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残したいV8+FRのスポーツ レクサスLC フォード・マスタング ジャガーFタイプ 3台乗り比べ 前編

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残したいV8+FRのスポーツ レクサスLC フォード・マスタング ジャガーFタイプ 3台乗り比べ 前編

スポーツカーの定番といえたV8+FR

グレートブリテン島の中央、ピーク・ディストリクト国立公園を楽しむ登山者やサイクリストにも、特徴的なサウンドが届いていることだろう。7月とはいえ平日だから、週末ほど混雑していないが、若干お騒がせしていることに気が引ける。

【画像】残したいV8+FRのスポーツ レクサスLC フォード・マスタング ジャガーFタイプ 全156枚

とはいえ、残された機会が限られているなら、存分に楽しむしかない。遠からず、この土地の車道で響くのは、主にモーターとタイヤのノイズくらいになるだろう。牛の鳴き声や小鳥のさえずりを、邪魔することもなくなる。

一見すると、この3台は同じグループへ属するように思えない。しかし、運命と偶然が折り重なった、共通する内容をボディの内側へ秘めている。

V8エンジンをフロントに搭載し、リアタイヤを回して走る、英国で新車として購入できる最後のスポーツカーなのだ。1950年代の後半から、比較的手頃なミドシップモデルが登場した1990年代までは、このパッケージングは高性能モデルの定番といえた。

ACコブラにシボレー・コルベット、TVRグリフィス、ポルシェ928、ジャガーXK8、アストン マーティン・ヴァンテージV8など、多くの名車が採用してきたことはご存知の通り。しかし、近年は絶滅寸前にある。

1番記憶に残り、残したいモデルはどれか

確かに炭化水素を燃やし、二酸化炭素を撒き散らす。しかし、バッテリーEVへ充電する電気が持続可能性を担保した技術で発電されなければ意味がないように、同等の配慮がなされた合成燃料の技術が熟成すれば、延命する道筋はあるように思う。

2023年のグレートブリテン島で生き残った3台は、日本製ラグジュアリー・グランドツアラーと、引退を控えた英国製2シーター・スポーツカー、アメリカン・マッスルカーの代表格と、それぞれ特徴が異なる。それでも、V8+FRという構成では共通している。

最もお手頃なのが、フォード・マスタング・マッハ1。英国では6万ポンド(約1086万円)を切る価格で販売されている。レクサスLC 500はこの中で1番お高いが、ベースグレードを選べば10万ポンド(約1810万円)を超えない。

登場から10年が過ぎた、ジャガーFタイプのミドルグレードのお値段は8万1905ポンド(約1482万円)で、2台の中間に位置する。2023年内に生産を終える予定にあるから、ご興味をお持ちなら、急いでディーラーへ向かった方が良いだろう。

とはいえ、残りの2台もいつまで提供が続くのかわからない。思い立ったが吉日だ。

今回は、猶予僅かなオールドスクール・レシピの魅力を再確認してみたいと思う。どれが最も記憶に残るモデルだろうか。別れが惜しく、後世へ残したいと感じるだろうか。

美声コンテストをしたらLC 500が優勝

比較的手頃な価格帯にある、パワフルで実用的なスポーツカーにV8エンジンが載っていることは、理にかなったことといえる。まず、V8エンジンは小さく軽量に仕上がる。ボンネット内の空間を効率的に使え、短いクランクシャフトで高回転・高出力を狙える。

バンク角を大きくしシリンダーを傾ければ、エンジン高を抑えられる。重心位置を低くでき、必要に応じてターボチャージャーやスーパーチャージャーを組む余裕も残る。

これをフロントに搭載すると広いキャビンが生まれ、充分な荷室も確保できる。ガソリンタンクの配置に困ることもない。客観的ではないかもしれないが、聴き応えのあるサウンドも楽しめる。

今回の3台で美声コンテストを競わせたら、恐らく優勝を掴むのはLC 500だろう。ハイブリッドが売りのレクサスのことを、優れたV8エンジンを作るブランドだとはイメージしにくいかもしれないけれど。

レクサスの2UR-GSE型ユニットは、音響的にも磨かれている。見事に調律された音色が、感覚を強く刺激する。ゴロゴロとザラついた、いかにもマッスルカー的なフォードとは違う趣向で。

自然吸気だから、ハイパワーを引き出すには高回転域まで引っ張る必要がある。そこまでの上昇中に、メカニカルノイズやエグゾーストノートの重なりを鑑賞する時間が生まれる。環境保護団体から、警告を受けるかもしれないが。

5.0Lの排気量を考えると、4500rpm以下ではやや非力。だが、それ以上の回転域では豹変したようにパワーも漲る。

異なる音響体験で満たすマスタング

ドライバーがアクセルペダルを踏んでいれば、10速ATが静静と次のギアを選ぶ。内装の素材は高級感に溢れ、日本人らしい丁寧さで仕立てられている。それでいて、高回転域でのエネルギッシュさは凄まじい。

7000rpmへ迫るほど、ドラマチックさが高まる。映画「フィフス・エレメント」の宇宙人歌手によるオペラのような、唯一の体験が待っている。シフトパドルを弾いて回転域を保ち続けるよう、ドライバーを誘惑する。

他方、マスタング・マッハ1はドライバーの関与がより求められる。シンプルさや実直さが、このモデルの売り。乗り心地は低速域で硬めで、荒れた路面の質感が伝わってくる。トレメック社製の6速MTを操るレバーは、ストロークが短めながら手応えが重い。

入り組んだ市街地を運転していると、広大な場所へ向かいたいと感じるはず。それでいい。長い歴史を受け継いだ、マッスルカーなのだから。

開けた道で右足へ力を込めると、オールドスクールな吸気音が車内へ充満する。アグレッシブでリアル。回転数の上昇とともに、野性味が表出する。

マスタング・マッハ1に搭載されるコヨーテ・ユニットは、シェルビーGT350用の吸気系とスロットルボディ、ボアアップされたブロックで構成され、爽快な咆哮を放つ。LC 500とは異なる音響体験で満たしてくれる。

聴覚的な豊かさや個性で、マスタング・マッハ1はLC 500に劣らない。同等の最高出力を、半分の価格で手にできるという事実にも唸ってしまう。

この続きは後編にて。

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