もくじ
前編
ー ランボ 3種のラインナップ
ー わが家のファミリーカー
ー 「いつか捕まえてやる」 警官の勘違い
ー 世界初の4シーター・グランツーリズモ
ー 燃費も悪くないスーパーカー
後編
ー エスパーダ レストア開始
ー キャレロのヘッドライト探し
ー もう廃車か 救ったスペシャリスト
ー 「こんなサウンド、ほかにはない」
ー 孫の財産に ブル夫妻の想い
『ランボルギーニ・エスパーダ 学校の送り迎えに最適!』すべての画像をみる
エスパーダ レストア開始
ブル夫妻は2001年にレストレーションを考え始めた。「夫がランボルギーニ・クラブに加入してからは、『必ずいつかやる。いつかやる』と言い続けていましたが、どんどん時が過ぎてしまいました。そしてついにランボルギーニのヴァレンティノ・バルボーニに話をして、写真を送ったものの、『最悪の場合、約6万ドルかかる』と言われました。クルマを工場に送ったら、バルボーニから電話が掛かってきて、とても悲しそうな声で『とても酷い』と言われました。レストアにも当初の2倍掛かると言われましたが、それだけの予算を割くことができませんでした」
ランボルギーニがアウディに買収されたため、支払にも英ポンドに対して強いユーロを使うことになり、そのため状況がさらに悪化した。最終的にエンジンとドライブトレインをすべて組み立て直すことになり、2004年には最終費用が26,000ユーロまで膨らんだ。ブル夫妻は、フェラーラにある会社でオリジナルのインテリアを製造しているブルーノ・パラテッリにも紹介された。パラテッリは内装をすべて取り外し、レザーの独特のパーフォレーションを含め、正確な仕様に合わせてすべて造り直した。
すべてが再び英国に送り返されてきて、ブル夫妻はやっと一息つくことができた。2006年に人から薦められ、エスパーダをエセックスにあるジェニングス・エンジニアリングに送り届けた。「マイケル・アンド・コリンは素晴らしい会社です。病人の看護をするような仕事だから、好きなだけ時間をかけて直して下さいとお願いしました。クルマは再び分解され、作業の進行状況を示す1000枚以上の写真が送られてきました」
キャレロのヘッドライト探し
一方、リンはパーツの調達に着手した。「ドライバーシート側のドアガラスは、工場から購入して600ポンドでした。フロントガラスがなかなか見つかりませんでしたが、シアネスにあるピルキントン社のピーター・スワンに声を掛けたら、『エスパーダのフロントガラスならこれまで17枚作ったことある』と言われました」
最も入手が困難だったのはキャレロのヘッドライトだ。「2年間、探し回りました。左ハンドル用のものは沢山あるのですが、右ハンドル用はまったくありませんでした」
「その後、夫がボイラーの故障でクリスマスイブに呼び出され、そのお客様と話をしているときに、ヘッドライト探しのことが話題になりました。何と、そのお客様は、フェラーリの大手代理店からヘッドハントされたばかりの人で、新年になってから、1971年製の新品のヘッドライトを2個、わざわざ家まで持ってきてくれました。箱に入ったままで、12ポンドと価格が表示されていました」
ミシュランの新品のXWXはクラシックタイヤ社で見つかり、マグネシウム製のクロモドラアルミホイールは磨き上げるためにジリンガムにあるレプソンズに送られた。この画期的な組み立て直しによって、2011年9月にエスパーダは再び公道を走れるようになり、リチャードはすぐ後にランボルギーニ・クラブUKからカー・オブ・ザ・イヤーを授与された。しかし、NECで開催された2012年クラシックモーターショーに出品するために移動している途中で、このクルマに悲劇が訪れた。
もう廃車か 救ったスペシャリスト
交差点でレッカー車に追突されたのだ。リンは事故についてこう語った。「事故の衝撃で身体が側方に突き飛ばされ、左の後輪が壊れてしまいました。クルマは2車線に跨がるような形で横たわり、ボディの一部は歩道に乗り上げていました。ドライバーズシート側のドアは4インチも凹んでしまっていたため、夫はパッセンジャーシート側のドアから外に這い出しました。幸い、夫も私もすこし身体が腫れただけで、大きな怪我はありませんでした」
「保険会社は廃車扱いにしようとしましたが、スペシャリストのボブ・フォーストナーが素晴らしい提案をしてくれました。ドイツの施設までクルマを持っていって、検査し、ジオメトリーを調べ、損傷の程度がそれほど酷くないことを確かめると、見積書を作成し、もし修理を希望しないなら、無償で返品するといってくれました」。クルマは2013年2月24日に回収され、9月4日に戻ってきた。サロンプリヴェの50周年ランボルギーニ・クラスに出品するのにギリギリ間に合い、エスパーダは3位に入賞した。
こうした経過を経て、ステアリングホイールを握る機会が私にも巡ってきた。このシリーズIIIのエスパーダには、シリーズIIの355psの高圧縮エンジンが搭載されているほか、パワーステアリングも装備されているため、巨大なボディをとても簡単に操作できる。
「こんなサウンド、ほかにはない」
キャビンはまるでマセラティ・ギブリSSのような感じだ。ハンドブレーキのレイアウトも良く似ていて、シートベルト着用すると掛けられなくなる。そのためリンは、「疫病神のように坂道を避けていた」という。しかし、フルサイズのシートが車内には4つあり、素晴らしいV12エンジンが搭載されている。ストレスをまったく感じさせないクルマで、あっという間に村や町を通り越してしまう。しかし、アクセルを踏み込むと、リアが即座に沈み、圧倒的なトルクがみなぎり、朗々としたエグゾーストノイズが響き渡る。6基のキャブレターも、ドライバーの注意を引き付けようと4本のアンサのテールパイプと競い合うように唸りを上げる。こんなサウンドを聴かせるハッチバックはほかにない。
しばらく運転していると、大型なボディが小さくなったように感じられる。トレッド幅が広く、低重心でタイヤもワイドなため、路面をしっかりグリップし、ボディもほとんどロールしない。ギアシフトはやや重いが、そのスロットル操作は癖になる魅力があった。この豪快なクルマでの学校の送り迎えは、さぞかし見物だったろう。「ふたりの息子はこのクルマが好きでしたが、ずっと後になって、少し目立ちすぎだと思っていたと言われました」
孫の財産に ブル夫妻の想い
ブル夫妻にとって、レストアは避けられないことだった。リンはこう言う。「孫の財産になると思いました。孫は10歳のときに脳腫瘍と診断されました。キングスカレッジの病院で腫瘍を取り去り、これまで8年間、王立マースデン病院で治療を受けました。幸い、もう危険はないと診断されました。本当にありがたいことです。ただひとつ困ったことがあります。それは、孫が3人いるのですが、元気になった今、このクルマに乗りたくて喧嘩をするようになったことです」
しかし、ブル夫妻の経験してきたこれらのことは、まったく予想外のことではない。1969年7月のROAD&TRACK誌は、ロードテストの結論に次のように記している。「エスパーダで意外なのは、果敢なスタイルや伝説のV12エンジンの高性能さにもかかわらず、かなり実用的なファミリーカーだということだ」最後にひとつ知りたいことがある。それは、牛を意味するブルという苗字だから、ランボルギーニを買ったのかどうかということだ。リンは微笑みながらこう答えた。「いえ、違います。ただ形が好きだったんです」と。
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