サーキットは安全にクルマを楽しめる場
近年、サーキットに対する人気が高まってきている。多くの乗用車が均質化し、公共の場でクルマを楽しむことがますます社会的に許されなくなる中、自動車愛好家たちはかつてないほどサーキットに足を運んでいる。
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英国最速のサーキットとも言われるスラクストン・モータースポーツ・センターを運営するブリティッシュ・レーシング・クラブのCEO、ベン・テイラー氏は、「サーキット走行への関心はパンデミック後に爆発的に高まり、衰える気配がありません。2022年は記録的な年でしたが、2023年も基本的にすでに予約で埋まっています」と述べている。
しかし、もしこれまでサーキットを一度も走ったことがなかったら、どうすればいいのだろう? 自分自身とクルマをこれまで以上に追い込むことに、興奮と同時に不安を覚えるかもしれない。だが、サーキットを恐れる必要はない。実際、サーキットで限界までクルマを走らせることは、公道で同じことをするよりもずっと楽しいうえ、はるかに安全なのだ。
サーキットでは対向車が来ないし、路面がぬかるんでいることもないし、万が一失敗しても、何もぶつからない可能性が高い。また、万が一ぶつかったとしても、電柱や街路樹とは異なり、特別に設計されたバリアがドライバーを守る。
それでも、初めてのサーキット走行を思い出深いものにするために、できることはたくさんある。1つずつ見ていこう。
本稿は英国編集部の記者によって書かれたものだが、注意点やアドバイスなどは概ね日本国内のサーキットでも当てはまると思う。少しでも参考になれば幸いである。
初心者向けのやさしいコースを選ぼう
サーキット走行には、その施設に所属するクルマを運転するものも含め、実にさまざまな形態がある。そのため、以降の解説はすべて、自分のクルマで参加することを前提にしている。
まず、最も重要なのは、どのサーキットに行くかということだ。英国ではどこでも走行会を主催しているが、シルバーストンのようなF1公認の施設を利用するには、マロリーパークのようなクラブレベルの比較的小規模な施設よりも費用がかかるのは当然である。
予算はともかくとして、最初のサーキット走行には、寛容でやさしいサーキットを選ぶのがベストだろう。英国にはスラクストン、グッドウッド、オウルトン・パークといった素晴らしいコースが数多くあるが、まずは他の場所で経験値を稼ぎ、少しでも慣れておくとさらに楽しめるだろう。
ベッドフォード・オートドロームは、コースによってはかなりフレンドリーだ。また、AUTOCAR英国編集部もテストでよく使うアングルシー・サーキットや、あまり知られていないがリンカンシャー州のブライトン・パークなどもある。
走行会やイベント選びも大切
続いて、どんな走行会・イベントに参加するかということも重要だ。1500ポンド(約25万円)で買ったマツダMX-5をちょっと走らせたかっただけなのに、ポルシェ911 GT3 RSを駆るベテランの群れに威圧されるのは嫌だろう。
ほとんどの走行会は、サーキットではなく第三者が主催している。英国ではGoldtrack、Javelin、MSV、RMAなどの団体が有名で、評判も高い。
主催団体は初心者ドライバー向けのセッションを企画するところが多いが、特定のドライバーに向けたイベントも少なくない。例えば、RMAは上級者向けの講習会を催す傾向がある。
どこに行っても、またどの主催者を選んでも、参加前に自分自身で予習しておくことが大切だ。車載映像を見てコースのレイアウトを学んだり、プレイステーションなど家庭用ゲーム機を持っていれば自分で運転してみたりするのもいいだろう。
まともな主催者は資格を持ったインストラクターを用意しており、初心者を怖がらせるのではなく、サーキットの仕組みを教え、リラックスできるように案内してくれる。
最後に、じっくり時間をかけること。サーキット走行会はほとんどいつも同じパターンで行われる。何週間も前から楽しみにしていたため、朝9時ちょうどにはみんなピットに列を作るが、午後はいつもずっと静かなものだ。車内でくつろぎ、ただグルグル回るのではなく、自分でいろいろと遊んでみてほしい。
また、人間の脳は走行中に必要な情報を集めようとするが、その情報を処理するのは主に休憩時間だ。休憩をたくさんとって、再び走り出すたびに、もっと楽に、もっと楽しくなっていく。休むことは安全のためにも大切だ。
サーキットの疑問 保険や費用は?
サーキット保険
通常の自動車保険では、サーキット走行はほとんどカバーされないことを覚えておいてほしい。サーキット走行に特化した保険があり、年齢や車種、補償内容によってはそれほど高額にはならないだろう。ただし、貴重なクルマを所有している場合、その保険料に驚くこともあるかもしれない。
サーキット走行には第三者による補償がないため、一緒に走行する人が保険に加入しているかどうかは関係ないことを肝に銘じよう。つまり、自分が聖人のように振る舞っているにもかかわらず、無作法な暴れん坊がぶつかってきたとしても、基本的には自分の責任である。相手を起訴してお金を払わせることができない限り、サーキットでは法的な救済措置は一切ないと考えよう。
サーキット独自の貴重な体験も
特定のイベントでは、普段乗れないようなエキサイティングなクルマで走り回ることもできる。ポルシェやフェラーリといった高級スポーツカー、ケータハムのような軽量マシン、古いクラシックカー、あるいは一人乗りレーサーなど、さまざまなものがある。こうしたイベントは、サーキット施設が主催することが多いようだ。
企業のイベント
サーキットでのイベントに力を入れている企業の場合、オフロード車から専用のレーシングカーまで、さまざまなマシンを1日かけて運転し、隣でインストラクターが運転技術の指導にあたってくれる。ベッドフォード・オートドロームで開催されるパーマー・スポーツ・デー(palmersport.com)は、その代表例だ。自分のクルマをサーキットに持ち込めない場合は、こうした企業や団体を探してみるのもアリ。
料金
サーキット走行にかかる費用はさまざまだ。施設によって異なるのはもちろん、午前か午後、セッションによる違いもある。騒音規制が厳しい施設の場合、比較的高額になる傾向も。また、ピットレーンが開放されている有名サーキットで「うるさい」1日を過ごすなど、サーキットをどう楽しむかは自分の都合に合わせて選ぼう。
初めてのサーキット走行の心得
1、サーキットに出発する前に、すべてのタイヤの空気圧が適正かどうかを確かめる。
2、レーサーのような激しいシフトチェンジはトランスミッションの摩耗につながるので控えよう。
3、ブレーキに気を配ること。ブレーキフルードが沸騰するベーパーロック現象や、パッドの加熱によるフェード現象に要注意。一番必要なときに効かなくなるかもしれない。
4、縁石を安全マージンとしてとらえ、誤ってコース幅を使い果たしたときにだけ使う。縁石をコースの一部として扱うと、何かあったときにコースから外れてしまう。また、縁石に乗ると、ホイールやタイヤ、サスペンション、ホイールベアリングにダメージを与える可能性がある。
5、コース表面が濡れている場合はもちろん、湿っている場合でも、そういった部分は避けるべき。足を取られ、壁に吸い込まれることがある。
6、コースが濡れているウェットコンディションでは、通常の走行ラインが必ずしも最速とは限らない。もっと広く、外側のラインを試してみよう。
7、初めは車両のトラクションシステムとスタビリティシステムを有効にしておき、できればサーキット用の走行モードやダイナミックモードも使う。セーフティネットになると同時に、性能を引き出すことができる。
8、しかし、こうしたシステムが確実なものとは思わない方がいい。物理法則は絶対的であり、ブレーキが遅すぎたり、ターンインが速すぎたりすると、バッドエンドを迎える可能性が高まる。
気を付けなければいけないこと
走行会を主催する企業や団体は、すべて同じではない。世界的に有名なところもあれば、そうでないところもある。初めてのサーキット走行で、自分のクルマの長所を生かせないようなコースで他車に追いかけられるのは嫌だろう。まずは、一番下のクラスからエントリーし、徐々にレベルアップしていくのがいいかもしれない。
サーキットまたは主催者の規則もよく確認すること。特に、オーバーテイクをどこで、どのようにするか、またはされるかに関しては必ずチェックしよう。周回数の限られたセッションもある。走行会とは、好きなように好きなだけ走り回れる「自由の場」では決してない。
また、自分のクルマがどれだけの音を出すか、騒音レベルを確かめておくこと。英国のサーキットは騒音規制が厳しいところが多く、せっかく行ったのにコースに入れないということは避けたいものだ。エンジンを高回転まで回すとどんなクルマも騒音が大きくなるので、公道を走れるからといって、自動的にサーキット走行も「OK」とは限らない。疑問があれば、主催者に確認しよう。
走行時には、肌を覆い隠す服装とギアを身につけること。一般的に半袖Tシャツでコースに出ることはできない。ヘルメットなどのギアは、非常に高価なものを選ぶ必要はないが、状態がよく、これまで一度もクラッシュしたことがないものを選ぼう。特にヘルメットは、外見上は問題なくても、構造的な問題を抱えている場合もある。
最後に、サーキット走行会は基本的に、趣味の範囲で楽しんで行うもの。レーシングカーをセットアップするためのテスト走行とはわけが違う。それは本格的なレースチームが参加するもので、FIA公認のレーシングギアを頭からつま先まで身につけるだけでなく、競技ライセンスが必要だ。
以上、英国のサーキット事情を例に上げて説明した。各イベント主催者や施設のルールを尊重しながら、新しい趣味としてサーキットを楽しんでいただければ幸いである。
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