先駆者のトヨタでさえ苦戦するハイブリッドスポーツ
ハイブリッド(HV)スポーツというカテゴリーのモデルは成功しないのか? ハイブリッド車といえばガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせ、燃費を向上させた環境に優しいクルマとして今やなくてはならない存在となった。
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ハイブリッド乗用車の代表といえるトヨタのプリウスやアクアは軽自動車を除く全ての車種のなかで毎年ベストセラーカーとして君臨している。
競合他社も相次ぎハイブリッドモデルを投入し、トヨタの2強を追うが、その牙城は一度も崩れることがなかった。唯一、日産のノートe-パワーが販売登録台数でリードする月もあったが、歴年のトータルで見ればトヨタ2強は他を圧倒してきていた。そんなトヨタのハイブリッドモデルでもレクサスの特にスポーツ系モデルで見ると、けっして高い評価を受けているとは言えない。たとえばGSやLSなど高級セダンでは販売比率的にはハイブリッドが多いのかもしれないが、「走りがいい」という評価は聞こえてこない。
「走りの良さ」がセールスポイントになるとすればスポーツグレードにとっては重要な課題なはず。たとえばレクサスLC500hはレクサスブランドの頂点に位置するスポーツクーペであり、その走りが悪ければレクサス車全体の評価にも影響するだろう。
筆者ももちろんレクサスGSやLCのハイブリッドモデルを試乗したことがある。だが運動性能いわゆるスポーツ性については多くを語る気持ちになれなかった。
その理由の一つは車両重量の重さにある。GSやLCのサイズに高級なフル装備を与えれば、それだけでも1.5トンを超える重量級の車体になる。それに加えモーターやバッテリーといった重量物を搭載させられるのだから車両総重量は2トン前後にまで重くなってしまう。これでは軽快なハンドリングを謳えるはずもない。
ハイブリッドで成功したトヨタをもってしてもハイブリッドスポーツというジャンルでは苦戦をしているのが実情なのだ。
スーパースポーツのホンダNSXがもっとも高レベルだが……
では他社はどうだろうか。国内外を問わず、自動車メーカーはトヨタ2強の成功を目のあたりにし、黙って指を加えて見ているだけでは済まされない。当然ハイブリッドの開発を急ぎ進め市場に投入することが急務となったはずだ。だがそこで大きな壁が立ちはだかる。それはトヨタがハイブリッドの基幹技術全般において2万点あまりの特許を取得していたことだ。
ホンダは1997年にトヨタが初代プリウスを発売した直後にプリウスを購入し、ボルト1本にいたるまで完全に分解しコスト計算をし、その結果もしホンダが同じシステムのハイブリッド車を生産したら500万円でも採算が取れないという結論に達していたという。その上にトヨタの特許を回避するためのシステムを考えなければならず、ハイブリッド車の早期投入は厳しいと考えていたようだ。
トヨタの特許を回避しながらIMA(インテグレーテッドモーターアシスト)を開発しシビックに搭載したのは2001年。しかしそれはトヨタのようにEV走行ができず、モーターでエンジンをアシストする機能に制限されたものだった。
このIMAがその後改良を続け2010年に2ドアスポーツクーペ「CR-Z」に搭載された時は正直心が踊った。IMAでは燃費でトヨタのシステムに適わないと悟ったホンダがハイブリッドをスポーツカーへと転用し、エンジンのパワーブースターとしてモーターを活かす活用方法を見出だしたと考えられたからだ。
たとえば自然吸気エンジンで高回転型のハイパワーなエンジンがあっても、空気密度の薄い標高の高い場所ではターボチャージャーなどの過給器をつけないとパワーが引き出せない。また高回転型では低速トルクが不足し市街地でのドライバビリティが劣る。そこを電気モーターで補えるなら0回転から最大トルクが引き出せ空気密度も関係のない特性が大きな武器になるはずだ。だがそのCR-Zも大きな成功を掴めず2017年に生産を終了してしまった。
CR-Zには(マイナーチェンジで)ステアリング上にオーバーテイクブーストとも言える「PLUS SPORT」ボタンが装備され、それを押すと3リッターV6エンジン並みの加速力が得られるというギミックを与えられていたが、じつはアクセルを全開にすれば同じパワーが引き出せ、プラスαのパワーブーストではなかったことが災いしていた。
そしてホンダは現在もNSX をハイブリッドスポーツとして販売している。その走りは国内の一般道では正直素晴らしいハンドリングと動力性能レベルに達したと感じた。
しかし不安な面もある。それは前輪を駆動するモーター。リダクションギア(減速歯車)を持たない車軸直結(クラッチ介入)機構のため、モーターがパワーを発揮できる回転数上限つまり時速180kmまでしか機能しない。180km/h以上の速度域になるとフロントのモーターはただの重量物となってしまうわけだ。180km/h以上の速度が出せるサーキット走行や独・アウトバーンの速度無制限区間ではこれは大きなハンディとなりえる。180km/hまで4輪駆動に圧倒的なトラクションと安定性で速度を上げてきて、それを超えると後輪2輪駆動の不安定な状態になってしまうのは不安が残る。
こうしてみるとハイブリッドスポーツで本当に「走りがいい」と評価できるモデルは今のところ存在していないと結論づけるしかない。
納得のいくハイブリッドスポーツの登場が先かEVに先を越されるか
しかしだ。モータースポーツの最高峰であるF1もWEC(世界耐久選手権)の頂点で覇権を争うLMP−1カテゴリーのマシンもエンジン+モーターのハイブリッドだ。こうした極限で鍛えられたハイブリッド技術なら市販車に転用されても大きな感動を与えてくれるに違いない。メルセデス・AMGはF1マシンのパワートレインをそのまま搭載した「プロジェクトワン」を約3億円で275台を生産し完売した。
またトヨタもル・マン24時間を制したLMP-1マシンのパワートレインを移植した「GR スーパースポーツコンセプト」を100万ドルで市販すると予想されている。ポルシェは918スパイダーハイブリッドで独・ニュルブルクリンクのラップレコードを樹立し、長く保持していた。
ハイブリッドスポーツが持つ本来の可能性を我々が気軽に引き出し、楽しめるようになるには、まだもう少し時間がかかるか、あるいはEVに先を越され、もう登場しないのかもしれない。
先頃トヨタが発表した「ハイブリッド基幹技術特許の無償提供」が我々にも手の届く「走りのいい」ハイブリッドスポーツ車登場のきっかけになればと期待している。
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