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ウサギとカメ ポルシェ911とスマート・フォーツーでかけくらべ 後編

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ウサギとカメ ポルシェ911とスマート・フォーツーでかけくらべ 後編

もくじ

ー 思いもよらない、スマート・フォーツーの楽しさ
ー 到着時間の差は9分、平均速度差は3km/h
ー 911ターボSは世界で最高の1台
ー 帰り道は、ウサギに乗って
ー 番外編:危険を冒しても到着時間の差はわずか
ー ポルシェ911ターボSのスペック
ー スマート・フォーツー・プライムのスペック

アルピーヌA110初試乗 バランスは第一級 文句なしの★★★★★

思いもよらない、スマート・フォーツーの楽しさ

わたしの予想に反して、スマートでのドライブは、全く異なる体験だった。

スマートの場合、1時間に数回は追い越されたり、前に割り込んでくるクルマがいるのではないか。この小さなクルマは、普通のドライバーから邪魔者扱いを受けてしまうのではないか、と心配していたのだ。

恐らく、ポルシェ911ターボSと言えば、背後から迫ってくる姿が見えたら、前を走るクルマは自然と道を開けてくれるだろう。まるでモーゼが海を割るように。ただし、片側1車線の道路となると、その力も効果が薄くなってしまうけれど。

道中での最大の問題は追い越しだったことは、予想通り。極端にゆっくり走っているクルマの追い越しは問題ないものの、80km/hで走っているクルマを95km/hで追い越すには、かなり勇気のいる行為となる。大型トラックが遅いのは仕方ないにしろ、悲劇だったのは、さらに遅いクルマに引っかかっていた大型トラック。車列に並んだまま運転席で諦めつつ、マウロが夕日に消えていく姿を想像するしかない。

しかし、実際には充分なスピードが出せたし、自由に走ることもできた。スマートは道路状況に対応するのに不足ないほど速く、しかも楽しさにあふれていた。

到着時間の差は9分、平均速度差は3km/h

なぜここまで、スマートの走行性能が印象深く感じたのか、良くわからない。もし運転する楽しさに溢れたクルマを設計するなら、ポルシェ博士がその例を示したように、短いホイールベースと、リアエンジン・リアドライブが適しているのかもしれない。

実際、このスマートが好例だ。低速コーナーでの走りは驚くほど素晴らしく、エイペックスにイン側のホイールを吸い寄せたら、出口に向けて強力なトラクションでの加速が待っている。

ツインクラッチ・トランスミッションはまだ完璧ではないけれど、不満を持つほどでもなく、ノイズは穏やかながら、エンジンも極めて活発な振る舞いを見せる。

スマートでこの旅をスタートさせた時は、多少楽しめれば良いかな、という期待を抱きつつも、退屈に違いないと思っていた。しかし、アングルシー島の入り口に着くころには、期待をはるかに超える楽しさを味わうことができたのだった。

そして、さらに注目すべき結果なのは、ポルシェ911ターボSのわずか9分遅れでゴール地点に到着できたということ。マウロもわたしも、にわかには信じることができなかった。

「決してダラダラ走ったわけではないと、信じてください」と、そんな内容を何度か彼は繰り返した。

交通量は予想よりも若干少なかったから、スマートの移動速度も充分速かったということだ。加速には時間がかかっても、他の遅いクルマに引っかかるか信号以外は、スピードを落とす場面がほとんどなかった。それを裏付けるように、スマートの平均速度は、ポルシェ911ターボSよりわずか3km/h遅いだけだった。

911ターボSは世界で最高の1台

そして911は、この旅を通じて、マウロに相当な感銘を与えたようだ。

「このクルマは世界で最高の1台ですね。いま、これより速く走れるクルマは想像がつきません」と、彼は旅を振り返る。それから、ターボSのグリップやトラクション、性格無比なドライビングフィールなどを説明してくれた。

ただ、この旅で最も難しかったことは、最高速度という交通法規の存在を意識することだったようだ。

「実は、290km/hくらい出ていた瞬間がありました」とこっそり呟いた。

旅の過程がどれほど楽しかったかは別として、この9分という結果は非常に興味深いものだ。

快適でドライビングが楽しめる8桁の値段のスーパーカーに乗っていたとしても、免許が奪われる危険性を侵すようなスピードを出さない限り、目的地の到着時間には大きな差が生まれないということなのだから。例え自分が有利になるように、全行程を郊外のスポーツカー向きの道で設定したとしても。

渋滞している道にイライラして、無理な追い越しをかけるくらいなら、流れに任せて走った方が良いということでもある。頑張っても、到着時間はほとんど変わらないだろう。

帰り道はウサギに乗って

その日の夜はマウロとビールを何杯か飲んだ。

しっかりと睡眠をとった翌日は、写真撮影に当てた。通常は、実際のテスト途中に走りながら撮影をするのだが、もちろん、今回の競争をよりリアルなものにするため。

写真撮影が終われば、復路が待っている。

わたしはスマートに目をやった。このクルマのスタイリングが、少し不細工だけれどチャーミングで、どこかキザなようにも感じられる。帰路もカメをドライブしようかとも考えた。

けれど、「マウロ、きっと気に入ると思いますよ」と言って、スマートのキーを彼に渡した。

結局、ウサギを選んだ。

スマート・フォーツー・プライムは想像以上に良かったけれど、ポルシェ911ターボSも、自分の想像より、少しだけ良かった。

間違いなく、究極の1台だった。

番外編:危険を冒しても到着時間の差はわずか

もしポルシェが本気を出したら、どれだけ速かったのか、気になるところ。

正直に言うと、最高速度の制限はあまり気にしていなかったのだが、それでも思いっきり飛ばせたのは、1時間ほどが限度だった。

少々危険だったかもしれない。

英国の南西に位置する岬のランズエンドから、北東の端のジョン・オ・グローツまで、同じ条件で競ったとすると、今回の結果から計算して、到着時間の差は40分ほどと予想できる。

ポルシェ911はスマートの倍の燃料を消費する代わりに、燃料タンクの大きさもスマートの倍の容量がある。しかし、燃料タンクを満タンにするのに1~2分はスマートより時間がかかるから、実際の到着時間の差はもっと小さいか、むしろ、ほとんど差は生まれないだろう。

ちなみに、今回のスタート地点に近いチェプストウ駅から、ゴール地点の近くのバンガー駅まで電車を利用したら、片道で運賃は1万2000円ほど。そして所要時間は、ニューポートでの乗換えも加わり、最短でも4時間44分はかかる。

今回スマートで使用したガソリン代は、約4000円。ポルシェ911は、約8000円だった。

ポルシェ911ターボSのスペック

■価格 14万7540ポンド(2240万円)
■全長×全幅×全高 ―
■最高速度 329km/h
■0-100km/h加速 2.9秒
■燃費 10.9km/ℓ
■CO2排出量 212g/km
■乾燥重量 1675kg
■パワートレイン 水平対向6気筒3800ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 580ps/6750rpm
■最大トルク 76.3kg-m/2100rpm
■パワーウエイトレシオ 345ps/t
■ギアボックス 7速デュアルクラッチAT


スマート・フォーツー・プライムのスペック

■価格 1万3655ポンド(208万円)
■全長×全幅×全高 ―
■最高速度 154km/h
■0-100km/h加速 11.3秒
■燃費 24.3km/ℓ
■CO2排出量 96g/km
■乾燥重量 940kg
■パワートレイン 直列3気筒898ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 90ps/5500rpm
■最大トルク 13.6kg-m/2500rpm
■パワーウエイトレシオ 96ps/t
■ギアボックス 6速デュアルラッチAT

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