現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【ヒットの法則414】MINIクラブマンはMINIの課題とされた室内空間を拡大する画期的なアイデアで誕生

ここから本文です

【ヒットの法則414】MINIクラブマンはMINIの課題とされた室内空間を拡大する画期的なアイデアで誕生

掲載 更新 1
【ヒットの法則414】MINIクラブマンはMINIの課題とされた室内空間を拡大する画期的なアイデアで誕生

2008年3月2日、MINIのボディをストレッチしたMINIクラブマンが日本に上陸した。MINI、MINIコンバーチブルに続く、このMINI第3のモデルはどんな魅力を持っていたのか。Motor Magazine誌では3ドアのMINIと比較しながらじっくりと考察、その模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2008年4月号より)

受け継いだ伝統を巧みにアップデート
日本市場においての、MINIの尋常ならざる勢いは未だ衰えていない。個人的にはそう思っている。

●【くるま問答】ガソリンの給油口、はて? 右か左か、車内からでも一発で見分ける方法教えます(2020.01.21)

もちろん数字だけを見れば、確かに往時に対して若干の陰りもあるだろう。が、考えてみればこんな特殊なナリの2ドアのコンパクトカーが、しかもユーザーの大半がある程度のオプションを選択していて客単価が300万円くらいになるコンパクトカーが、月に1000台も売れているということ自体、特異なことだ。

果たして日本の自動車メーカーに、同様の縛りをもって商品企画ができるだろうか。仮にできたとしても、それを何年も同じような勢いで続けることができるだろうか。ユーザーから300万円を取るコンパクトカーといえばブレイドマスターくらいしか思い浮かばない有り様では、この現象は咀嚼し吸収することもままならないのではないだろうか。

類する話として、これほどクルマが売れないと嘆いている日本市場で、伝統と革新の両方を持ち合わせたMINIに吹いた神風は、多分、通り一辺倒なマーケティング論では解けないものだと思う。月1000台が局地的でなく、日本の津々浦々で満遍なく売れているという背景には、デザインビジネスの要素もキャラクタービジネスの要素もネットビジネスの要素も隠れている。一見カビくさいことが大好きそうなイギリス人は、そういう商売の鍵をMINIの周縁に上手に仕込んだわけだ。

そんなMINIも登場から6年。強く意識しなければわからないようにフルモデルチェンジされたのは昨年だが、そろそろ既存のユーザーのケアも商売的には考えなければならない時期だ。個人的には旧型のオーナーが現行モデルに慌てて乗り換える必要もないと思うが、旧型のオーナーの中にはある程度距離を積んで買い換えの時期を迎えている人もいるだろう。中にはそのまま新型に入れ替えというのも芸がないと思っている人がいても不思議ではない。

わざわざそれを選んで買った人にとっては他に代え難い満足度を供しているMINIの数少ない弱点のひとつは、居住性や積載力といった容量の問題だ。しかしそれを解決すべくただ単に大きくしたのではMINIの意味がない。そんな彼らには好運にも、まだ手をつけていない先達からの財産があった。それが第三のMINIとなるクラブマンというわけだ。

オリジナルミニがオースチンとモーリスの手に委ねられていた1960年、ミニトラベラー/カントリーマンは居住性と積載力という市場の要望に沿って登場した。全長で240mm、ホイールベースで80mm伸ばされたボディは、リアシートが簡単に折り畳めて長尺物が積めることもあり、レジャー指向のユーザーだけでなく、仕事のお供というコマーシャルバン的なニーズも満たしていた。

ちなみにクラブマンというのは1969年に登場したオリジナルミニの派生モデルに与えられた名前で、当時のトレンドらしいらしいボクシーな印象の顔を持つ、言ってしまえば時代に無理矢理フィッティングさせるがためのグレードだった。クラブマンにはワゴン版も存在したが、こちらはエステートという一般的な名前が与えられている。

すなわち新しいMINIクラブマンは、トラベラー/カントリーマンのコンセプトとクラブマンの名前をいだたいたということになるわけだ。勝手な想像ながらカントリーマンの名前は、噂されるクラブマンベースのクロスオーバー風モデルがもしや登場するかもという、その段のために暖めているのかもしれない。

MINIクラブマンのデザイン的な特徴は、オリジナルのトラベラー/カントリーマンに沿っている。ウッドトリムこそないものの、Cピラーからリアゲートを囲むように回されたボディ別色のパネル、そしてそこに据えられた観音開きの「スプリットドア」と呼ばれるリアゲートはまさにそのオマージュだろう。

一方で、MINIクラブマンには新たなアイデアも盛り込まれている。それが右側のドア後ろに設けられた「クラブドア」だ。マツダRX-8でお馴染みになったそれは、前ドアを開けてから室内側のノブで扉を開くという開閉アクションも同様となる。左ハンドルモデルの事情を優先した配置は残念だが、当然乗降性は高くなっている。身長180cmの巨体で実際に試してみると、劇的にとは言わずとも、苦しげに体を曲げるような動きは必要としない。後席を頻繁に使う人にとっては十分におもてなしとして機能する。

自分のまわりにもいるオーナーたちもそうだが、MINIオーナーがよく口にする不満のひとつが荷室容量の小ささだ。曰くちょっと大きな荷物を積もうとするとリアシートを倒さなければいけないから不便だと。最初は納得して買ったつもりでも、毎日使うタイプのクルマゆえ小さなストレスが積み重なることになる。最大で930LになるというMINIクラブマンのラゲッジスペースはそういうオーナーのニーズをきちんと満たすことになりそうだ。

ちなみに4人乗車時の荷室容量は前型MINI比で110L大きい260L。標準的なCセグメントが300L前半といったところだから、車格を考えれば十分納得できる。

MINIに比べると全長が240mm、ホイールベースで80mm延長されたMINIクラブマンの室内は、身長180cmの筆者が運転ポジションを合わせた状態で後席に座って、長距離でも我慢できるかなというレベル。MINIよりはタンデムディスタンスは広がっているが、フィットあたりのスペースフルなBセグに比べれば若干窮屈な印象は否めない。クルマの性格上、大の男が4人乗ってというパターンも考えづらいし、そこは割り切るべきところだろう。

延ばされたホイールベースが落ち着いた走りをもたらす
取材に供してもらったMINIクラブマンはとりあえず慣らしもそこそこという状態の6速AT版クーパーSだった。本体価格は331万円。同グレードのMINIに対して23万円高となる。

175psを発揮するBMW製の1.6L直噴ターボは1600rpmから最大トルクを発生する実用性も兼ね備えており、フォルクスワーゲンのシングルチャージャーTSIと並び、現在もっとも効率の高いターボエンジンということができる。

その柔軟なドライバビリティは現行MINIクーパーS比で70kg車重が増えたこのクルマに乗ってもまったく褪せることはない。ATモードで乗っていると、低回転からトントンと高いギアを捕まえながら、実に粘り強く街中での加減速に応えてくれる。瞬間的に260Nmまで発生トルクを高めるスクランブルモードもあるが、その必要をまったく感じさせないというか、そんなものがついていることすら意識させない滑らかさがある。

ちなみにMINIクラブマンの動力性能は0→100km/h加速が7.6秒、最高速が224km/hと発表されており、0→100km/h加速のみ現行MINIクーパーSに対して0.5秒ほど劣るが、これはユーティリティとのトレードを考えれば納得できる範囲だ。ただし世のターボエンジンの常で、サウンドやシャープネスなどの官能性に関してはクーパーのNAユニットに譲るのは仕方のないことだろう。

MINIに比してのMINIクラブマンの最大の違いは乗り心地だ。首都高のように目地段差が続く状況や、路面のアンジュレーションに対してこちらは明らかにアタリが優しい。定則通り重量とホイールベースが好作用しているのだろうが、リア側の突き上げが想像以上に抑えられているところをみると、高ロードを想定したリアサスのチューニングが巧くいっていると思われる。

それゆえ、空荷の1人乗車でのコーナリングにも後ろが跳ねるような不安はない。一方で、MINIが一貫して掲げる「ゴーカートフィーリング」を操舵のレスポンスと局地的に捉えれば、それはMINIに対して明らかに一歩譲っている。意識して高められたゲインが落ち着き、ドシッと座ったまともな乗用車に近づいているというのが個人的な印象だ。

これをどう捉えるかは人それぞれだろうが、ゴーカートフィーリングという点で見れば積極的に求めたくなるのはむしろ旧型の方だと個人的には思っている。ロールを抑えた高負荷にも負けないカチッとしたアシとクイックな操舵フィールの連携は旧型の希少な個性だ。

MINIはそれに対してロールを許し、アシをきちんと接地させる現代的なスポーティ方向に振り込んでいる。現状では結果的にゲインの高さがやや鼻につく仕立てになっていて、それはロープロファイルのタイヤを選ぶほどに顕著になっていく。

一方でMINIクラブマンのホイールベースはそれを緩和させる方向に巧く作用しているのだろう。クーパーS同士の比較という前提では、5.5mという回転半径を除いて、あらゆるシーンでMINIクラブマンの方が上と結論づけた。

取材車は生産ロットの若さの問題か或いは個体差か、リアゲートの軋みが目立ったが、これは時間とともに改善される問題だろう。単にキャラクターだけでなく、実用性と趣味性を兼ね備えた質感の高いコンパクトカーが欲しいという向きにも、MINIクラブマンは適した1台に仕上がっている。専用設定の茶系の色で仕上げてシックなシティコミューターとして乗るもよし。そういう適応性の高さもMINIという商品の総合力にきっちり一助している。(文:渡辺敏史/Motor Magazine 2008年4月号より)



MINIクーパーS クラブマン 主要諸元
●全長×全幅×全高:3960×1685×1445mm
●ホイールベース:2545mm
●車両重量:1250kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:175ps/5500rpm
●最大トルク:240Nm/1600~5000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速MT[6速AT]
●車両価格:318万円[331万円](2008年)

[ アルバム : MINIクーパーS クラブマン はオリジナルサイトでご覧ください ]

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

トーヨータイヤ「OPEN COUNTRY」装着車両がメキシコ開催の「スコア・バハ1000」3位入賞で、最上位クラス年間チャンピオン獲得
トーヨータイヤ「OPEN COUNTRY」装着車両がメキシコ開催の「スコア・バハ1000」3位入賞で、最上位クラス年間チャンピオン獲得
レスポンス
地上を転がって移動できるドローン!? DICが「CES 2025」で発表へ
地上を転がって移動できるドローン!? DICが「CES 2025」で発表へ
レスポンス
FIA/WRCがラリージャパンのSS12キャンセル理由を説明「許可されていない車両が進入し、スタートラインを塞いだ」
FIA/WRCがラリージャパンのSS12キャンセル理由を説明「許可されていない車両が進入し、スタートラインを塞いだ」
AUTOSPORT web
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
ついにトヨタ「新型セリカ」復活!? 次期8代目登場か… 中嶋副社長「セリカ、やっちゃいます。」宣言! 会長も後押し!? ラリージャパンで語られたコトとは
くるまのニュース
F1ラスベガスGP決勝速報|フェルスタッペンがドライバーズタイトル4連覇! 優勝は盤石ラッセルでメルセデス1-2。角田は9位入賞
F1ラスベガスGP決勝速報|フェルスタッペンがドライバーズタイトル4連覇! 優勝は盤石ラッセルでメルセデス1-2。角田は9位入賞
motorsport.com 日本版
[F40]だって夢じゃねぇ! [中古車]バブルが崩壊したらあなたは何を買う
[F40]だって夢じゃねぇ! [中古車]バブルが崩壊したらあなたは何を買う
ベストカーWeb
突如裏切る日本の路面。「あちこちでスライド」「一体どこでパンクしたのか」/ラリージャパン デイ2コメント
突如裏切る日本の路面。「あちこちでスライド」「一体どこでパンクしたのか」/ラリージャパン デイ2コメント
AUTOSPORT web
フェルスタッペンが2024年チャンピオンに輝く。これで4連覇! 優勝はラッセルでメルセデス1-2。角田も耐えのレースを凌ぎ9位入賞|F1ラスベガスGP決勝
フェルスタッペンが2024年チャンピオンに輝く。これで4連覇! 優勝はラッセルでメルセデス1-2。角田も耐えのレースを凌ぎ9位入賞|F1ラスベガスGP決勝
motorsport.com 日本版
勝田貴元、3度目のWRCラリージャパンは総合4位。トヨタのメーカータイトルに安堵も「来年は表彰台の一番上で」
勝田貴元、3度目のWRCラリージャパンは総合4位。トヨタのメーカータイトルに安堵も「来年は表彰台の一番上で」
motorsport.com 日本版
災害時&過疎地の新ヒーロー? 「移動ATM車」をご存じか
災害時&過疎地の新ヒーロー? 「移動ATM車」をご存じか
Merkmal
[Pro Shop インストール・レビュー]メルセデスベンツ GLC(根本俊哉さん)by イングラフ 後編
[Pro Shop インストール・レビュー]メルセデスベンツ GLC(根本俊哉さん)by イングラフ 後編
レスポンス
東北道「浦和ICの大改造」ついに“最後のランプ”建設へ 並行ランプを通行止め 側道利用者は注意!
東北道「浦和ICの大改造」ついに“最後のランプ”建設へ 並行ランプを通行止め 側道利用者は注意!
乗りものニュース
トヨタWRCマニュファクチャラーズ王者に豊田章男会が破顔「苦労して獲ったタイトル」ライバルのヌービル初王者にも祝意
トヨタWRCマニュファクチャラーズ王者に豊田章男会が破顔「苦労して獲ったタイトル」ライバルのヌービル初王者にも祝意
motorsport.com 日本版
波乱だらけのラリージャパン! ニッポンの勝田が意地をみせSS連続ステージ優勝で総合4位につける
波乱だらけのラリージャパン! ニッポンの勝田が意地をみせSS連続ステージ優勝で総合4位につける
WEB CARTOP
最新「サファリ」がスゴイ! 「ハリアー」と兄弟車で登場! 「3列7人乗り」&英国風の“超精悍顔”がカッコイイ! 便利機能モリモリのタタ「最上級SUV」とは?
最新「サファリ」がスゴイ! 「ハリアー」と兄弟車で登場! 「3列7人乗り」&英国風の“超精悍顔”がカッコイイ! 便利機能モリモリのタタ「最上級SUV」とは?
くるまのニュース
1000万円以下で買えるV12搭載ランボルギーニ!…世界に4台しかない「ハラマ 400GTS」のAT仕様の出来は当時どうだった?
1000万円以下で買えるV12搭載ランボルギーニ!…世界に4台しかない「ハラマ 400GTS」のAT仕様の出来は当時どうだった?
Auto Messe Web
【この190SLなんぼ?】走行距離わずか4,753kmでこの値段!なんで?このメルセデス300 SLの弟分190SLは掘り出し物?
【この190SLなんぼ?】走行距離わずか4,753kmでこの値段!なんで?このメルセデス300 SLの弟分190SLは掘り出し物?
AutoBild Japan
ソニー損保、自動車保険満足度調査で2部門1位を獲得…事故対応に高評価
ソニー損保、自動車保険満足度調査で2部門1位を獲得…事故対応に高評価
レスポンス

みんなのコメント

1件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

335.0578.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

10.8625.0万円

中古車を検索
MINI Clubmanの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

335.0578.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

10.8625.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村