モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは1983年~1984年に全日本耐久選手権などを戦ったグループCカーの『ニッサン・フェアレディZターボC(ルマンLM03C)』です。
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『ニッサンR87E』“切り札”グループC専用エンジンの導入も不発【忘れがたき銘車たち】
1982年、FIAによるカテゴリー再編によってスポーツカーレースの主流となったグループC。
グループCカーによるレースは同年から世界選手権が始まっていたのだが、その流れは日本にも到来する。
1982年に世界選手権の1戦として富士スピードウェイを舞台にWEC JAPANが初開催されると、翌1983年にはグループCカーが主力の全日本耐久選手権がスタートした。
これを受けてニッサンは、1983年からグループCカーレースへの参入を決定する。
ただ、ニッサンワークスとしてシャシーとエンジンを開発して参戦するのではなく、星野一義率いるホシノレーシング、長谷見昌弘率いるハセミモータースポーツ、柳田春人率いるセントラル20という、有力ニッサン系チームに資金およびグループ5レースで使っていたLZ20Bという2.0リッター直4ターボエンジンを供給。
LZ20Bを搭載するシャシーの選択とレース運営は、各ユーザーに委ねるという形式での参加となった。
このとき、ホシノレーシングはイギリスのマーチエンジニアリングが製作したマーチ83G、ハセミモータースポーツは東京R&Dとニッサンの車両実験部が開発したスカイラインのグループ5マシン(日本のスーパーシルエットレースに参戦した車両とは異なる)をグループCカーに改造したスカイラインターボCを選択したのだが、そのうちセントラル20が選んだのがルマンLM03Cというシャシーだった。
LM03Cとは、ルマン商会による初の本格自社開発グループCカーで、望月一男と望月広光という前述のスカイラインターボCを東京R&Dで手がけたふたりが設計を担当した。
アルミ合金製のモノコックと鋼管サブフレームを備えるシャシーにニッサンの研究所の風洞を使った実験の末、デザインされたFRP製のカウルを被せた車両だった。
1983年からレースに参戦したニッサン系のCカーたちは、プロモーション上の理由により、スカイラインターボCやシルビアターボC(ホシノレーシングのマーチ83G)など、ニッサンのスポーティカーを名乗ったマシン名になっていた。
そのため“Zの柳田”と呼ばれた柳田春人のセントラル20が走らせたLM03Cも、フェアレディZターボCというマシン名(マシン名の表記は多数種類あり)で参戦。その名前だけでなく、車両自体もテールランプがZ31型のフェアレディZのものになったり、ヘッドランプまわりもZ31をイメージしたデザインになっていた。
フェアレディZターボCは、1983年の全日本耐久選手権開幕戦にはマシンが間に合わず不参加となったが、富士ロングディスタンスシリーズの1戦であった全日本富士1000kmレースでデビューを果たす。
しかし、そのレースではわずか6周でエンジントラブルによりリタイアを喫してしまう。
その後も2度目の開催となったWEC JAPANでは2度のクラッシュに見舞われたうえ、規定周回以前にオイルを補給したとして失格に。1983年最後のレースとなった全日本富士500マイルでは初完走を果たすも10位と苦戦続きとなった。
翌1984年、ルマン商会はLM03Cをベースに弱点などを改良したLM04Cを開発。
ハセミモータースポーツやチームルマンがパナスポーツの名義でこの車両を走らせたが、セントラル20は、LM03Cの改良版で前年同様フェアレディZを名乗ってレースを続けた。
すると1984年の2戦目のレースだった富士ロングディスタンスシリーズの開幕戦、全日本富士500kmでは3位表彰台を獲得。わずかに希望の光が差したかに見えたが、それ以外のレースでの成績は振るわなかった。
そして1985年、セントラル20はニッサンがエレクトラモーティブから新エンジンのVG30を手に入れると同時に購入することになったローラのシャシーを使用することになり、LM03Cは役目を終えることになった。
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