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ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 後編

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ゼロヨン加速はフェラーリ348t超え GMCサイクロンとタイフーン 世界最速トラック 後編

まったくホイールスピンせずに突進

今回ご登場願ったブラックのGMCサイクロンは、英国に住むマーカス・ホーカー氏がオーナー。現在まで12年間も維持しているという。北米のフロリダ州で販売され、グレートブリテン島へやってきた。この土地には、10台しか存在しないらしい。

【画像】ゼロヨンはフェラーリ348t超え サイクロンとタイフーン 同時期のC4コルベット 最新の高性能ピックアップも 全118枚

走行距離は約6万5000km。ターボを大径化し、ガソリン・インジェクターの容量を増やし、メタノール・インジェクターを追加し、サスペンションは社外品へ交換されている。ブッシュ類はポリウレタン製へ置換してある。だが、見た目はほぼノーマルだ。

欧州車に見慣れた筆者の感覚で表現しても、サイクロンは意外なほどコンパクト。ピックアップトラックへ馴染みが薄い人でも、プロポーションが優れていると感じるだろう。

ドアを開くと、大きな2スポークのレザー巻きステアリングホイールが迎えてくれる。着座位置はかなり高めだ。

ダッシュボードには、時速120マイル(約193km/h)まで振られたスピードメーターと、4800rpmからイエローゾーンになるタコメーターの並ぶメーターパネルが鎮座。残りの燃料のほか、油温と水温もわかる。実際の最高速度は、199km/hまで出せる。

V6ターボエンジンを目覚めさせると、V8エンジンよりドライでシャープなノイズを誇らしげに撒き散らし出す。4速ATのシフトレバーを傾けドライブを選択。ストロークの長いアクセルペダルを踏み込むと、まったくホイールスピンせずに突進を始める。

ディーゼルターボのように頼もしいトルク

テールを沈ませながら、48.3kg-mの最大トルクを無駄なく路面へ伝える。V6エンジンの咆哮を響かせつつ、変速のたびにウェイストゲート・バルブのホイッスルを奏で、ひたすらスピードを増していく。

100km/h前後までは、顔がニヤけるほど速い。アメリカの大手自動車メーカーによる量産車というより、有能なチューニングガレージが手を加えたような、粗削り感も漂う。

トルクはターボディーゼルのように頼もしい。スポーツカーとも異なる。滑らかな路面でも、ワダチのような路面の傾きの存在がステアリングホイールへ明確に伝わる。ステアリングレシオは驚くほどスロー。切り始めの反応も曖昧だ。

少なくとも、グリップ力は充分。荒れたグレートブリテン島のアスファルトでも、構わず突き進める。

シャシーはボディと別体のセパレート構造だから、動的能力は決して高くない。だが、サイクロンの怒涛の加速力は、GMCのマーケティングに大きく貢献した。ポルシェやフェラーリと伍するという事実だけで、自動車メディアの表紙を飾れた。

サイクロンが生産されたのは、1991年の1年限り。最大積載量はピックアップトラックとしては充分ではない226kgに制限され、オフロード走行には明らかに向いていなかったが、2995台という台数が売れた。

しかしGMCは、開発コストからより多くの利益を求めた。そこで1992年に2台目となるカラハリの量産仕様、タイフーンが提供される。

0-97km/h加速は5.3秒 広く豪華なレザー内装

タイフーンは、シボレー・ブレイザーの兄弟モデル、GMCジミーがベース。Bピラーより前のボディはサイクロンと同一で、4.3L V6ターボエンジンや四輪駆動のパワートレインも共有していた。

特徴といえたのが、広く豪華なレザー内装。大人4名がゆったり乗れるワゴンボディをまとい、車重は1632kgから1734kgへ増えながらも、0-97km/h加速は5.3秒と不満ない俊足を発揮した。

全長は4674mmで、サイクロンの4585mmから伸ばされていたが、ホイールベースは2552mmと約200mmも短縮。より敏捷な身のこなしを実現していた。

さらに、リアの車高を水平に維持する機能を備え、最大積載量は408kg。ピックアップトラックのサイクロンの倍近い荷物を運べ、実用性は増しており、最終的に1992年から1993年までに4697台が生産されている。

今日、ホワイトのサイクロンを持ち込んでいただいたのは、タイフーンと同じマーカス・ホーカー氏。新車時に日本で販売された車両で、フェンダーにはウインカーが追加されている。

インテリアでは、ステアリングホイールが4スポークであることが、タイフーンとの違い。ドアミラーの角度調整が手元でできるようになっているが、それ以外は基本的に変わらない。

フロントシートは、あと10cmほど後方へスライドできると、身長190cm近い筆者にとっては快適だろう。2ドアだから、リアシートへは体を屈めて出入りする。両側に大きめの小物入れが設えられ、ベンチシートながら定員は4名となる。

熱とトルクがエンジンマウントへ与える負荷

サイクロンからタイフーンへ乗り換えると、増えたボディの大きさへ真っ先に気づく。加速力はチューニングカー的に鋭いものの、背筋がゾクゾクする印象は小さい。内装が上質に仕立てられているためか、聴覚的なドラマチックさも小さい。

今回のタイフーンの場合、速度域に関わらずエンジンから明確な振動が車内へ響く。ゴム製のエンジンマウントが短期間で完全に潰れたため、今後の整備も考え、V6エンジンをシャシーへダイレクトに載せるという手段をマーカスが選んだためだ。

ターボが発する大量の熱と、増大したトルクが生むストレスが、マウントへ過大な負荷を与えると彼は考えている。外注先のプロダクション・オートモーティブ・サービシーズ(PAS)社によって、低予算・短期間に仕上げられた事実が影響しているのだろう。

確かに、シャシーのチューニングはパワートレインと比べて充分ではなく、弱点といえる部分が含まれている。しかし、サイクロンとタイフーンの2台が誕生したことを、筆者は改めて高く評価したい。

GMという大企業が、薄利でも過激なモデルを生み出そうと20世紀末に挑戦した事実が、何より素晴らしい。そして外部の力を借りて完成した2台は、今でもわれわれの気持ちを刺激してくれるのだから。

協力:マーカス・ホーカー氏、マーク・エドワーズ氏

GMCサイクロンとタイフーン 2台のスペック

GMCサイクロン(1991年/北米仕様)

北米価格:2万5970ドル(新車時)/2万5000ポンド(約437万円)以下(現在)
販売台数:2995台
全長:4585mm
全幅:1646mm
全高:1557mm
最高速度:199km/h
0-97km/h加速:4.6秒
燃費:5.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1632kg
パワートレイン:V型6気筒4300ccターボチャージャーOHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:284ps/4200rpm
最大トルク:48.3g-m/3600rpm
ギアボックス:4速オートマティック/四輪駆動

GMCタイフーン(1992~1993年/北米仕様)

北米価格:2万9530ドル(新車時)/1万8000ポンド(約315万円)以下(現在)
販売台数:4697台
全長:4674mm
全幅:1646mm
全高:1524mm
最高速度:202km/h
0-97km/h加速:5.3秒
燃費:5.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1734kg
パワートレイン:V型6気筒4300ccターボチャージャーOHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:284ps/4200rpm
最大トルク:48.3g-m/3600rpm
ギアボックス:4速オートマティック/四輪駆動

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みんなのコメント

3件
  • 全幅が意外にも大きくないんだな
  • >オフロード走行には明らかに向いていなかったが、2995台という台数が売れた。

    というより転倒するからオフロード走行禁止ってメーカーが取説に書いてた車でしょ?
    その逸話も含めて伝説の1台なはずやが
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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