シフトレバーのかわりにセレクター
text:Steve Cropley(スティーブ・クロップリー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
英国AUTOCAR編集部では先日、新しいフォルクスワーゲン・ゴルフGTIよりも、フォーカスSTの方が総合力で優れているという比較試乗での結果を導いた。この内容は、追って日本版AUTOCARでもお伝えできると思う。
フォード・フォーカスSTの骨太な動的性能や、得られるドライバーの充足度の高さには、疑う余地はないということだ。今回のフォーカスへの疑問は、ホットハッチに新しい7速ATを選ぶべきかどうか。
6速MTモデルと比べて、1450ポンド(20万円)の追加費用を準備する必要はあるのだろうか。
6速MTのフォーカスとの最大の違いは、センターコンソールから伸びるシフトレバーが、AT用のロータリー・セレクターに変わっていること。ステアリングホイールの後ろ側には、プラスティック製のシフトパドルが付いている。パドルのサイズは、少し小さすぎるように思う。
もちろん、クラッチペダルもない。ATを自ら変速したいドライバーのために、マニュアルモードの「M」と記されたスイッチがセレクターの中央に付いている。
それ以外は、基本的にMTのフォーカスと同じ。デザインは印象的といえるほど美しくはないが、とても機能的だと思う。
ドライビング・モードも変わらずノーマル、スポーツ、スリッパリー(滑りやすい路面用)、レーストラックから選択が可能。肉太なステアリングホイールに配されたボタンで、切り替えられる。
レーストラック・モードで物足りないATの反応
AT任せの変速で走り出す。加速力の鋭さはMTのフォーカス並みに活発だが、完全に同じではない。意外にも、0-100km/h加速では0.3秒ほど遅れるという。
そのかわりAT車だから、運転は安楽。特に交通量が多い国道での追い越しなど、加速に忙しい場面では、だいぶ楽に感じられる。渋滞時も同様だ。
一般的なペースに合わせての変速は、とてもスムーズ。しかし、急な状況の変化で鋭く加速したい場合などでは、キックダウンの反応がやや鈍いように感じた。パドル操作での反応も、特にシャープなわけではない。
ドライビング・モードをスポーツやレーストラックに変更してみる。想像に反して、トランスミッションの反応が目立って速くなることはないようだ。
アクセルペダルの操作に対する食付きは良くなるし、徐々に引き締められていくダンパーも、大幅に硬くなる。ステアリングは、一気に重みを増す。ノーマル・モードでは人工的に操舵感が軽い印象だから、この感触の変化は歓迎できる。
せっかくのフォーカスSTなのだから、レーストラック・モードでは、キックダウンやパドル操作での反応は、もっと鋭くてい良いだろう。それならAT版も、もっと好きになれると思う。
運転は安楽でも、ドライバーズカーならMT
7速ATの反応は少しおっとりしているものの、それ以外はとても好印象。ATならドライバーを選ばず、誰でもが速く滑らかに運転できる。ファミリー層も視野に入る、幅広い訴求力を備えたコンパクト・ハッチバックだといえる。
しかしホットハッチとしてのフォーカスSTなら、MTの方が良いことは明らか。ドライバーズカーとしてSTを選ぶなら、疑問はないだろう。
フォード・フォーカスST オートマティック(英国仕様)のスペック
価格:3万4710ポンド(468万円)
全長:4378mm
全幅:1825mm
全高:1454mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:6.0秒
燃費:12.2km/L
CO2排出量:187g/km
車両重量:-
パワートレイン:直列4気筒2261ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps
最大トルク:42.7kg-m
ギアボックス:7速オートマティック
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フォード、また日本に進出するの?