プラットフォーム展開から生まれた3台の100万円台カフェスポーツ
ホーク11はエンジンとフレームの流用=プラットフォームによって生まれたカフェスポーツだ。そもそも、そのシルエットのルーツは、ごくスタンダードなバイクをレーサー風に改造したカフェレーサーにあるが、その要素は小型のカウリング、シングル風シート、クリップオンかフラットハンドル、バーエンドミラーといったところだ。
これらの要素を基に考えてみると、ヤマハ XSR900はカウリングこそないがそのシルエットはカフェレーサーのそれであり、カワサキZ900RS CAFEはミニカウルとシート形状でそれっぽい演出をしている。この2台もプラットフォーム化によって生まれたモデルである。
【画像19点】ホーク11、XSR900、Z900RS CAFEを同アングルの写真で分析!
同じ背景を持ったカフェスポーツ3台。奇しくも2気筒、3気筒、4気筒とエンジンが揃ったところで、そこにどのような味わいの違いがあるのか──今回は高速道路とワインディングメインで、首都圏から秋田県栗駒山付近までの往復1000kmを走ってみた。カフェスポーツとは言え、ツーリングに行くのも現実的な使い方でもある。
「エンジン比較」2−3−4で違う表情を見せる
おおよそ現代のモデルであれば、平均化された性能パッケージを実現しているから、余程のことがなければ大外しなどないものだが、「個性」という点では大きな違いがある。当然ながらエンジンは気筒数が違うのだから、その性格も違う。
スペックで見ると、最高出力はXSR900、最大トルクはホーク11が大きく、とくにその違いは高速での加速性能に現れる。中でもXSR900のそれは特筆に値する。スペックとしてはベースとなったMT-09やトレーサー9GTと変わらず、3気筒特有の力強くも滑らかな吹け上がりがデッドエンドまで延々と続くフィーリング。最高速も3台中で一番伸びそうだ。
2気筒のホークは中回転域からの加速がパワフルだ。大きな回転質量を伴いながらも浮遊感のあるフィーリングは非常に力強いもので、テストコースでの試乗時には一気に最高速付近まで加速する走りを見せていた。XSR900が少し重めの鋭利な刃物のような切れ味なら、ホークは鉈か斧のような絶対的な質量を持っている感じだ(その分、振り回すには相応の力もいる)。
それからすると4気筒のZ900RS CAFEは、XSR900よりシャープなナイフのようなフィーリングになる──と言いたいところだが、実は最もマイルドである。ベースモデルのZ900から低回転寄りに振っているエンジンセッティングもあるのだろうが、高回転での伸びは思ったほどシャープではないし、ドラマチックなパワーの上昇も感じられない。
反面、低速域を多用し、ストップ&ゴーを繰り返す街中ではZ900RS CAFEが非常に扱いやすい。極低回転のレスポンスのダルさは4気筒ならでは、そこから適度に力強い吹け上がりによって、神経質な扱いは一切無用と言ったところ。低速での取り回しの良さには、そのアップライトなポジションや、柔らかい足まわりも効いているだろう。
ハンドリング比較「走るエリアによって3台の特徴が際立つ」
ハンドリングも三台三様だ。キャスター・トレールは似通っており、それは基本的にオンロードでの軽快性を狙っているのだが、ホイールベースは大きく違う。ベースのNT1100と近いホーク11が最も長く、次いで(MT-09から65mm延長した)XSR900、そして(Z900からステアリングヘッドを前方に延長している)Z900RS CAFEが一番短い。
万能なXSR、安定性のホーク、軽快なZ
ホーク11とXSR900はハンドリングの軽快感を狙いつつも安定志向といったところで、この性格もまた高速走行で抜群の安定感として現れる。特にホーク11のスタビリティはかなりのものだ。
逆にワインディングなどの扱いやすさとなると、ホイールベースではちょうど3台の中間に位置するXSR900の、軽過ぎず重過ぎずという高いバランスが感じられる。足まわりの出来も良く、この点でXSR900は従来型とは全く違う性格である。
低速域でのホークの操作性は決して重くはないが、基本的にそのホイールベース故か(安定感につながる)アンダー気味であり、少し意図的な操作によってそのスポーツ性が本領を発揮するところがある。
Z900RS CAFEは総じて最も軽快だが、中立付近のフラつき、高荷重が苦手そうに感じさせる足まわりという点で、速度や荷重の上昇に応じてやや安定感に欠けてくるところがある。
この辺りは最新モデルに対して、デビューが5年前(=2017年、エンジンの基本設計はさらに古い)というZ900RS CAFEでは不利な部分かもしれない。とは言うものの、素直なハンドリングやその車重を感じさせない軽快な取り回し感など、低中速域を多用する現実的な使用状況では、最も扱いやすい。
以上のような理由で「ツーリング」というシチュエーションならZ900RS CAFEが一番疲れないとも思える(ただし、意図的に演出した低中速の大きな排気音は街中で気を遣うが)。
逆にホーク11はやや前傾するポジションや振動面も含めて、長時間の走行では少々疲れも感じさせるであろうし、Uターンはベテランでないと少々手こずるかも知れない。
このあたりでもXSR900は中庸と言ったところで、欠点が見当たらない。あえて言うなら、爽快感なエンジンが面白いので、ついつい回したくなってしまう点だろうか。
ウインドプロテクション比較「カウルの有無に関わらず意外に互角!?」
高速や長距離で気になるのはカウリングの防風効果だが、実はあまり違いがない。ホーク11とZ900RS CAFEでは、そのサイズが小型ということもあって、上体が低く伏せた状態ではそれなりの効果を感じるが、起きている場合は無いよりはマシと言った感じだ。Z900RS CAFEではカウルが受け流した走行風が頭部にダイレクトに当たる。
XSR900はヘッドライトやメーターパネルの建て付けなのか、想像するよりも遥かに走行風を感じさせないのが意外だった。なお、積載性は推して知るべし。タンデムシートの座面が最もフラットなホーク11が良さげには思えるが……。
レポート●関谷守正 写真●岡 拓 編集●上野茂岐
■ホンダ ホーク11主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4サイクル並列2気筒OHC4バルブ ボア・ストローク:92.0mm×81.4mm 総排気量:1,082cc 最高出力:75kW(102ps)/7,500rpm 最大トルク:104Nm(10.6kgm)/6,250rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2,190 全幅:710 全高:1,160 ホイールベース:1,510 シート高:820(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:214kg 燃料タンク容量:14L
[車体色]
パールホークスアイブルー、グラファイトブラック
[価格]
139万7,000円
■ヤマハ XSR900主要諸元
[エンジン・性能]
種類:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:78.0×62.0mm 総排気量:888cc 最高出力:88kW(120ps)/10,000pm 最大トルク:93Nm(9.5kgm)/7,000rpm
[寸法・重量]
全長:2,155 全幅:790 全高:1,155 ホイールベース:1,495 シート高:810(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:193kg 燃料タンク容量:14L
[車体色]
ブルーメタリックC、ブラックメタリックX
[価格]
121万円
■カワサキ Z900RS CAFE
*テスト車は2022年モデル
[エンジン・性能]
種類:水冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ ボア・ストローク:73.4×56.0mm 総排気量:948cc 最高出力:82kW(111ps)/8,500rpm 最大トルク:98Nm(10.0kgm)/6,500rpm 変速機:6段リターン
[寸法・重量]
全長:2,100 全幅845 全高:1,190 ホイールベース:1,470 シート高:820(各mm) タイヤサイズ:F120/70ZR17 R180/55ZR17 車両重量:217kg 燃料タンク容量:17L
[車体色]
メタリックディアブロブラック
[価格]
141万9,000円(2022年9月1日から発売の2023年モデルは146万3,000円)
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みんなのコメント
は?何言ってんのかわかんない。