなブガッティにコーチビルディングの伝統が蘇ったのは2018年。いわゆるモントレー・カーウィーク中にディーヴォを発表したときのことだった。
ディーヴォはブガッティ シロンをベースにしたリミテッドエディションで、全世界で40台だけを販売。つまり、いわゆるフューオフモデル(1台だけが販売されるワンオフモデルに対して、数台ないし数十台が販売されるモデルをフューオフと呼ぶ)の一種である。当然のことながらボディは社内で生産されるので、本来の意味のコーチビルディングとは異なるが、ブガッティはこの種の「顧客との深い結びつきから生まれた少量生産モデル」のことをコーチビルディングと呼んでいるようだ。
実は、ブガッティが手がける現代のコーチビルディングは、企画から完成までの経過もわれわれがよく知るコーチビルディングとは異なっている。
コンセプトを顧客に提示し販売台数が決定してから開発に着手
ブガッティの車両開発責任者で、ワンオフ/フューオフ・プロジェクトのリーダーも務めるピエール・ローメルファンガーが説明してくれた。
「ディーヴォは2018年にモントレーでワールドプレミアを行なう前に、ブガッティのプレゼンテーションルームなど世界中の数ヵ所に顧客を招き、そこで私たちが描いたスケッチ、アニメーションビデオなどをご覧いただくとともに、目標とする性能などについてご説明しました。その後、顧客が購入契約書にサインするという流れで、モントレーで発表したときにはすでに40台が完売していました」
つまり、ブガッティのコーチビルディングは、まずブガッティ自身がニューモデルを企画・立案し、そのコンセプトを顧客に提示。そして規定の販売台数に達したところでワールドプレミアを行ない、開発と生産を行なうという流れになるらしい。
開発期間は約2年、重要なのは“ストーリー”
「ただし、顧客は契約の段階ではプロトタイプの写真を撮影することも許されません。すべては信頼関係にのっとって契約を行ない、開発、製造、納車と進んでいくのです」。ローメルファンガーはそう付け加えたが、ディーヴォであれば6億円を超すクルマを試乗さえせずにオーダーするというのだから、なんとも肝っ玉のすわった話ではある。
では、買い手がすべて決まり、ワールドプレミアも済ませたワンオフ/フューオフのモデルはどのような手順で開発され、最終的に納車されるのか。引き続きローメルファンガーが説明してくれた。
「一般的にいってワンオフ/フューオフのモデルを開発するには2年間を要します。最初の半年間はフィジビリティ・スタディに費やします。どんなコンセプトのクルマで、どんな特色を盛り込むのか。その際、重要になるのがクルマのストーリーです」
「ワンオフモデルもしくはフューオフモデルには、必ず興味深いストーリーがあります。たとえばディーヴォに続くコーチビルディングの第2弾であるチェントディエチ(イタリア語で110の意味)の場合は、1990年代のイタリア・カンポガリアーノ時代に作られたブガッティEB110を、ブガッティ全体のブランドの歴史に融合させるために誕生しました。その意味で、単なる110周年記念モデルとは異なっているといえるでしょう」
コンピューターによるシミュレーションを重ねて開発をスタート
フィジビリスタディにより車両のコンセプトや仕様が決定すると、いよいよ開発が始まる。「ここではコンピューター・シミュレーションが多用されます」とローメルファンガー。
「安全性、エアロダイナミクス、剛性などを中心にシミュレーションしていきます。これと並行して車両の設計も行ないます。基本的にはこれもコンピューター上で行ないますが、カーボンファイバー製パーツに関していえば、その製造に必要な治具も開発していきます。さらに、できあがったパーツを使ってプロトタイプの組み立ても行います。こういった作業を並行して進めることで、完成までの時間を短縮しているのです」
こうしてプロジェクトの開始から12ヵ月が経た頃にはプロトタイプが完成。いよいよテストが始まる。「最初に行なうのは風洞実験です。ここで実車の空力性能を測定し、コンピューター・シミュレーションとの間にズレがないかどうかを確認します」。 まずエアロダイナミクスから手をつけて計測するあたり、最高速度が380km/hを超えるブガッティらしい開発手順といえるだろう。
立ちふさがる数々の難関を突破してデリバリーに至るハイパースポーツ
「また、現代のブガッティはいずれも大量の熱を発するW16エンジンをリヤに搭載しているので、温度管理が設計どおりにできているかどうかを確認するのも重要な工程です。これらが終わるとハンドリングテスト、さらに信頼性や耐久性のテストを行ないます。ディーヴォの場合はコーナリング性能が特に重要なので、ハンドリングテストは入念に行ないました」
そして開発はいよいよ最終ステップを迎えることになる。「最後の半年間は生産に向けた準備、そして実際の生産を行ないます。プロトタイプを製作する段階で用いた治具などは、その後の経験を踏まえて微調整することもあります。また、各国のホモロゲーションを取得する作業も並行して行われます」
「通常、最初の1台目を製作するには少し余分に時間がかかります。ディーヴォの場合でいえば、昨年、最初の1台を顧客にデリバリーしました。そして、ここに完成したのが最後の1台で、ようやく納車の準備が整ったところです」
自動車史史上、最大のミステリーとされるタイプ35をオマージュ
今回、この「40台目のディーヴォ」とともにお披露目されたのが製品版のラ ヴォワチュール ノワールである。
英語に直せばThe Black Carとなるラ ヴォワチュール ノワールは、もともと1930年代にたった4台だけが製作されたタイプ57 SC“アトランティーク”のうちの、ある特別な1台を指している。
これは4台中2番目に生産されたアトランティークで、車両をデザインしたジャン・ブガッティ自身が愛用していたもの。ところが、ブガッティ本社があるフランス・アルザスのモルスハイムに向けてドイツ軍が侵攻を開始したとき、ラ ヴォワチュール ノワールをより安全な土地に移送している最中に、こつ然として姿を消してしまう。そしてラ ヴォワチュール ノワールの行方はいまもわかっておらず、自動車史史上、最大のミステリーとされているのである。
40台目のディーヴォとたった1台のラ ヴォワチュール ノワールをデリバリー
2019年のジュネーブショーで発表された“現代の”ラ ヴォワチュール ノワールはやはりシロン・ベースのコーチビルディングだが、その販売台数はたったの1台。ボディがブラックでペイントされているのはもちろんのこと、アトランティークの特徴でもあるボディの中央線もはっきりと再現されている。
これはもともと、オリジナルのアトランティークがマグネシウム系合金のエレクトロンでボディパネルが作られていたため、これを溶接することができずにリベット留めした名残り。実は、製品版のオリジナル・アトランティークはボディがアルミ製だったため、必ずしもリベット留めする必要はなかったのだが、現代のラ ヴォワチュール ノワールにもオリジナルに敬意を払って同様のデザインが継承されたという。
そのほか、ウインドウシールドの上部がV字状をなしていることや、エキゾースト系のテールパイプがオリジナルと同じ6本となっていることもラ ヴォワチュール ノワールの特徴。さらには、もともとグランドツアラーとして作られたオリジナルのコンセプトに基づき、シロンよりもホイールベースを長く設定しているのもこだわりのポイントだ。
ラ ヴォワチュール ノワールの販売価格は制抜きで1100万ユーロ!
前述のとおり、40台が販売されるディーヴォの価格は約6億円、10台が販売されるチェントディエチは約10億円とされる。一方、たった1台だけが販売されるラ ヴォワチュール ノワールの価格は税抜きで1100万ユーロ(約14億円!)と公表されている。
そのオーナーは非公表だが、巷では、元フォルクスワーゲン・グループ会長のフェルディナント・ピエヒ(故人)ではないかとか、現存する3台のアトランティークのうちの1台を所有するラルフ・ローレンではないかと噂されている。
いずれにせよ、80年前のオリジナル同様、現代のラ ヴォワチュール ノワールもまたミステリアスな存在であることは間違いなさそうだ。
REPORT/大谷達也(Tatsuya OTANI)
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みんなのコメント
デザインフェチで、そのフォルムを眺め我ながらスーパーカー以上だと絶賛する
色違いで揃えても良いレベルだが一台で済ます
流行りのミニマリストでもない
形や空間に魅了されまくるシンドロームだ
そんな男を女は評価しない
恋はプライスフルなのだ