■250ccクラスでは貴重なプレミアムバイク
カワサキ「Ninja ZX-25R」(以下、ZX-25R)の魅力と言ったら、誰もが真っ先に思い浮かべるのは、現行車では唯一にして、カワサキが約30年ぶりに全面新設計した、排気量250ccの並列4気筒エンジンでしょう。
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世間の一部では“パワーが物足りない”、“往年のZXR250のほうが刺激的”、“吸排気とECUに手を入れると激変”などという意見があるようですが、私自身(筆者:中村友彦)は久しぶりのクォーターマルチ(250ccの多気筒エンジン車)の出来栄えに、素直に感動しました。
もちろん最も印象的だったのは、絞り出すようなカン高い排気音と共に、レッドゾーンが始まる17000rpmに向かってイッキに回る、高回転域の官能的な吹け上がりです。とはいえ。ZXR250を筆頭とする1980年代から1990年代の250cc並列4気筒と比べると、低中回転域の実用性が向上していることも、個人的には特筆したくなる要素でした。
ただし、エンジン以上に私が心を動かされたのは、カワサキの開発姿勢です。と言うのも、今の時代に新規で250cc並列4気筒車を作るとなったら、エンジンだけで十分な価値があるわけですから、それ以外の部分はコストダウンを念頭に置いた、漫然とした造りになっても不思議ではありません。でもZX-25Rにそういった気配は皆無で、250ccクラスでは貴重なプレミアムバイク、と呼びたくなる品質と乗り味を実現しているのです。その結果として、価格(税込)は250ccクラスではかなり高価な82万5000円(標準仕様)から91万3000円(SE仕様)となりましたが、実際にZX-25Rに接して、価格に異論を述べる人はほとんどいないでしょう。
■並列4気筒の醍醐味を気軽に満喫
並列2気筒エンジンを搭載する既存の「Ninja 250」が、ベーシックモデルとしての魅力を追求していたのに対して、ZX-25Rの乗り味は、ワールドスーパーバイクで前代未聞の6連覇を達成したシリーズの長兄「Ninja ZX-10R」の再現を目指しています。
ちなみに、他社の250ccロードスポーツモデルでもよく使われる「リッタースーパースポーツの思想と技術をフィードバック」という言葉(表現)に、私は違和感を抱くことが多いのですが……。
オートブリッパー機能付きのクイックシフターとトラクションコントロールの秀逸な作動感や、ブレーキング時に感じるフロントまわりの剛性の高さ、低めのクランク軸が原因と思われるコーナリング初期の程よい安定感、上半身の使い方に応じて車体の向き変え度合いが変わる2次旋回などは、確かに、ZX-10Rに通じる印象でした。
もっともZX-25Rの乗り味は、見方によっては「ZX-10RよりZX-10Rらしさを味わいやすい……?」と言えるのもしれません。我ながら妙な表現ですが、ZX-10Rを筆頭とする昨今のリッタースーパースポーツが、あまりにも高性能になりすぎた結果、オイシイ領域を味わいづらくなったのに対して、ZX-25Rはわずかでも直線があれば、このエンジン形式ならではの咆哮が堪能できるのです。
しかも、高荷重を前提とした設計のZX-10Rとは異なり、ZX-25Rはシャシーの反応が柔軟なので、思い通りのアクションが出来ない、積極的な荷重がかけられない状況でも、それなりのスポーツライディングが楽しめます。さらに言うならこのバイクの乗車姿勢は、既存の「Ninja 250」と比べれば、ハンドルグリップが低く、ステップが後退していますが、決してスパルタンと言うレベルではないので、ZX-10Rほどの緊張は強いられません。
そのあたりを把握した私は、またしても妙な表現になりますが、これは「お得なバイクだ……」と感じました。何と言っても、サーキットに出かけたり、見通しがいい快走路を探したりしなくても、並列4気筒の醍醐味が堪能できるわけですから。言ってみればZX-25Rは、リッタースーパースポーツと比較すると、ガマンを強いられる場面が少ないバイクで、絶対的な速度レンジが低い日本の路上では、この特性は有効な武器になるでしょう。
■往年の「Z1」「Z2」や「GPZ900R」などに通じる資質
バイク関連のウェブや雑誌を熱心に見ている方なら、すでにお気づきだと思いますが、現在のアフターマーケット市場では、マフラーやリアショック、ライディングポジション関連パーツ、サブコン、外装、各種スライダーなど、ZX-25R用のカスタムパーツが続々と登場しています。話題のニューモデルですから、それは当然と感じる人がいるかもしれませんが、他メーカーが250cc並列4気筒車を発売しても、私はここまで盛り上がらなかった気がします。
逆に言うならカワサキ車には、カスタム意欲をそそる、いい意味での“隙”が備わっているのです。と言っても、それはカワサキの意図ではないでしょうし、すべてのモデルがそうと言うわけではありませんが、個人的には同社の歴代並列4気筒車、「Z1」「Z2」系や「GPZ900R」、「ゼファー」シリーズ、「ZRX1100」「ZRX1200」、「Z900RS」などに通じる資質を、ZX-25Rには感じました。
ちなみに、もし私がZX-25Rのオーナーになったら、真っ先に行ないたいカスタムはマフラーとリアショックの交換です。ノーマルに悪い印象を抱いたわけではありませんが、これまでのカワサキの傾向を考えると、この2点の変更にはかなりの効果が期待できそうです。もちろんマフラーとリアショックを交換したら、次はサブコンを投入してタイヤをハイグリップ指向に変更して……という感じで、前述したカワサキの歴代並列4気筒車と同様に、さらなるカスタム意欲が湧いてくるのでしょう。
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みんなのコメント
ただそれは今の日本にかつてのレプリカ時代並みの250ccバイクが無かったからとも言えます。
R25にしろRRにしろスポーティーな姿をした普通のスポーツバイクでしたしそれに比べると良い意味でスパルタンさがありますし。