2007年秋のフランクフルトショーで衝撃的なデビューを飾ったアウディRS6アバント。正式に日本導入決定がアナウンスされる中、2008年初頭、ポルトガルのポールリカールサーキットを舞台に国際試乗会が行われている。Motor Magazine誌ももちろんこの試乗会に参加、そのレポートをお届けしている。今回はその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年4月号より)
現代版ビッグクワトロ、その誕生が意味するもの
静かなる闘志を秘めたモデル。その静けさは、逞しいけれどもあくまで現代風を装い、秘められた闘志はその下で常に古風に燃え盛っている。
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アウディのスポーティモデルを語る時に私が思うことといえば、いつもそんな風であった。一連のS系シリーズはもとより、歴代RSモデル、さらにはスーパーカーたるR8においてさえ、冷静さを装いつつ、驚くほど情熱的に振る舞うという性格付けに、モダンアウディらしさを見届けていたものだった。
ところが。昨年秋の東京モーターショーにおけるアウディブースを鑑賞していて私はぶったまげてしまった。
驚きは腰を抜かしそうになるほどだったし「うわーっ」と思わず叫んだ口がしばらく塞がらなくなった。職業柄注目すべきコンセプトカーや新世代のA4&A5よりも、端的に言って「興奮」してしまった。久しぶりにモーターショーならではのワクワク感を味わった。一刻も早く乗ってみたいと思った。昨今、そんなにないことだ。
新型RS6。それはアバントで登場している。そこにどんな意味があるのか。ド派手に張り出したフェンダーはもはや冷静さをかなぐり捨て、速さへの欲望を鬼気迫る勢いで丸出しにし、見る者を魅了してやまない。そういえば、冷静さを捨てたという意味では、デトロイトに現れたコンセプトカー、R8 V12 TDIのルックスも同じだ。あの迫力は凄まじい!
全体のイメージから容易に思い出されるのは、かのスポーツクワトロだ。ホモロゲーションモデルに特有の迸るようなオーラは新型RS6と共通するものがある。そしてそれは、アバントモデルであるがゆえに蘇る、ビッグクワトロクーペ以降の新しいアウディの近代史でもあった。
もちろん驚かされたのは、その装いからだけではない。この期に及んで秘める必要などなかった、というよりむしろ秘めきれなかった中身=スポーツパフォーマンスの拠り所にも気持ちを根こそぎ持っていかれた。
アウディ史上最強と謳われるドライサンプ式直噴90度V10DOHC40バルブツインターボTFSIエンジンを搭載。これまたフォーシルバーリングス市販モデル初のオーバー500psスペックとなる580ps/650Nmという、ワゴンモデルにあるまじきパワーソースを手に入れていたからだ。
組み合わされるのは、当然、フルタイム4WDクワトロ+ZF製6速ティプトロニック。通常走行時の前後トルク配分は40:60で、状況に応じて最大、前輪へ65%、後輪へ85%のトルクを配分する。スペックからも、世界最速最強ワゴンの誕生と言っていい。
当然、足まわりやブレーキもそれに見合ったチューニングが施されているわけだが(というか、このクルマの場合、強大なパワーのみならず2トン超の車重に併せたというべきか)、19インチホイール(オプションで20インチも選択可)に包まれた巨大なブレーキシステム(これまたオプションでCCBセラミックカーボンブレーキ選択可)もさることながら、進化したDRC(ダイナミックライドコントロール)にも注目しておきたい。
DRCそのものはそもそもヤマハが開発しアウディに提案した理論(REAS)で、先代RS6で初めて搭載されたもの。対角線上に繋がれたダンパーの油圧フローを機械的に制御することでフラットライドを実現するという非電子的な仕掛けだ。それゆえ極めて人の感性に自然でリニアな安定感が得られるというわけだが、新型RS6には減衰力を3段階で変えられる新システム(オプション)が採用されている。
これだけのパフォーマンスを誇る、もはやマシンと呼ぶべきワゴンの、企画開発そして製造を担当したのはクワトロGmbH。さぞかし「大いなる思い」や「見越した戦略」があったのだろうと開発を担当したエンジニアに質問してみたが、返ってきた答えは「ただただ世界最速の、そしてRSシリーズの名に恥じない最強ワゴンを造ってみたかった」という純粋な想いだけであったようだから、再びの驚きであった。
史上最強のアウディが示す新しい時代の始まり
一刻も早く試乗したい。その想いは比較的早く実現する運びとなった。1月下旬、処は南仏ポールリカールサーキット。プライベートジェット機の空港を脇に備え、その隣には今風のナチュラルハイクラスなリゾートホテルが並ぶ、まさに自動車貴族たちの城のような場所。サーキットは今や当世随一のテスト&シミュレーションコースであり、RS6のようにおよそ浮世離れしたパフォーマンスを誇る高性能マシンを試すにはもってこいの環境だ。
まずはその性能の一端をコース上で味わう。ピットレーンには赤と青も鮮やかなRS6がズラリと整列。V10ツインターボの唸りが、地鳴りのように地面付近の空気を震わせていた。フレアフェンダー上面に浮かび上がるコントラストが逞しい。
サーキット試乗車は、相当にレーシーな雰囲気を発散している。20インチタイヤにセラミックカーボンブレーキ、パドル付きフラットボトムステアリングホイール、レカロバケットシート、カーボンパネル内装、などなど。見ているだけでドライバーをその気にさせてしまう。
ステアリングホイールに両手を被せると脇がぎゅっとしまり、気分がいっそう高まってゆく。
合図とともにV10ツインターボエンジンを思いっきり解放する。期待したのはもちろん、580psという途方もないパワーが与えたもうはずの、恐怖感に満ちた加速だった。
しかし、驚いたのはその過激さにではなく、あくまでも安定した速さにであった。と同時に、あれほど昂っていた気持ちが俄然、冷静になっていることにも驚く。2トンを超えるクルマが200km/hで走っていてもなお、脳味噌がシートに座って運転している自分を冷静に観察しているかのようだ。
パッケージングもさることながら、乗り手の冷静さも手伝ってのことだろう。RS6がサーキットを走って楽しめるようなクルマでないことは、2つめのタイトコーナーですぐに明らかにされる。きっちりフロントヘビー。ひらりひらりと抜けて行くなどという芸当はまるで似合わない。
しかしながら、加減速の最中と高速域での安定感には目を見張るものがあった。スポーツカー風に素晴らしいのではなく、その持てる高性能に対して安心して走らせることができるということに満足できるというわけだ。
そして私は、試乗コースを、高速道路を含む一般道に移してたちまち、RS6の真価を思い知ることになる。
サーキットでは自然と力が入ってしまうからだろうか。それほど苦にならなかったのだが、一般道に出てステアリングフィールの重さには少しだけ参ってしまった。
30km/hを超えるといきなりドシンと重みを増す。V10エンジンの存在を感じるが如くに、だ。
田舎道を抜け高速道路へ。入線から一気に加速、高速でのクルージング、追い越しとレーンチェンジ、連続する高速コーナー、ふいの減速、流出……。想定されるすべての高速シチュエーションにおいて、RS6は見事なまでの安定感を見せつける。その間、ドライバーはあくまでも冷静かつ平穏。余計な気疲れは一切なく、ただただスーパースポーツカー顔負けの高速で巡航する。アバントであることも手伝って、これほど速くて実用的なグランドツーリングカーは他に見当たるまい。
確かにアウディの頂上スポーツラインはここにきてその牙を隠そうとはしなくなった。見るからに情熱的に振る舞おうとしているようにも思える。
しかし、そのパフォーマンスそのものは強力無比であるけれども、決して冷静さを失わないものだ。物理的な情熱に溢れているけれども、精神の余計な疲労を招かないものだ。
真のGTカーとはこうあるべし。アウディはそう静かに熱く語っている。RS6アバントが日本市場に投入されることの意味は大きい。(文:西川淳/Motor Magazine 2008年4月号より)
アウディRS6アバント 主要諸元
●全長×全幅×全高:4928×1889×1460mm
●ホイールベース:2846mm
●車両重量:2025kg
●エンジン:V10DOHCツインターボ
●排気量:4991cc
●最高出力:580ps/6250-6700rpm
●最大トルク:650Nm/1500-6250rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:6速AT
●最高速:250km/h (リミッター)
●0-100km/h加速:4.6秒
※欧州仕様
[ アルバム : アウディRS6アバント はオリジナルサイトでご覧ください ]
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