150psの35TFSIは英国で一番人気の予想
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)アウディA4の中で、英国では最も高い人気を獲得するであろう、エンジンと駆動方式の組み合わせとなるのが、35TFSI。ディーゼルエンジンに力を注ぐアウディにあって、ガソリンエンジンが目新しく感じてしまうが、ディーゼルを拒否するような市場の反応を見る限り、当然の組み合わせだともいえる。
間もなくローエミッションで質素なディーゼルエンジン版も追加される予定だが、現在最も低燃費をうたうディーゼルの40TDIクワトロ・スポーツと比較すると、この35TFSIスポーツは6000ポンド(78万円)も安い。社用車として導入した場合、英国では税率も5%異なるし、実際に燃費の差もそれほど大きくはないようだ。そう考えると、150psのガソリンエンジンを搭載するA4 35TFSIの英国での人気もある程度見当も付く。
今回の試乗車は35TFSIスポーツで、6速マニュアルかアウディ製7速デュアルクラッチATのSトロニックかを選択できるが、駆動輪は前輪のみ。0-100km/h加速ではマニュアルの方がやや優れるが、ATの方が燃費の面では有利なようだ。もちろん装備やホイールサイズなどでも変わってくるけれど。
フォルクスワーゲン・グループのクルマが搭載する150ps級のガソリンエンジンの場合、ほとんどがターボ過給される1.5Lの3気筒エンジンだが、A4の場合は2.0Lの4気筒ターボが搭載されている。その恩恵はより幅広い回転域で得られる大きなトルクで、27.4kg-mを1350rpmから得ることができる。
マイルド・ハイブリッドも搭載するが、電圧は48Vではなく12V。オートアイドリングストップ機能と、賢いオルタネーターの支援に留まる。
ライバルを抑える充実した標準装備
すでご存知の読者も多いかもしれないが、モデルライフ中期のA4に与えられたフェイスリフトの内容は、エクステリアデザインの若干の変更と、標準装備の見直しが中心。同時にエンジンの出力に合わせたアウディの新しい命名ルールに沿った数字が、各グレードに振られている。A4の中でも最も高いパフォーマンスを誇るS4にはTDIとして、ディーゼルエンジンが搭載されるようになった。
グレードも整理を受け、英国の場合はエントリーグレードが「テクニック」となり、フル装備の上級グレードが「フォーシュプルング」となる。アウディ製のインフォテインメント・システムは10.1インチへと大きくなり、インスツルメントパネルにはアウディ・バーチャルコクピットの12.1インチのモニターが収まる。
フロントシートはヒーターが内蔵となり、LEDヘッドライトに、3ゾーン式のエアコンがエントリーグレードでも標準装備となっている。恐らく、ライバルとなる新しい3シリーズの優れた装備に影響を受けたのだろう。
インテリアのデザイン自体には大きな変更はない。とてもスマートで素材の質感も高く、ソリッドで抑制の効いたスタイリングが、ハイテクで知的な雰囲気にとても良く合う。目が自然にいく範囲のアピアランスも良く、実際に触れてみても印象は変わらない。しかし、自立した大きなインフォテイメント・システムのモニターは、画面枠の上部に手で少し力を入れると、ぐらついてしまうようだ。
車内空間は広々しており、運転席からの視界も優れ、競争力は高い。コンパクトサルーンの中では珍しいほどに低いドライビングポジションと、充分に快適な標準装備のスポーツシートが、印象をさらに良くしている。
活発で滑らかな2.0Lガソリンターボ
走り出すと、2.0Lのガソリンターボは滑らかに不足のないパワーを発揮してくれる。ドライバビリティも、トップレベルではないにしろ、充分に評価できる。アクセルペダルを深く踏み込めば、クルマは不満のないレスポンスで速度を増し、7速デュアルクラッチATは、激しい加速が必要な場面でも滑らかに仕事をこなす。
トランスミッションは高いギアを選びたがる傾向がある。カーブの脱出時や静止状態から力強く加速させたい場面では、少しもたついた印象を受けてしまった。シフトパドルを弾いてマニュアル操作をすれば、段数の選択も直接行えるから、速いペースでも不満を感じることは少なくなる。だが、常にマニュアルで操作したいとも感じないだろう。
ガソリンターボエンジンは4気筒ディーゼルエンジンから乗り換えたドライバーだけでなく、ライバルモデルのガソリンエンジンと比較しても、滑らかで静かに感じられるはず。試乗距離は長くはなかったが、高速道路を巡航した区間と、速いペースを保って走った区間とを混ぜても、燃費は14.1km/Lを超えていた。
操縦性は安定感があり、動きもリニアで正確。ステアリングホイールを切った際の反応も機敏すぎることはなく、重みも適正だ。センター付近での直進性とフィーリングも良い。A4は特段機敏さを強みにしているクルマではないが、素直でとても運転がしやすいと感じる。
完璧なパッケージングにアウディらしい魅力
標準の固定式のサスペンションと控えめなホイールサイズの組み合わせでも、とても静寂感が高く、快適な乗り心地を提供してくれる。低速域でも高速域でも、路面からの入力の吸収性はとても優れている。もしアダプティブ・ダンパーがお望みなら、「フォーシュプルング」グレードを選ぶ必要がある。
これまでの経験的に、Sラインやブラックエディションなどに装備されるスポーツサスペンションは、さほどドライバーへの見返りは大きくないと思われる。反面、乗り心地が若干悪化する可能性は否定できない。
A4を購入するほとんどのドライバーが期待するであろう、日常的に優れた燃費や、クルマに求める内容を考えれば、35TFSIは賢い選択だといえる。しっかり煮詰められ装備も充実し、実用的で、必要ならば充分に活発に走ることもできる。
運転のエキサイティングさは変わらないが、フェイスリフトによって印象や訴求力の高さは、わずかとはいえ高まった。必ずしも重要な要素ではないにしろ、無視できない内容を着実に良くしている。A4の完璧なまでのパッケージングとアウディらしい魅力に溢れた仕上がりは、ドライバーズカーとしての面白さで物足りないとしても、高い支持を得るに違いない。
アウディA4 35TFSIスポーツSトロニックのスペック
価格:3万3975ポンド(441万円)
全長:4726mm
全幅:1842mm
全高:1427mm
最高速度:225km/h
0-100km/h加速:8.9秒
燃費:14.9km/L(WLTP複合)
CO2排出量:-
乾燥重量:1440kg
パワートレイン:直列4気筒1984ccターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:150ps/3900-6000rpm
最大トルク:27.4kg-m/1350-3900rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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