一台のクルマには、縁あってオーナーになった人との歴史や思い出があり、物語になるほどのエピソードが生まれることもある。
そんなクルマと人との関わりを、オーナーさんに直接取材して、リアルな生の声を紹介していきたいと思います。はたして、どんな生の声が聞けるのでしょうか?
新型アウトランダーPHEV今冬発売と三菱が発表 なんと純ガソリン仕様は生産終了!!
購入した動機から、愛車に対するこだわりのポイント、年間の維持費、故障箇所、愛車の主治医まで、これからそのクルマを購入しようと思っている人にも役に立つ情報満載でお届けします。
文・写真/松村透
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■27歳の時に購入した三菱GTOと30年7ヵ月乗り続ける思いとは
「今のクルマは一生乗る!」と心に決めて手に入れたはずなのに、いつの間にか熱が冷め、数年後には乗り換え…というケースも少なくありません。
その一方で、「ずっと乗り続ける」ことを当たり前のように実践し、気づけば約30年・56万kmをともに歩むことに……。
三菱GTOという、一生モノの愛車との出会いを20代のときに果たし、現在も実践中のオーナーさんを直撃しました。
オーナーの安藤 一弘さん。愛車である1991年式三菱 GTO ツインターボとは30年と7ヵ月の付き合い。それにしても時が止まったように綺麗なボディだ
■プロフィール&愛車紹介
・お名前(HNも可):安藤 一弘さん
・ご年齢:57歳
・ご職業:会社員
・所有しているクルマ(年式、グレード名):1991年式三菱 GTO ツインターボ
・購入時期:1991年1月(27歳)
・所有年数;30年と7ヵ月(新車)
・購入時の走行距離:0km
・現在の走行距離:約55.7万km
・購入時の金額:398.5万円
取材に合わせて三菱3000GTのTシャツを身に纏い、大切なGTOのダイキャストモデルもご持参くださった。GTOへの溢れる程の愛情が伝わってくる
■愛車であるGTOを手に入れようと思ったきっかけを教えてください
1989年に開催された第28回東京モーターショーの三菱ブースに展示されていた「HSX」を観てひと目惚れしたのがきっかけです。実は友人から誘われて「まぁ、暇だし」くらいのノリで行ったんですが、まさかこんなことになるとは(笑)。
この年の東京モーターショーは、後にビンテージイヤーと呼ばれるほど今でも人気のあるクルマが数多くデビューしましたが、私が目に留まったはHSXだけでしたね。「日本車のデザインもいよいよここまで来たか!」と思いましたから。
その日以来「市販されたら絶対に乗りたい!」と思い続け、毎日のようにHSXのパンフレットを眺めつつ、無駄遣いをやめて必死に貯金しましたよ。
そして、念願がかなったのは発売から数ヵ月経った1991年1月でした。
GTOのカタログはもちろんのこと、当時のDMもファイリングされ、大切に保管している安藤さん。日本車にとっての黄金期を今に伝える貴重な資料だ
■愛車との濃いエピソードを教えてください
ここ十数年、寒立馬(かんだちめ。青森県下北郡東通村尻屋崎周辺に放牧されている馬のこと)を眺めることにハマっております。
以前は往復1650kmの距離を日帰りで移動したこともありましたが、最近は、体力的に日帰りは難しくなってきたので、途中で何度か仮眠を挟むようにしています。
金曜日の夜に自宅を経ち、ある程度のところまで走ったところで仮眠。現地に到着するのは翌朝です。その後、午後まで現地で過ごしてから仮眠を挟みつつ、日曜日の朝に帰宅というサイクルになりました。ロングドライブから帰宅した後の洗車は欠かせません。
青森県尻屋崎周辺に放牧されている馬たち。安藤さんオリジナルのカレンダーも製作するほど魅了されているようです
移動中、音楽(1970年代~80年代の歌謡曲・ポップスが中心)を聴くこともあるのですが、エンジン音を楽しみたい時もありますし、このあたりはその時の気分ですね。
ちなみに、高速道路巡航中はクルーズコントロールを使いません。そういえば、これまで1度も使ったことないかも……。
フロントバンパーやサイドのインテーク部分には「勲章の傷」が。もともと重量級のクルマの為、熱による影響やチッピングによる影響は避けられない
■愛車に対するこだわりを教えてください
純正のスタイリングをできるだけ崩さないことです。ちなみに、外観はヨーロッパ仕様、内装は北米仕様となっています。もともとのデザインが好きなので、あまり社外品の部品を取り付けたくないんです。
オリジナルのスタイルを崩すことなく、ヨーロッパ仕様の外観でまとめられた安藤さんのGTO横置きエンジンモデルながら、ロングノーズで全体のバランスが良いフォルムである事に気づく
■大まかな年間の維持費を教えてください(自動車税、オイル関係、ガソリン代などを含めた概算)
・自動車税:5万8600円
・エンジンオイル・フィルター・添加剤は2500kmに交換で約18万円(12回)
・ミッション・トランスファー・デフオイルは1万kmごとで約3万1000円(3回)
・任意保険:3万9570円
・ガソリン代:55万円以上
・高速代:30万3910円
・タイヤ代;約15万円(3万kmごと)
手に入れてから30年経過したとは思えないほど手入れが行き届いているエンジンルーム。赤い吸排気系のパイピングと、青い電装系コードのコントラストが非常に美しい!!
昨年は例年よりも6000~10000km多く走ったので、130万円くらい使いました。車検は2年ごとで前回は約15万円、それ以外に何らかのメンテナンスを要するので、2ケタ万円の修理代がかかります。
メーターは交換されており、実際の走行距離は56万kmに迫る。スピードメーターは280kmのフルスケール仕様だ
■失礼ながら、これまで大小の故障はありましたか
・トランスミッション:1回目は1速入らず、2回目はオイル漏れ
・オイルクーラーホース
・P/Sレギュレーター
・ドライブシャフトブーツ
・ウォーターランプゲージユニット
・燃料フィルターホース
・P/Sタンク&ホース
・ECU交換他多数…
ちなみに、現時点でエンジンは2基目、ミッションが3基目、クラッチが4回目。近々、クラッチを交換予定です。10年前に同じ色にオールペンしました。
毎日通勤でも使っています。暖機は夏は3分、冬は5分くらいやっている。水温が上がるぐらいまでやるように心掛けています。
今となってはこれ自体が貴重といえるパーツカタログも保有
■純正部品の入手に苦労していますか?(欠品・製造廃止している部品などご存知でしたら教えてください)
・前期型クランクシャフトプーリー(後期型はまだ入手可能)
・トランスミッション
・トランスファー
・エンジン ターボチャージャー
・ドアウィンドウガラス
・インタークーラー(R)
・エアコンコントローラー
・リアエアスポイラーのモーター
・ECU
・モーターやリレーなど多数
これまでの点検・修理などの明細。これですべてではなく、ごく一部である。やはり30年間維持されてきた重みと安藤さんの愛情の深さをしみじみと感じる
■愛車の主治医のどのようなお店ですか?(ディーラー or 専門店等)
長年お世話になっているメカニックさんがいる三菱ディーラーか、数十年通っているカーショップです。
取材当日は小雨模様。「雨の日も通勤で使っているから大丈夫!」と、快く取材に応じてくださった安藤さん。入念に整備されているからこそ自信をもってそうおっしゃられるのだ
■これからも乗り続けるご予定ですか?
「いろいろな意味で乗れなくなるまでずっと!!」と思っています。
●30年乗ってきてちょっと他のクルマに浮気しようと思ったことは…?
ありません。実用性があり、天候を気にすることなく走れます。長距離移動の合間に仮眠するので、2シーターだと厳しいんです。運転そのものが楽しいので、ストレスを感じることがほとんどありません。
●これまで、いくつかの故障も経験されていらっしゃいます。もういいやと思ったこともありませんか?
それもありません。もし「もういいや」と思うことがあるとすれば、ありとあらゆる部品が手に入らなくなったり、壊れた箇所がどうしても直せない…というできごとが起きた時くらいだと思います。
30年間、他のクルマに浮気したり、乗り換えようと思ったことは1度もないと語る安藤さん
■未来のオーナーのために購入時のチェックポイントや愛車のウィークポイントを教えてください
下
回りの状態は特に注意が必要です(4WDのため雪国で乗られていた個体も多く、錆でネジがまわらない、穴があいている場合もあるようです)。
また前期型は30年、後期型でも20年以上も前のクルマなので、あちこち壊れても部品あありません。これを大前提に、それなりの覚悟と心構えで手に入れてください。
リトラクタブルヘッドライトを格納した姿も画になります
●憧れで買ってもトラブルですぐ降りちゃう人もいらっしゃるとか…
さまざまな事情がおありになると思いますが「一生乗ります」「ずっと乗ります」とおっしゃった方が割と短期間で手放してしまったり……。思っていた以上にトラブルに泣かされたり、手に入れることが目標というかゴールになっていたのかもしれません。
●では、なぜ安藤さんは30年以上も維持できているのですか?
単純にこのGTOが好きなのと、通勤でも使いますし、壊れたら直すのが当たり前という感覚ですね(笑)。周囲からは「それだけ修理代かかっていたら何台か買えるよね」といわれたりしますが、自分としてはそんなふうに考えたことがないんです。でもやはり「乗りたい」という気持ちが一番強いですね。
ツインターボモデルはリアスポイラーが可動するため、特徴的なデザインに
■あなたにとって愛車はどんな存在ですか?
良き相棒です! もはや身体の一部のような感覚です。車検の時など、ディーラーに預けて代車で通勤することになるわけですが、(お借りしていて申し訳ないのですが)テンションが下がります。
綺麗な状態を維持しつつ、使い込まれたステアリングの革の痛み具合に年輪を感じさせる。SRSエアバッグやステアリングスイッチ装備されるオリジナル版の入手は困難か
■取材後記
数々の名車が誕生した1989年に開催された第28回東京モーターショーに行ったことが、安藤さんにとって人生の転機だったかもしれません。20代半ばのタイミングで手に入れたGTO。
気づけば約30年・55万kmをともに過ごし、現時点でエンジンは2基目、ミッションが3基目、クラッチが4回目とのこと。まさしく「一生モノ」の愛車であることは間違いありません。
今後、純正部品の確保という難題がありますが、安藤さんは熱意でクリアしていくのだと思います。
最近、見かける機会が減りつつあるGTO。これまで発売されたGTO関連のミニカーも大切なコレクションとのこと
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みんなのコメント
多少の燃費の悪さを考慮してもカーボンニュートラルを考えるなら長く乗ることの方がよっぽど効果が高い
ね。