もくじ
ー ブランド復活 そのまえに
ー 価格高騰中の今こそ狙い目?
ー ヒーレー・ブランド復活の課題
ー ルイス・ブースの見解:むずかしい
AUTOCARが選ぶ、ダメだけど愛してしまう18台のクルマたち 後編
ブランド復活 そのまえに
クルマの未来へと続くハイウェイの路肩にはこれまでに打ち捨てられたブランドが倒れ折り重なっている。この中で救いだすに値するものはあるだろうか?
4人の本誌レギュラー陣がそれぞれひとつのブランドを選んでその復活への道筋を語り、フォードの前副社長であるルイス・ブースが評価する。
生粋のカーガイであり、自動車業界におけるその功績により大英帝国勲章を受章したルイス・ブースはブリティッシュ・レイランド社でそのキャリアをスタートさせると、1978年にはフォードに移り、その後トップの地位にまで上り詰めた。
マツダ、欧州フォードとPAG(プレミア・オートモーティブ・グループ)の舵取りを担ったあと、2008年にはフォードのCFOに任命されたが、まさにこの時、ライバルであるGMとクライスラーが破産宣告を余儀なくされるなか、彼はフォードを同じ破滅への道から救いだす事に成功したのだ。
彼こそが「ワン・フォード」復活計画の要であり、ジャガー・ランドローバーのタタへの売却と、ボルボのジーリーへの売却を主導した人物だ。
こんにち、彼はロールス・ロイス・パワーシステムズと、その他ふたつの米国企業の取締役を務めているが、以前と変わらぬ情熱を持って自動車業界の行く末を見つめている。
失われたカーブランドに対するわれわれの仮定だらけの、そして恐らくは生煮えの復興計画を評価するのに、彼以上の適任者などいるだろうか?
まず議論の的となるのは、オースチン・ヒーレーだ。
価格高騰中の今こそ狙い目?
オースチン・ヒーレーの復活は目新しいアイデアではない。長年にわたり何度も計画されては、たいてい誰がこのブランドネームを所有するかの議論の末、計画そのものがとん挫してきた。
ドナルド・ヒーレーの家族が所有権を主張したこともあったし、わたし自身、ブランドの所有権を主張する複数のひとびとに会ったことがある。
ブランド所有権の問題さえ解決すれば、まさに今こそが新しい技術でヒーレー・ブランドのロードスター・モデルを作りだすに相応しいタイミングだ。
その場合、動力源はレンジエクステンダー付EVとして、更には大型パネルの使用量を減らすために、最新のアルミフレーム技術を使ったシャシーを採用するべきだろう。
では何故このタイミングなんだろうか?
それはオリジナル・ヒーレーの価格が非常に高騰しており、状態の良い6気筒モデルで8万ポンド(1228万円)以上の値を付けていることを踏まえれば、より新しくて優れたエンジニアリングを施されたヒーレー、つまりは、適切な乗降部とキャビン・スペース、現代的なエアロダイナミクスにステアリングとサスペンション、更にはクラッシックなレタリングで飾られたガラスのダッシュボードと、上手く新旧を融合させたデザインを持つロードスター・モデルならば6万ポンド(921万円)ほどの値を付けても問題ないだろうからだ。
鼻先にガソリン仕様のレンジエクステンダー用エンジンを積み、トランク下に設置されたディファレンシャルと駆動モーターを搭載した電動リア・アクスルを持つレイアウトが理想的だ。
双方の技術とも既にジーリー傘下のロンドン・エレクトリック・ビークル・カンパニー(LEVC)製新型TXタクシーに採用されており、ロータス・エリーゼ同様、接着した複合材パネルをアルミ押出し成型フレームが支えている。
LEVCではこの計画を実現するために元ロータスの構造専門家たちとそのノウハウを投入している。そしてジーリーはプロトン買収を通じて今やロータスも所有しており、ヘーゼルから助力を得ることもできるだろう。
もちろん、乗り越えなければならない課題もある。
ヒーレー・ブランド復活の課題
完全に新しいアルミニウム製ロードスター用シャシー(極端に低く、ロングノーズ&ショートデッキ)の設計が必要であり、バッテリーをこのクルマに低く搭載する方法も探さなければならない。
われわれの新型ヒーレーでは、タクシーのようにフロア下にバッテリーを搭載する事ができず、このままでドライバーのヒップポイントが理想より60-70mmほども高くなってしまうため、センター・トンネルには高さが必要となるだろう。
さらにはエンジンを縦に積む必要があり(TXタクシーの横置きではダメなのだ)、美しいエンジンルームに相応しい電気ボックスの設計も必要だ。
最も重要なことは、ホンダが最新のコンセプト・モデルで見せた、新旧を上手く融合したような、現代的でありながらクラシックさも併せ持つデザインをそのボディに与える事である。動力性能? 予想では最高速度は177km/h、0-97km/h加速は7秒程度になるだろう。
生産台数はTVR程度を想定している。つまりは年産1000台から1500台程度だが、LEVCの工場を活用することで採算も確保できるはずだ。
是非このアイデアをジーリーのCEOに気に入ってもらいたいと思っている。彼は既に有名英国ブランドを所有する意欲を見せているからだ。
彼が連絡さえしてくれれば、われわれのジーリー-ヒーレー3000を2020年のLAモーターショーまでに発売するためのジョイント・ベンチャーの設立を急ぐことになるだろう。ちょっと待て、さっきの電話がそうだったのだろうか?
ルイス・ブースの見解:むずかしい
タクシー用プラットフォームにエンジンを縦置きにして競争力のあるスポーツカーが作り出せるだろうか。さらには販売チャンネルと採算性の問題もある。
正直言って見込みのない提案だ。
有望な購入層はヒーレーのことを大型の怪力モデルとして記憶しているだろうから、デザインでブランドへの尊敬を表すだけでなく、中身もそれに見合ったものにする必要がある。
電動化されたヒーレーがブランドの価値を保てるとは思わない。
オタク向けアピール度:8/10
顧客向けアピール度:3/10
ビジネスプラン:2/10
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