■自動車大国・日本の新車販売事情とは
日本の基幹産業といわれる自動車業界は、同時に世界有数の自動車市場でもあります。自動車メーカーも多く存在し、北米や欧州、中国などグローバルに展開するほどの大きな分野です。
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しかし、お膝元といえる日本市場では年々新車販売台数(登録車)が減少傾向にあります。一方で、軽自動車の台数は、いまや全体の36%から38%程度と増加傾向にあり、登録車の新型モデルが売れにくくなっています。
なぜ、自動車大国の日本でこのような現象が起きているのでしょうか。
2018年度の新車販売台数では、各社それぞれの販売実績がみてとれます。トヨタは、登録車において、「アクア」が12万7899台(前年比99.2%)、プリウスは11万5123台(77.2%)という数字です。軽自動車においては、「ピクシス」が2万5307台(108.4%)となり、主力モデルのプリウスにおいては31万7657台(2012年)に比べて、大きく台数を下げています。
しかし、世界の新車市場では販売台数を伸ばしており、2018年の1年間では「RAV4」が42万7168台(104.8%)という記録を残したうえ、日本でも受注開始から1ヶ月で目標の8倍となる2万4000台と好調です。
また、軽自動車のホンダ「N-BOX」は、2018年度の新車販売台数において23万9706(107.3%)となり、日本市場で1番売れているクルマですが、肝心の登録車のなかで売れている「フィット」が8万5925台(86.2%)、「フリード」は8万3670台(87.6%)と10万台に届いていません。
しかし、トヨタ同様に米国(2018年1月から12月)では「CR-V」が37万9013台(100.3%)と、日本に比べ海外では売れているのです。
現在の日本市場で販売台数が減少している理由について、大手自動車メーカーのスタッフは次のように話します。
「日本での新車台数が減少しているのにはいくつかの理由が存在します。まずは、昔に比べて車体本体の金額が上がっていることです。これは、近年当たり前のように装備されている先進安全技術や運転支援技術といった機能やクルマ自体の安全性向上によって、総合的にコストが高騰しているためです。
もうひとつは、クルマの巨大化にあると考えます。さまざまな安全装備を備えつつ、室内空間を保つとなると必然とクルマのサイズは大きくなります。
また、グローバル戦略で考えたときに世界の道路事情をクルマに当てはめると余裕のあるサイズが求められます。これらの要素が複雑に関係して、極端にいえば『日本でクルマが売れない=日本向けのクルマが作れない』という図式ができ、グローバル展開するモデルを日本で販売するのです。
そこに、各社が力を入れている軽自動車が現れるとそっちに流れてしまい、さらなる悪循環を生むのです」
■海外で元気な国産自動車メーカー
トヨタやホンダ以外の国産自動車メーカーでも、ほとんどが海外で販売台数を伸ばしています。
日産は、日本でも登録車において、「ノート」が2018年度で1位になるなど売れています。しかし、それ以上に中国市場が好調なのです。日本では影の薄い「シルフィ」は、2018年1月から12月において48万1216台(118.6%)という台数を販売しています。
また、三菱の2018年販売台数は、「デリカD:5」が1万7075台(128.4%)、「エクリプスクロス」は9115台(182.4%)と他社に比べて低いですが、アセアン地域においては日本未導入の「エクスパンダー」が約31万8000台と好調です。
日本では軽自動車メーカーという印象があるスズキも、インドにおいて大きな人気を得ています。とくに、日本未導入のモデルを多く展開しているのが特徴です。
スズキは、日本市場でも2018年度の軽自動車販売台数において「スペーシア」が15万8397台(139.3%)、登録車「ソリオ」の4万4884台(90.2%)と、軽自動車市場が伸びている影響をうまく捉えています。
しかし、国内で売れている「ノート」を販売するディーラーのスタッフは一概に喜べないというのが実情のようです。日産の販売ディーラーのスタッフは次のように話します。
「最近の日産車は、モデルチェンジをなかなかしません。海外ではその国に合わせた新型モデルを続々と投入していますが、ここ数年の日本では、『e-POWER』頼みなのが現状です。今のところ、ノートやセレナの販売が好調ですが、販売の現場としてはほかのラインナップでも押して行きたいのが正直なところです。
今後、各種モデルのモデルチェンジをおこなうといわれてはいますが、年内の大きな動きは聞いていません。そのため、しばらくは現状のモデルで頑張るしかありません」 ※ ※ ※
日本の自動車メーカーは、国内の地場産業や雇用を支えつつ、グローバル展開によって大きく成長してきました。今後は、電動化や自動運転分野など、グローバルでの競争が激化していきます。
それでも、日本市場では「誰もが買えるクルマ」を投入し続けてほしいものです。
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