一度はフラット4が選ばれたGTS
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
6年ほど前、ポルシェはボクスターとケイマンのモデル名に、718という数字を加えた。同時にフラット4、水平対向4気筒エンジンの搭載も決定した。
エントリーグレードだった2.7L版と、人気の高かったSの3.4L版のフラット6は消滅。ダウンサイジング・ターボがポルシェ製ロードスターにも採用されたことを意味していた。ボクスターの輝きは霞んでしまった。
ポルシェ・ファンには、耐え難い方針だっただろう。その後、ポルシェは高価な特別仕様のスポーツカー需要に気づく。メカニズムの純粋さと熱量が重視される市場でもあり、2.5Lのフラット4では不十分だということにも気づいた。
しかも同じフラット4でも、従来のスバル・インプレッサに搭載されていたユニットと比べると、パワーを絞り出す魅力は半分程度。予想外の流れだったのかもしれない。
そこでポルシェは、フラット6の再登用を計画する。選んだのは、型落ちのケイマンGT4とボクスター・スパイダーに搭載されていた3.8Lユニットや、9000rpmまで吹け上がる991型911 GT3用4.0Lユニットではない。
ベースになったのは、現行992型の911カレラに搭載される3.0Lユニット。ターボチャージャーを取り外し、排気量を増やすことで、専用の4.0Lユニットを製作した。
モータースポーツ・シーンに近い、718のフラッグシップのために設計されたユニットではある。ところが、開発費用を効果的に回収するため、手の届きやすいGTSグレードにも新生4.0L自然吸気フラット6が搭載されることになった。
400psを発生する自然吸気のフラット6
ポルシェ911 GT3にMTが復活して以来の、大きな方向転換ともいえる。すべての718モデルでこのNAフラット6が選べないとしても、選択肢として返り咲いたのだ。素晴らしい決定だ。
さあ、そのポルシェ718ボクスター GTS 4.0が目の前にある。夢中になるな、という方が難しい。
現代的な雰囲気を漂わせる、装備も充実したミドシップ・スポーツカー。4.0LのNAフラット6が発生する最高出力は7800rpmで400ps。最大トルクは42.7kg-mある。ペダルは3つ並び、車重は1405kgに仕上がっている。
ロータスのように軽いわけではない。24年のボクスターの歴史を振り返れば重い方だが、まだ軽いとは呼べるだろう。しかも質量は、ホイールベース内に集中している。
NAフラット6はドライバーの背中、遠く後ろにぶら下がっているわけでもない。甘美なミドシップ・レイアウト。復活はもうない、と一度は考えさせた構成だと実感する。
エンジンから後ろに伸びるのは、機械式のシンプルなLSD。ブレーキで制御されるトルクベクタリング機能が組み合わされる。ステアリング・ラックは油圧ではなく電動式だが、ポルシェのシステムはかなり熟成されている。
クルマのフロント部分と、エンジンの後ろのコンパートメントには、必要充分な大きさの荷室を用意。実用性も無視はしていない。
カンバス製のソフトトップは、64km/h以下なら走行中でも素早く開閉が可能。ちなみに標準モデルは、48km/hまでに制限されている。
総合点で考えると最も手頃なモデル候補
718ボクスター GTS 4.0の排気量は3995ccもあるが、クルージング時の燃費は14.2km/L程度にまで伸びる。しかも、その時の車内はフォルクスワーゲン・ゴルフと同じくらい静かで、乗り心地も優しい。
筆者なら、ボクスターGTSで英国縦断も難なくこなせるだろう。成熟度合いには驚かされる。911並みの上質さがあり、より軽快でしなやか。駐車もしやすい。
あまりの完成度だから、長所をあげるより、短所をあげる方が簡単。英国価格は6万6340ポンド(888万円)で、安いクルマではない。ただし、メルセデスAMG A45 Sもほとんど同じ値段が付いている。
実用性や所有欲、純粋な性能などの総合点で考えると、718ボクスター GTS 4.0は最も手頃なモデル候補となるだろう。ちなみにポルシェ911カレラSカブリオレは、10万4000ポンド(1393万円)もする。
トランスミッションのレシオは、まだ少しロング過ぎる。変速のフィーリングも、印象に残るほど濃くはない。
それでも、たくましいエンジンを活かした走りに慣れれば、2速で引っ張って、素晴らしい高回転域のサウンドを堪能できる。欲求不満はほとんど残らない。
GTSの4.0Lエンジンは、991型911 GT3に搭載される、モータースポーツ直系の切れの良い咆哮は放たない。しかし価格で並び奥行きの深い、BMW M2 CSが搭載する直列6気筒にも負けない、明確なキャラクターを備えている。
ブレーキは少しサーボが強すぎるものの、わずかに、といったレベル。気にするほどではない。
何より、そのほかのボクスターと同様に、1番の長所はハンドリング。新しいNAフラット6が積まれても、この事実を翻すには至らない。
思い描いた通りのラインをトレースする
GTS 4.0は標準のボクスターより20mm車高が低い。試乗車は20インチのホイールを履いていたが、英国郊外の道を、感心するほどのしなやかさを保って駆け抜けた。
ダンパーには2つの設定が用意されている。ハードな設定が必要となるのは、姿勢制御が難しくなるような限られた区間のみ。それ以外の道は、乗ったままの、標準状態でも問題ない。筆者の好みでは、アクセルレスポンスが鋭くなるスポーツ・モードを選ぶけれど。
718ボクスター GTS 4.0は、コーナーの連続する区間を、落ち着きのある精密さで抜けていく。ボディロールはステアリング操作と調和するように完全に制御され、ドライバーが思い描いた通りのラインをトレースしていく。
想像の中のデジャブのように。スペシャルな体験だ。
シャシーはバランスに優れ、ドライバーへ寛容。ターボで加給されていた時代のGTSと変わらず、当たりはソフト。だが路面の処理はさらに磨かれた印象もある。
サスペンションの設計やハードウエア自体には、大きな変更はない。すでに優れた操縦性を備えていたが、違いは主にエンジンのターボラグの有無が影響しているのだろう。新しいフラット6の精度が、総合的に引き立てている。
タイヤは、同じエンジンのボクスター・スパイダーが履く、ミシュラン製のセミスリックではない。一般道に軸が置かれ、グリップの限界を越えても挙動は漸進的。コントロールしやすい。
スーパーカー級の特別なドライビング体験
ポルシェ・スタビリティ・マネジメントシステム(PSM)をスポーツにし、滑らかにステアリングホイールとアクセルペダルを操作する。電子制御を完全にオフにすることなく、シャシーは達成感のあるドリフトアングルも許してくれる。ドライバーの思いのままだ。
では、同価格帯のライバルを差し置いた、最良のスポーツカーだろうか。筆者の考えでは、イエスではない。
英国価格4万8650ポンド(651万円)の、エントリーグレードのボクスターも素晴らしいジュニア・ポルシェだし、しかも同じミドシップ。アルピーヌA110という選択肢もある。
5万6000ポンド(750万円)の、ボクスターSの立ち位置は少し微妙。それでも、現実世界ではどのクルマにも負けないほど速い。装備は充実し、満足度も高い。サウンドもより楽しめる。悩ましい。
718ボクスターのファミリーの中でGTS 4.0は、スーパーカー級の特別なドライビング体験を得られる、普段遣いのスポーツカー。そんなところだろうか。
ポルシェ718ボクスター GTS 4.0(英国仕様)のスペック
価格:6万6340ポンド(888万円)
全長:4379mm
全幅:1801mm
全高:1281mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:4.5秒
燃費:9.2km/L
CO2排出量:247g/km
乾燥重量:1405kg
パワートレイン:水平対向6気筒3995cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:400ps/7000rpm
最大トルク:42.7kg-m/5000-6500rpm
ギアボックス:6速マニュアル
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