■「SF90スパイダー」のオンライン発表会の模様をレポート
フェラーリは、2020年11月12日の現地時間14時、ニューモデルの「SF90スパイダー」をマラネロのチェントロ・スティーレ(デザイン・センター)で発表した。
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チーフ・マーケティング・オフィサーのエンリコ・ガリエラ、チーフ・テクニカル・オフィサーのマイケル・リヒター、そしてリモートで参加したチーフ・デザイン・オフィサーのフラビオ・マンゾーニと、現在のフェラーリを率いるメンバー達によって披露されたニューモデルは、基本的には「SF90ストラダーレ」のルーフをRHT=(リトラクタブル・ハードトップ)としたもの。これでフェラーリでは2タイプのプロダクションPHEVの選択が可能になったことになる。
プレス・コンファレンスの席上でエンリコ・ガリエラ氏は、SF90スパイダーはフェラーリのプロダクション・スーパーカーであり、それはたくさんのストラダーレと同様にたくさんの新しい技術を搭載しているものを意味していると紹介している。
会場にはザッロ・モンテカルロと呼ばれるイエロー系と、ブルー系のブルー・エレックトリオという、いずれもSF90スパイダーのために新開発された専用色を採用したモデルが展示されていた。
ちなみにブルー・エレックトリオのSF90ストラダーレは、「アセット・フィオラーノ・パッケージ」と呼ばれる、さらにサーキット走行にフォーカスしたオプションを装着したもので、そのカラーは同仕様のみで選択できる。
参考までに同パッケージは、サーキット走行に最適化されたマルチマチック・ショックアブソーバーを装備し、加えて軽量素材の仕様となり、車重はオリジナルのSF90ストラダーレ比で21kgを削減。
タイヤもミシュラン製のパイロット・スポーツ・カップ2を採用している。
●注目のPHEVアーキテクチャーとは
SF90スパイダー、そしてその素材となったSF90ストラダーレのメカニズムで、まず注目しなければならないのは、やはり最新のPHEVアーキテクチャーだろう。
リアミッドに搭載される780ps仕様の3990ccV型8気筒ツインターボエンジンには、MGUK(モーター・ジェネレーター・ユニット・キネティック)と呼ばれるエレクトリックモーターが組み合わせられ、それによって780psの最高出力が得られる仕組みだ。
吸排気システムは完全な新設計。エグゾースト・マニフォールドには通常のスチールではなく、軽量かつ耐熱性が高いインコネルが使用され、重量の削減はここでもストイックにおこなわれている。
さらにフロントアクスルには、RAC-e(コーナリング・アングル・レギュレーター・エレクトリック)の役割も担う2基のモーターが搭載され、V型8気筒エンジンとエレクトリックモーターの合計出力は、最大で1000psにも達する計算になるという。
V型8気筒エンジンに組み合わされるトランスミッションは、完全な新設計によるオイルバス式の8速デュアルクラッチ。潤滑方式にドライサンプが採用されていることと、その外径が従来の7速型から20%も小型化されたことで、搭載位置は15%も低くすることが可能になった。
実際にSF90ストラダーレ、あるいはSF90スパイダーのエンジンルームを覗き込んだ人は、そのエンジンの搭載位置が驚くほどに低いことに気づかされるだろう。さらに8速のギアボックスは重量面でも従来型から10kgものダイエットを果たしているのだ。
そのパフォーマンスは7速型から35%向上し、最新世代の油圧式作動装置によって、変速時間は200mm秒にまで短縮(同様の比較で30%の改善に相当)することになった。
SF90スパイダーのパワーデリバリーは、フロントアクスルのみがエレクトリックモーターで駆動する電動モード(FWD)、V型8気筒エンジンと、それに組み合わされるMGUKによる駆動(RWD)、そして電動のフロントアクスルはオンデマンドで稼働し、コーナリング時にはトラクションを効果的に発生、ブレーキング時には運動エネルギーを改正するハイブリッドモード(4WD)の各モードに分けることができる。
したがってSF90スパイダーにとって、ハイブリット・システムのパワーマネージメントはきわめて重要な役割を果たしており、そのために従来のマネッティーノに加えて、「eマネッティーノ」と呼ばれるセレクターがステアリングホイール上に装備されたのも大きな特徴だ。モードは「eドライブ」、「ハイブリッド」、「パフォーマンス」、「クオリファイ」の4タイプ。もっとも特徴的なのはeドライブで、それを選択すると7.9kWh分が搭載されるバッテリーで、最長25kmのEV走行が実現するという。
電子制御トラクション・コントロール(eTC)、トルクベクタリング、ブレーキ・バイ・ワイヤ・コントロールなどから構成されるビークル・ダイナミクスの制御は、基本的にはSF90ストラダーレのそれと同様だ。ハイブリッド・システムの搭載による270kgの重量増にも関わらず、車両重量を1670kgに抑えた取り組みが、ビークル・ダイナミクスにも大きく貢献していることはいうまでもないところだ。
この1670kgのウエイトは、ストラダーレと比較して約100kgのプラスという結果になるが、このうち約80kgはRHTによるもの、そして残りの約20kgは剛性を確保するための補強のためとコンファレンスでは説明された。
SF90のシャシは完全な新設計によるものだが、スパイダーではさらに、従来のプラットフォームより30%も高いねじれ剛性を重量の増加なく実現しているという。
■特許取得済みの最新エアロデバイスとは?
SF90スパイダーのデザインは、クローズ時のシルエットでは、クーペのストラダーレのボディラインを、実に美しく、そして見事に再現している。
チーフ・デザイン・オフィサーのフラビオ・マンゾーニは、基本となったSF90ストラダーレのデザインに、そのままRHTを採り込むことができたこと。そしてヘッドレストの後方に、これまでのオープン・リアミッドと同様のスタイルを実現し、これとコックピット内に設けられたふたつ空力エレメントが、キャビン内の気流から乗員を守り、コンフォート性の高いドライビングを提供するための役割を担うことを強調していた。
●巨大なウイングなしでも強力なダウンフォースを獲得
SF90スパイダーが発生するダウンフォースをおもに決定するのは、車両のテール部に装備される特許取得済みのデバイス、「シャットオフ・ガーニー」だ。これはふたつのパーツから構成される釣り下げ式のエアロデバイスで、ひとつは固定式、もうひとつは前方がくさび型の稼働パーツとなっている。
車速や加速度、ステアリングホイールの角度、ブレーキペダルの圧力等々のパラメーターを基に、ロー・ドラッグとハイ・ダウンフォースというふたつのポジションによってダウンフォースを調節するというシステムの実際の効果は、試乗のチャンスを待ちたいところだ。
未来的で革新的なデザインを実現することによって、レーシングカーの役割と、プロダクション生産されるスーパーカーのコンセプトの両方を表現しているかのようなエクステリアデザインは、SF90スパイダーでも踏襲されている。
コックピットはやや前方に移動し、車高は20mmダウン。Aピラーもさらにスレンダーになったとの説明だが、一瞬でその違いを見つけるのは簡単なことではなさそうだ。
16インチのHDスクリーンで、新設計のヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)を実現したインテリアも、時代の変化とフェラーリの進化を直接的に感じさせる部分だ。
さらに最新のヘッドアップ・ディスプレイの導入で、ドライバーが必要とする情報は、そのほとんどがここから得ることが可能になり、フェラーリが常々語っていた「視線は路上に、手はステアリングホイールに」という理念が実現することになる。
注目の運動性能は、トータルの最高出力が1000ps、0-100km/h加速2.5秒、0-200km/h加速7.0秒、最高速340km/h。そしてフィオラノのラップタイムは79.5秒と発表されている。
プレス・コンファレンスで発表された発売時期と価格は、2022年の第2クォーターから、まずヨーロッパ市場で販売をスタートし、そのプライスはクーペのストラダーレより約10%高い47万3000ユーロ(消費税込)。邦貨換算でおよそ5850万円となる。
そのオーダーリストには、またもや長く、そして遠い列ができることは、確実なところだろう。
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