歯科医の麻沼恵さんが、約31年間所有する「ディーノ246GT」は1972年型である。
ご自宅のガレージ内に置いてあるディーノは47年前のクルマとは思えないほど美しい。一昨年、全塗装したという。
新型ホンダ アコードはカッコ良い? 10代目、まもなく日本上陸へ
「現在の走行距離は4万5297kmです。購入当時は約3万kmでした。普段勤務する医院までは徒歩ですし、ほかにもクルマを持っているため、それほど距離は伸びません。ただ、飾っておくクルマではないので、雨でも乗りますよ」
【前編はこちら!】
インテリアには、ETCや最新のカー・オーディオを設置。インテリアを見ると、ETC車載器もあるし、1DINのカーオディオはパイオニアの新しいタイプに換装されている。
「音楽を聴くのが趣味なので、クルマにオーディオは欠かせません。フェラーリ・サウンドも魅力的ですが、音楽を聴きながら運転するときもよくありますよ」
フェラーリを所有する筆者も、麻沼さんの気持ちはよくわかる。フェラーリ・サウンドはもちろん官能的で魅力かもしれないが、音楽を聴きながら、のんびりドライブするのも楽しい。そういえばインタビュー中、麻沼さんセレクトの心地よい音楽が室内に流れていたのが印象的だった。
インテリアこそ、ETCなどの現代の交通事情に合わせるための装備を追加しているとはいえ、基本的にはノーマル状態を維持しているという。エンジンや足まわりはオリジナルのまま。ただし、快適に走行出来るよう点火システムなどは換装しているそうだ。
「試しにエンジンをかけましょうか?」
と、麻沼さん。キーを何度か捻ると、搭載する2.6リッターV型6気筒DOHCエンジンは爆音とともに目覚めた。うまれて初めて車内で聴いたフェラーリのV6サウンドは、豪快だった。筆者が所有する360モデナのV8サウンドとは明確に異なる。
【前編はこちら!】
搭載する2.6リッターV型6気筒DOHCガソリン・エンジンは最高出力195psを発揮する。ディーノで台湾を走る麻沼さんはディーノに乗って、趣味のゴルフに行ったりもするという。工夫すれば、ラゲッジルームにゴルフバッグが2セット積めるそうだ。実用性の高さも麻沼さんが気に入っているポイント。
ディーノでラリー・イベントにもよく参加するという。多いときは年5~6回参戦していたそうだ。
「1番面白かったのは『RALLY NIPPON 2013 IN TAIWAN』への参加です。約60台のクラシックカーが台湾を1周しました。台湾までは、大黒埠頭から船で(ディーノを)運びました」
ウインドウにはラリー参加時の記念ステッカーが貼られていた。RALLY NIPPON 2013 IN TAIWANはクラシックカー・イベントを企画する一般財団法人ラリーニッポンが企画したもの。2011年3月11日に起こった東日本大震災後、日本に対しさまざまな支援をおこなった台湾でのラリーが、謝意を込めて実施されたという。
「ラリー・イベントに参加するようになったのは約10年前からです。今回『GO!GO! ラリー in 東北~Classic car meeting 2019~』に出走したきっかけはMGのオウナーズ・クラブの仲間からの誘いでした。最初、『ツール・ド・みちのく』に出走する予定だったものの、枠がいっぱいになってしまったんです」
【前編はこちら!】
麻沼さんのディーノにはさまざまなラリー・イベントのステッカーが貼ってある。ディーノのオウナーズ・クラブ「Dino Club of Japan」のステッカーもある。
「会員数は80人ぐらいです。クラブ内でも2桁ナンバーの個体を所有する人は数人しかいません。ディーノ・オウナーは、ほかのフェラーリ・オウナーとはちょっと違うようで、変わった人が多いかもしれません。そもそも、フェラーリの“跳ね馬エンブレム”がないクルマですからね(笑)」
驚きの加速!「せっかくなので、助手席に乗ってみませんか?」
麻沼さんからうれしいお誘いをいただいた。まずは、麻沼さんの運転されている姿を撮影したく、助手席にカメラマンを乗せて、筆者は後ろから追いかける。
目の前を走るディーノはコンパクトだ。細い道をスイスイ進んでいく。全長約4.3m、全幅約1.7mしかないから当然といえば当然だ。BMW「Z4」なみの全長、マツダ「ロードスター」なみの全幅である。
ディーノから聞こえるサウンドは強烈だ。とくに低速時の“ドッドッドッ”という勇ましい重低音が魅力だ。周囲にはほかのクルマも走っていたものの、それらの音がかき消されてしまうほどの快音が、筆者のクルマまで響く。
【前編はこちら!】
ひととおり撮影が終了したのち、今度は筆者が助手席に乗る。おどろくほど小さなドアノブを操作し、ドアを開ける。
コンパクトなボディサイズながら、シートは思いのほか大柄だ。購入から約31年、シートやインテリア・マテリアルは購入時のままという。そうとは思えないほど状態は良好である。
「じゃ、行きましょうか」
そう言うと、麻沼さんはぐいっとアクセルを踏み込む。すると、身体が瞬時にバックレストへグッと押される。意外なほどの加速力だ。最高出力は195ps。現代の基準からすると大した数値ではないものの、車両重量が1t少々しかないからダッシュは軽く、鋭い。
麻沼さんは、慣れた手つきで5段マニュアル・トランスミッションを操作していく。
「クラッチは重くないですよ」とのこと。ただし、回転数をきっちり合わせないとスムーズに変速出来ないそうで、そのため「妻は運転をあきらめました(笑)」と、話す。
乗り心地はハード。しかも、背後からエンジン・サウンドがガンガン響く。が、不快さはない。むしろ心地よい。現代のフェラーリからすると、驚くほどスパルタンであるが、それがかえってフェラーリらしいと思う。麻沼さんが長年、所有し続けるのも納得である。最新フェラーリでは絶対に味わえない感覚だ。
「ヒーターは壊れていますが、特段気にならないのでそのままにしています。雨漏りは大丈夫ですが、三角窓の隙間から雨が吹き込むことはあります。ただし、いずれもそれほど重篤な症状ではないし、走行に影響はないので気にならないですね」
ディーノを運転する麻沼さんに、気になるクルマを訊いた。
タイヤはミシュラン社製。「デ・トマソの『ヴァレルンガ』です。2シーターのミドシップスポーツで、1964年から1968年までつくられました。今は亡き知人が所有しており、実車も見ました。ディーノをひとまわり小さくしたようなモデルでとてもかわいいですよ」
前編でも述べたとおり、ヴァレルンガも麻沼さんの理想とする2シーター・ライトウェイトスポーツである。とはいえ、ディーノを手放して購入することは「ありえないという」。
麻沼さんにとって、ディーノは一生のパートナーなのだ。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
【2桁ナンバー物語 過去記事】
Vol.1 春日部33のブガッティ EB110 前編/後編
Vol.2 品川35のアルピナB8 4.6 リムジン 前編/後編
Vol.3 練馬34の日産 ステージア 前編/後編
Vol.4八王子33のディーノ246GT 前編
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
複数社の査定額を比較して愛車の最高額を調べよう!
愛車を賢く売却して、購入資金にしませんか?
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
車に表示される「亀マーク」の“意味”に「分からなかった…」 の声も! 謎の「青いイカ」に「コーヒー」も!? 多すぎるメーターの「警告灯」何を示す?
まさかの「4列“10人乗り”SUV」!? 90馬力エンジン×MT設定のみ! アンダー270万円の「“既視感ありまくり”SUV」…斬新すぎインド車に反響も
トヨタが「パンダトレノ」復活!? 伝説の「AE86」完全再現した“特別モデル”が凄い! 最新「ハチロク」日米で登場した姿とは
この時代にまだ「パクリカー」を堂々展示……ってある意味スゴイ! バンコクのモーターショーで見つけたもはや笑えるクルマたち
最近の軽自動車は高すぎ……ヤリスは150万円で買える! 最廉価グレードがおすすめできるコンパクトカーはどれ!?
日本のショップ「RWB」が手掛けたポルシェ「911」の世界的な評価は? 予想より低い約1800万円でした
ズルい? ズルくない? 先頭で合流する「ファスナー合流」 “賛否両論”も実はNEXCO推奨!? 「渋滞解消」への画期的な合流方法とは
いまやその価値5億円!? バブル時代に人気絶頂だった“20世紀最高のスーパーカー” フェラーリ「F40」ってどんなクルマだった?
斬新デザインの[新型エクストレイル]爆誕!? ヘッドライトどこなの!? 日産本気のコンセプトカー4台イッキ見【北京ショー】
走行距離の短さを重視する人が減少傾向! 若者ほど気にせず欲しい車を選ぶ!?【中古車購入実態調査】
みんなのコメント
最近はご当地ナンバー乱発で1桁2桁は下手に引っ越すとナンバー変わるから維持が大変だけど頑張って欲しい。