この記事をまとめると
■トヨタは過去最高益を実現するなど、統計上ではコロナ禍前の勢いに戻っているように見える
売れ行きは最盛期のわずか10%! かつてのプリウスオーナーは何に乗り替えているのか?
■それでも、新車の納期遅延や原材料費の高騰による値上げなど、その先行きは不透明
■新型アルファードがデビューする今期夏商戦は相乗効果を狙った販売店の施策で盛り上がりそう
一見すると復活したようにも見える新車販売実績
4月27日にトヨタ自動車が2022年度販売・生産・輸出実績を発表した。それによると、2022事業年度(2022年4月~2023年3月)のグローバルでの生産実績は、トヨタ単体で913万247台(前年同期比106.5%/グループ全体では1072万9298台)となり、グローバル販売実績は、トヨタ単体で960万9782台(前年同期比101.0%/グループ全体で1055万8007台)となった。報道によるといずれも過去最高を更新しているとのこと。
日本国内に目を向ければ、5月8日より新型コロナウイルスの感染症法の位置づけが5類(季節性インフルエンザと同等)に移行されるなど、新型コロナウイルス感染拡大もますます落ち着きを見せている。新車の生産や販売も統計上ではコロナ禍前の勢いに戻っているように見える。
そして、大型連休(ゴールデンウイーク)が明けると、かつては「夏のボーナス商戦」ともいわれた夏商戦がはじまる。「夏のボーナス商戦」といわなくなった背景は、企業のなかで給与体系の見直しなども進み、賞与(ボーナス)を支給しない企業も目立ってきたから。さらに、非正規雇用やフリーランスなど働き方の多様化もあって「ボーナス商戦」という呼称は夏だけでなく、かつて「冬のボーナス商戦」といわれていた時期でも使わなくなっている。
統計上の生産や販売が絶好調ともいえるトヨタだが、そのお膝元ともいえる日本国内市場では、人気車を中心とした納期遅延が依然として目立っている。本稿執筆時点での情報に基づき一例をあげると(あくまで予定)、プリウスの2リッターHEV(ハイブリッド車)でグレードや駆動方式を問わず2025年5月ごろ以降、ノア&ヴォクシー系のHEVでパノラミックビューモニターをオプション選択すると、2024年9月以降、クラウンの2.4リッターHEVで2024年3月以降(選択オプション次第ではさらに長引く可能性あり)となっている。
納期遅延以外でもヤリスクロス、カローラクロス(HEVのみ)、RAV4などの人気が高く売れ筋となっているモデルは新規受注停止となっている。ヤリスクロスでは近々に行われるとされている改良モデルにならないと受注再開されないのではないかともいわれている。
ただし、トヨタ以外のメーカーでも、ホンダでは納車までにかかる期間ベースで、シビックが新規受注停止中、ステップワゴンは1年程度、ZR-VのHEVは1年以上、ヴェゼルも1年以上などとなっているものの、全体で見れば一時期よりは納期遅延は改善傾向にあることは間違いない。
ブランドによっては多くの車種で納車まで3カ月程度など、いまどきでは短納期ともいえる体制で新車販売に臨んでいるところもある。
不確定要素が多くまだまだ先行きは見通せない
日本国内に限って言えば、消費者の新車購入意欲というものは、新型コロナウイルス感染拡大がひどかったころでも目立って減退することはなかった。ただし、今後は消費支出が旅行などのレジャー関連でも目立ってくるので、これが新たな新車購買意欲を高めるとも受け取れる。支出がいままでよりも新車に向かなくなるのではないかとも捉えることもでき、先行きはなかなか見通せない。
その意味では、今期の夏商戦はじつに興味深い。消費者の間でも広く「新車を買うと納車まで時間がかかる」という意識は定着している。そのため、夏のレジャーシーズンに照準を合わせた新車購入というものは期待できないが、秋の行楽シーズンあたりに照準を合わせて新車購入を検討する人は目立ってくるかもしれない。
夏商戦の本番は6月と7月になっている。新車販売現場では、夏商戦期間中に新規受注しても夏商戦の実績(新規登録[軽自動車は届け出]台数で実績をカウント)にはほぼ反映されないことは承知されている。夏商戦の実績は、いままでの受注残車両(バックオーダー)から何台を新規登録できるかにかかっている。
通常期ならば6月は四半期決算月であると同時に暦年ベースでの上半期末となるので、とくに6月に力を入れて新車販売を進めてくるメーカー及び系列ディーラーも目立っていた。6月中に新規登録できれば夏商戦はベストなのだが、現状ではこれから商談を始めるとそれは難しいが、一縷の望みを託すという観点からも、連休明け早々から商談を進めるのはおすすめである。
また、夏商戦実績に間に合わなかったとしても、事業年度締め上半期末となる9月や納期遅延の深刻な車種では暦年締めでの年末となる12月ぐらいの実績になることを見込んでの販売促進をしているケースも十分考えられるので好条件も期待できるだろう。
さらに、新車価格の値上げ懸念が高まってきている。ここ最近の新車価格の値上げを見ていると、単純になんの変更もなく価格の値上げを行うケースも目立ってきている。すでにメーカーからディーラーへの新車のいわゆる卸価格の値上げは、車両価格の値上げを行っていない車種でも行われているとの話も聞こえているので、すでに値引きが従来より拡大しにくくなっていると聞く。
ウクライナ紛争は依然として続いているし、各地で地域紛争も勃発している。国内では依然として銅像や銅線などの盗難が多発するほど、資源価格の高値傾向も続いており、今後も新車価格の値上げはあって当たり前と思わなければならない。
このような値上げ懸念も顕在化するなかでは、思い立ったら吉日ではないが、早めに新車購入へ向けて動き出すのも得策と言えるだろう。
ここへきて、納車まで長期間かかり、売れ筋仕様では新規受注停止が続いていた某車について、新規受注申告をしたら、3カ月+α程度で納車になるとのことで販売現場が驚いたとの話も聞いた。事情通は「新規受注停止をするほど深刻な納期遅延が続いていた車種なので、ここへきて待ちきれずにキャンセルが多発しているのではないかと見ています。メーカー間で納期遅延といってもそのレベルに差がありますので、納期の早めなモデルへ移るバックオーダーの流動化が起こっているのかもしれません」と背景を分析してくれた。
6月上旬(7日ともされている)には新型アルファードがデビューするとされている。夏商戦最大の目玉と言っていいだろう。このようなモデルがあると販売現場はさまざまな相乗効果を狙って盛り上がりを見せることが多い。今期の夏商戦はその意味でも狙い目といっていいだろう。
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