公道を走る自動車の速度には法律によって制限が設けられている。だが、その制限速度が国によって異なるのはご存じだろうか? 今回は各国の制限速度事情やその理由についてアレコレ見ていくことにしよう。
文/長谷川 敦、写真/メルセデスベンツ、写真AC、Abobe Stock、アイキャッチ画像/ARVD73@Adobe Stock
狭~いニッポン…なのに法定速度は意外と高め!? ちょっと気になる海外の速度制限事情
■速すぎても遅すぎてもダメ?
高速自動車国道の本線車道で速度指定のない区間では、普通乗用車の最高速度は100km/h、最低速度は50km/hと定められている。つまり遅すぎてもNGになる
我が国の道路には法定最高速度が設定されている。このことはほとんどの人が知っているが、実は法定最低速度も設けられている。
まずは最高速度だが、これは一般道や高速道路における走行速度の上限のこと。これを上回ってしまうと交通違反になり、罰金などのペナルティがある。
そしてもうひとつが最低速度だ。こちらは高速道路や自動車専用道路に設けられる制限で、極端に遅い速度で走って交通の流れを妨げるなど、結果的に危険を招く行為を規制するためのものだ。
どうしても「スピード違反=速度超過」というイメージを持ってしまいがちだが、スピードが遅すぎても違反なるケースがあることを知っておいて損はないだろう。
我が国では、一般道で普通乗用車が出せる最高速度は60km/hと定められている。さらに区間によってはより低い速度に規制される場合も多い。
一部区間では一般道でも70km/h、あるいは80km/hに最高速度が引き上げられていることがあるが、これは例外ともいえる。
そして高速道路における普通自動車の法定最高速度は100km/hだが、こちらも一部区間で120km/hの場合があるのはご存じの人も多いはず。
しかし、これらの制限速度は日本だけのものであり、海外に目を向けると、その国ごとに法定最高速度が違っているのがわかる。そこで次項では、世界の法定最高速度事情を見ていくことにしよう。
■アウトバーンは無制限!? 世界各国の高速道路速度
ドイツの高速道路・アウトバーン(Autobahn)には制限速度がないというのはクルマ好きの間ではよく知られている。
アウトバーンとはドイツ語で「自動車専用道路」を意味し、ドイツ全土にその路線がある。本格的な開通は1940年代前半と歴史も古い。
そしてアウトバーンの名を有名にしたのは制限速度が設けられていないことだ。つまり300km/hで走っても検挙されることない。
とはいえこれは昔の話で、現在でも速度無制限区間はあるものの、年々速度規制区間が増えている。これは開通当初に比べてクルマの総数が増加しているのも理由のひとつ。
アウトバーンの制限速度区間の上限は100~130km/hで、無制限区間であっても130km/hでの走行が推奨されている。
緊急時には飛行機の滑走路としても使用できるよう設計されたアウトバーンは幅広で丈夫なため、走れる速度に余裕があるのも速度無制限の理由になっているが、速度規制区間が増えているのはやはり時代の流れというべきか。
ドイツ以外のヨーロッパにおける普通自動車の高速道路制限速度は、イギリス:112km/h、フランス:130km/h、イタリア:130km/h、スペイン:120km/h、オラン:130km/h、フィンランド:120km/hと、ほとんどの国が日本より高め。
アメリカは国全体の統一速度規制がなく、州ごとに高速道路の制限速度が設けられているが、だいたい113~121km/hが多い。数字が中途半端なのは、マイルで定められた速度をキロに換算しているためだ。
テキサス州の一部では137km/h(時速85マイル)までOKになっているが、これは例外といってよい。
また、クルマで長距離を走ることの多い欧米では、高速道路の幅が広く、日本と違って直線区間も長いので必然的に制限速度も高くなる。
アウトバーンの速度無制限区間では、誰もが猛スピードで飛ばしているわけではなく、車線によって速いクルマ/通常速度で巡行するクルマ/トラックなど制限速度の低いクルマがキレイに分かれて走っている。
アウトバーンでは長年高速道路を走り慣れたドライバーたちによって秩序が保たれているのであり、これがその他の国にそのまま当てはまるわけではない。
その点週末になると運転に慣れていない人が一気に増加する日本では、ある程度低めの速度制限にならざるをえない。
■海外の一般道の制限速度はどうなっている?
日本国内の一般道では、場所によって制限速度に違いがある。それは海外でも同様で、日本よりも細かい区分で速度制限を実施している国も存在する
当然ながら世界の一般道にも速度制限はある。その速度は日本と比べて高いのか低いのか?
まずはアメリカから見ていくと、これも州によって違いがあるが、市街地で56km/h、渋滞街や近くに学校がある場合は40km/h程度に制限されていることが多い。
特にスクールゾーンでの規制は厳しく、速度はもちろんのこと、スクールバスを徹底的に優先するなど、日本とは異なる文化で法律が作られている。
そして幹線道路は80km/hと速いのが特徴だ。やはりこれは広大な国土と幅広の道路事情によるものと考えられる。
ヨーロッパの一般道制限速度もアメリカに近く、市街地では50km/h、幹線道路は80km/hがポピュラー。やはり日本より幹線道路の速度は高い。
ヨーロッパ製のクルマに高速巡行性能に優れているものが多いのは、それが必要とされているから。どちらかというと使い勝手の良さを重視した日本車とは異なるキャラクターが魅力になっている。
最後はアジア・オセアニア諸国と中東の速度制限についても触れておこう。なお、以下の表記での「一般道」は、市街地ではなく速度の速い幹線道路を指している。
韓国:一般道・80km/h、高速道路・120 km/h、台湾:一般道・80km/h、高速道路・110 km/h、香港:一般道・70km/h、高速道路・110 km/h、中国:一般道・80km/h、高速道路・120 km/h、タイ:一般道・80~90km/h、高速道路・120 km/h、オーストラリア:一般道・100km/h、高速道路・140 km/h
サウジアラビア:一般道・120km/h、高速道路・140 km/h、クウェート:一般道・120km/h、高速道路・120 km/h、バーレーン:一般道・80km/h、高速道路・100 km/h、アラブ首長国連邦:一般道・120km/h、高速道路・160 km/h
すべてではないが、総じてアジア諸国の制限速度は日本より高めで、中東の各国はかなり制限速度が高いことがわかる。
特に中東の制限速度が高いのは、平坦なことと、道路幅が広いことがその理由だろう。
ここまで見てきたように、世界の道路制限速度は国によってかなり違っている。日本には日本の事情があって制限速度が低めになっているが、もし海外で運転する機会があったら、周囲のクルマにあわせて日本より高めの速度で走らせる必要がある。
そしてアメリカをはじめとするいくつかの国では道路標識の速度制限数値がマイル表記になっているので、これを間違えないように注意してほしい。
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